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第三幕

私の両親も、あの人達が年老いて介護が必要になっても、私は、お金を出して施設とかに入れることはしても、見殺しにまではしなくても、私自身は

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『そう言えば、いまだに<有名税>とかって言葉を使うのもいるけど、私はそんなの、時代錯誤もいいところの戯言だと思う。

だってそれが通用してた頃って、いわゆる<スター>って言われるような人達はそれこそ裏でどんな非道をしてたって許されるみたいな風潮があったんじゃないの? その帳尻を合わせるような意味合いもあったんじゃないの? <有名税>ってさ。

だけど今じゃ、『不倫騒動一つで大ダメージ、仕事も激減』って時代じゃん。芸能人もスポーツ選手も、<ただの職業の一つ>ってだけじゃん。

それで<有名税>とか時代錯誤な妄想だけが残るなんて、おかしいでしょ? 『結婚するのもしないのも個人の自由』『子供を持つのも持たないのも個人の自由』なんてのが許されるようになったこの時代に、いつまで過去の妄執に囚われてんの? 『有名人は雲の上の存在』みたいなことを考えてたような時代の感性が今でも通じるとか思ってんの?

パラダイムシフトが必要なんじゃないの?

有名人だってただの人間なんだよ。いい加減その現実と向き合う時が来たんじゃないの?

実際、芸能人とかもただの人間でしかないってのがすっかりバレちゃってるしさ。

とにかく、なんか理由をこじつけて他人を傷付けようとするのを正当化してる限り、幸せになんかなれないよ?

理由をこじつけて他人を傷付けようとする人が、『自分はどうして幸せじゃないんだ!?』とか思ってたって、『それ、自分で自分を不幸にしてるだけじゃん』としか思わないよ。

私は基本的に、大きな不幸の中にいても自分なりの幸せを掴もうとする人の姿を描きたいというのもあるんだ。

そうして、『どうすれば幸せになれるか?』ってのを考える時、『他人を傷付けるのが当たり前』とか考えてる人が幸せを掴めるというビジョンが描けない。力尽くで好き勝手やって悦に入るビジョンは見えても、力尽くでどうにかできる力を失ったら、恨みを抱いてる人からの有形無形の報復が待ってるだろうし。

私の両親も、あの人達が年老いて介護が必要になっても、私は、お金を出して施設とかに入れることはしても、見殺しにまではしなくても、私自身は顔を出すことさえしたいとは思わない。

兄は、両親が衰えたら、きっと見殺しにするか、逆に痛めつけて悦に入るだろうな。

それを考えるとね、結局、自分のやってることは自分に返って来るんだよ。

屁理屈並べて自分の行為を正当化しつつ他人を傷付けてる連中も、結局そう。

だって自分で言ってるじゃん。『原因を作った奴が悪い!!』ってさ。自分が原因作ったから返ってくるだけなんだ。

それを自分で気付けて改めていければまだしも、続けるっていうなら自分が不幸になったって自分の所為じゃん。

でもね、自分が不幸だからって他人を巻き込むのはやめてもらいたいね』

アオのその話を悠里ユーリ達は黙って耳を傾けてた。アオの言いたいことが悠里達に伝わってるのが分かるよ。

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