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第三幕
全方位にケンカ売る形になるような考え方がおかしいって言うんなら、どこかに、<何一つ間違ったことを言わない、完全に完璧に正しい勢力>が
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『しっかし、私みたいな考え方してると、『全方位にケンカ売ってる』みたいに言うのがいるけど、それっておかしいんだよね』
家族揃っての夕食の時、アオがそう切り出した。その上で続ける。
『だって、全方位にケンカ売る形になるような考え方がおかしいって言うんなら、どこかに、<何一つ間違ったことを言わない、完全に完璧に正しい勢力>がいるってことでしょ? どこにあんの? そんな勢力。
それぞれが、正しい面もありつつも、同時に、間違ってる、おかしい部分があるから、どれか一つがこの世の全てを牛耳るわけじゃないんでしょ?
だったら、問題点を詳細に検証していったらみんなどこかしら間違ってておかしい部分があるって話になるじゃん。てか、それが事実でしょ?
私は、ミハエルや悠里や安和や椿やさくらや洸や恵莉花や秋生やエンディミオンの味方ってだけで、それ以外のどの勢力の味方でもないよ。
右も左も中道も売り手も買い手も男も女も、どの<勢力>にも、私は専属しない。私は私。他人の価値観に縋って、尻馬に乗って、自我を維持したいとは思わないんだ。
だってそんなことしてたら、私は、ミハエルとは一緒にいられなかったよ。
何しろミハエルは、<吸血鬼>。<人の世の理>から外れた存在だもん。
私を私として、ミハエルをミハエルとして、ただ事実を受け入れ、その上で自分にできることを探っていくしかない。
もっとも、それができるようになるには、誰かの助けが必要だけどね。
私にとってのさくらとか。
いや、きっと誰もがその<誰か>にどこかで出逢ってるんだと思う。そこで拒んでしまうか、向き合うか、の違いだけでさ。
私は向き合うことができた。それが今の私を作ってくれてる。
家のこととかほとんどミハエルに任せきりで決して立派でもないけど、アニメ化された作品があるわけでもなくて世の中の誰が見ても<成功者>だと言ってくれるような人間じゃないけど、少なくとも私は、自分が生まれてきたことを良かったと思えてる。
ミハエルに出逢えて、ミハエルを受け止めることができて、悠里と安和と椿と出逢えて、受け止めることができて、自分の生に意味があったと思えてる。
だから他人に難癖付けて罵倒して蔑んで、相対的に自分に価値があるように見せかけなくても済んでる。
それが嬉しい。
だから、『自分だけが正しい』『間違ってるのはいつも他人の方』とか思わずに済んでるんだ。
それが誇らしい。
そして、それが自分一人の力でできたことじゃないと理解できてることがまた誇らしい。
その上で私は創作に臨むんだ』
そうだ。彼女は、彼女自身が言うとおり、決して<立派な人>でもなければ<正しい人>でもない。彼女はただ、自分達が幸せに生きるには、自分の周囲の人間達も幸せでいなくちゃって思ってるだけなんだ。
家族揃っての夕食の時、アオがそう切り出した。その上で続ける。
『だって、全方位にケンカ売る形になるような考え方がおかしいって言うんなら、どこかに、<何一つ間違ったことを言わない、完全に完璧に正しい勢力>がいるってことでしょ? どこにあんの? そんな勢力。
それぞれが、正しい面もありつつも、同時に、間違ってる、おかしい部分があるから、どれか一つがこの世の全てを牛耳るわけじゃないんでしょ?
だったら、問題点を詳細に検証していったらみんなどこかしら間違ってておかしい部分があるって話になるじゃん。てか、それが事実でしょ?
私は、ミハエルや悠里や安和や椿やさくらや洸や恵莉花や秋生やエンディミオンの味方ってだけで、それ以外のどの勢力の味方でもないよ。
右も左も中道も売り手も買い手も男も女も、どの<勢力>にも、私は専属しない。私は私。他人の価値観に縋って、尻馬に乗って、自我を維持したいとは思わないんだ。
だってそんなことしてたら、私は、ミハエルとは一緒にいられなかったよ。
何しろミハエルは、<吸血鬼>。<人の世の理>から外れた存在だもん。
私を私として、ミハエルをミハエルとして、ただ事実を受け入れ、その上で自分にできることを探っていくしかない。
もっとも、それができるようになるには、誰かの助けが必要だけどね。
私にとってのさくらとか。
いや、きっと誰もがその<誰か>にどこかで出逢ってるんだと思う。そこで拒んでしまうか、向き合うか、の違いだけでさ。
私は向き合うことができた。それが今の私を作ってくれてる。
家のこととかほとんどミハエルに任せきりで決して立派でもないけど、アニメ化された作品があるわけでもなくて世の中の誰が見ても<成功者>だと言ってくれるような人間じゃないけど、少なくとも私は、自分が生まれてきたことを良かったと思えてる。
ミハエルに出逢えて、ミハエルを受け止めることができて、悠里と安和と椿と出逢えて、受け止めることができて、自分の生に意味があったと思えてる。
だから他人に難癖付けて罵倒して蔑んで、相対的に自分に価値があるように見せかけなくても済んでる。
それが嬉しい。
だから、『自分だけが正しい』『間違ってるのはいつも他人の方』とか思わずに済んでるんだ。
それが誇らしい。
そして、それが自分一人の力でできたことじゃないと理解できてることがまた誇らしい。
その上で私は創作に臨むんだ』
そうだ。彼女は、彼女自身が言うとおり、決して<立派な人>でもなければ<正しい人>でもない。彼女はただ、自分達が幸せに生きるには、自分の周囲の人間達も幸せでいなくちゃって思ってるだけなんだ。
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