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第三幕

結局、親がさ、『子供は自分とは違う人間。だから自分の思い通りにはならない』っていうのを承知した上でその事実を受け止めてどう対処して

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『結局、親がさ、『子供は自分とは違う人間。だから自分の思い通りにはならない』っていうのを承知した上でその事実を受け止めてどう対処していくか?っていう手本を見せてこそ、子供も、『親は自分とは違う人間。だから自分の思い通りにはならない』って考えられるようになると思うんだよ。親がその手本さえ示さないで子供がそんな風に思えるようになるとか、マジで酷い<ご都合主義>だよね。

どこかの誰かが自分の子供にそれを教えてくれるのを期待するとか、親としての責任を放棄してるとしか思えないよ。

悠里ユーリ安和アンナ椿つばきが私に対して、『親だって人間なんだから、完璧じゃいられないよね』と思ってくれてるのは、結局、私の真似をしてくれてるだけだよね。

『子供なんて動物と一緒だ! だから人間になるように躾けなきゃいけないんだ!』とか言う人がいるけど、私が得た実感とはまるで違うよ。

だってそうじゃん? 犬とか猫とかって、人間の幼児と同程度の知能があるって言われてるけど、じゃあ、本当に、まだ自分じゃちゃんと言葉を話せない赤ん坊以上の言語能力があるって言うの?

椿だって、二歳になる前には、大人ほど完璧に喋ることはできなくても、単語が書かれたカードを並べて簡単な文章を作ることくらいはできたよ? 『ごはん』という単語カードと、『ほしい』っていう単語カードを並べて、『ごはん、ほしい』って、自分の意図を言葉にすることができたよ?

犬や猫にそれができるっての? ごくたまにいたとしても、そういうのって、<天才犬>とか、<天才猫>とか言われて特別扱いされるんじゃないの? 

だけど人間の子供なら、多少の遅い早いはあっても、ほとんどが、幼児のうちにはできるようになるよね?

なんでそれで、『子供なんて動物と同じ』って言えんの?

ダンピールだから知能の面の成長が早かった悠里と安和は別としても、椿だって一生懸命、自分の意図を伝えようとしてくれてたよ。

当然だよね。子供にとっちゃ親とのコミュニケーションは、自分の命さえ左右しかねない最重要課題なんだから。

で、自分が必死に伝えようとしてることを親が汲み取ってくれないとなったら、そりゃ子供だってパニックを起こすってもんじゃないの? <魔の二歳児>とかって、そういうことじゃないの?

その努力も認められなくて、それで『動物と同じ』とか言ってて、親とか大人とか、笑わせんじゃないって。

そんなの、<違ってるっていう現実>とも向き合えない人間の戯言としか思えないよ。

ってか、『私の子供達を人間じゃない動物と同じとか、ふざけたことを言うんじゃない!』としか思わないね。

他人の子供を掴まえてそんなことぬかすとか、どんな躾受けてきたって?

まともな躾受けてたら、言うわけないでしょうが』

そうだね。僕だって、悠里や安和や椿を『動物と同じ』なんて言われて、いい気はしないよ。

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