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第三幕

基本的に私、『他人なんざ知ったこっちゃね~っ!!』ってタイプの人間だからね? 本質的には、『他人が生きようが死のうが興味もねえし』って

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『世の中にはいろんな意見があって当然なので、私は気にしません。なので皆さんも、自分と違う意見を持ってる人だからといって無闇にぶつからないように心掛けてください』

<ラノベ作家・蒼井霧雨あおいきりさめ>としての彼女は、公にはそういうアナウンスもしてたりするけど、それはあくまで彼女の<仕事上の顔>でしかない。<個人・蒼井霧雨>としては、

『基本的に私、『他人なんざ知ったこっちゃね~っ!!』ってタイプの人間だからね? 本質的には、『他人が生きようが死のうが興味もねえし』って思ってるから』

ともちゃんと言ってくれてる。だからこそ僕は、彼女を信頼できるんだ。

だって、<表の顔>をさも自身の本質であるかのように振る舞う人間は、完全に自らを<粉飾>しているから。

『自身を<善良で正しい人間>であると他人に錯誤させようとしてる』

ことのどこが<誠実>なの?

自分を粉飾して他人に錯誤させることで『不快に思われないようにする』ことが本当に好ましいの? 

僕にはそうは思えない。何しろ、そういう人間の多くは、自分を粉飾して他人に錯誤させると同時に、<ガス抜き>と称して、

<自分に対して抵抗できない相手>

などにストレスを転嫁したりしてるからね。他人からは見えないようにしつつ。

自分の子供、家族、部下、そういう人間達を虐げている者の何が<誠実>なの? 僕にはただ卑劣なだけにしか思えないよ。

また、ネット上で匿名の陰に隠れて他人を罵ったり蔑んだり貶したりしているのも、これだよね。

ネットの外では自身を粉飾しつつ。

そんな人間のどこが<誠実>で、どこを<信頼>すればいいと言うの?

だけどアオは、自分のことを<ドクズ>と称しながらも、自身の好ましくない面も自覚しながらも、

『<自分にとって大切な人>が苦しんだり悲しんだりっていうのは絶対にイヤなんだ。

ミハエルや子供達はもちろん、さくらとその家族が苦しんだり悲しんだりっていうのはイヤなんだよ。

次いで、ファンの人達が苦しんだり悲しんだりっていうのもイヤだよ。

だから、何を言ったって聞く耳なんか持つつもりのない<アンチ>を相手にレスバとかして嫌な思いをして欲しくないんだ』

と考えることもできるから、信頼できるんだ。

『自らの好ましくない部分を正当化せず、その上で自分の周りの人間の幸せを願える』

からね。それが<本心>だというのが分かるから。

だけど、好ましくない部分を隠して<綺麗事>を並べて粉飾しているのは、<本心>じゃないよね?

好ましくない部分を隠して<綺麗事>を並べている部分こそを他人に信じさせようという姿勢そのものが、<不誠実>というものじゃないの?

もちろん、だからと言って<露悪趣味>に走るのも違うとしても、ね。

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