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第三幕
子供が親に対して『生んでください』とお願いしたという事実を立証できる人間はいるの? 科学的に。具体的に。客観的な事実として
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アオは、自分の両親のことを憎んでる。
当然だよね。彼女の兄である<長男>のための<スケープゴート>としての価値しか見出していなかったような両親を、どうやって尊敬し信頼できるの?
それは、エンディミオンを生み出した吸血鬼にも通じる<非道>だと思う。
にも拘わらず、アオの両親は、彼女に、
<生んでやった恩>
<育ててやった恩>
を返せと思ってるそうだ。
僕は問いたい。そんな両親の下にアオが望んで生まれてきたと思う?
と。
<生んでやった恩>や、<育ててやった恩>なんて、子供の側が親に対して『生んでください』と望んだ事実がなければ、成立しないよ?
ましてや、
『こんな世界になんて生まれてきたくなかった』
と思ってしまうような場合には。
子供が親に対して『生んでください』とお願いしたという事実を立証できる人間はいるの? 科学的に。具体的に。客観的な事実として。
その根拠を、誰が? どのようにして? 提示してくれるの?
できるはずがないよね。そんな事実はないんだから。
もし、子供の側から親に対して『生んでください』と願えるなら、アオは、決して、あの両親には言わなかっただろうね。
そしてアオと同じように感じる人間は、数限りなくいるんじゃないかな。
なのに人間は、その事実を、『美談を創作する』ことによって有耶無耶にしようとする。
実に卑劣だよね。
もう一度言うよ?
子供が親に対して『生んでください』とお願いしたという事実を、科学的に、具体的に、客観的に、立証できる人間はいるの?
その根拠を明示できる人間はいるの?
<生んでやった恩>
なんていうものが存在するというのなら、まずそこから示すべきだよね。
それができなければ、議論にさえ入れない。
加えて、<生んでやった恩>を主張するためには、この世界に生まれてこれたことのメリットを提示できなければそれは成立しないよね?
毎年、無数の人間達が理不尽な死を迎えるこの世界に生まれてくることのメリットとは、何?
そんなものが本当にあるのなら、こんなにも<自殺>する人間が多いはずがないと思うんだけどな。
『自殺するような弱い人間だったのが悪い』
と言うのなら、
<そんな弱い人間に生んだ側の責任>
は、どうなるの?
『親の所為にするな!』
が成立するのなら、
『子供の所為にするな!』
というのも成立しないとおかしいよね?
人間はずっと、その事実から目を背けてきた。だから、問題の本質が理解できなかった。
子供が無条件に親を尊敬し信頼するなんてことは、有り得ない。
尊敬し信頼してもらうには、それに見合う<実績>と<背景>が必要なんだ。
当然だよね。彼女の兄である<長男>のための<スケープゴート>としての価値しか見出していなかったような両親を、どうやって尊敬し信頼できるの?
それは、エンディミオンを生み出した吸血鬼にも通じる<非道>だと思う。
にも拘わらず、アオの両親は、彼女に、
<生んでやった恩>
<育ててやった恩>
を返せと思ってるそうだ。
僕は問いたい。そんな両親の下にアオが望んで生まれてきたと思う?
と。
<生んでやった恩>や、<育ててやった恩>なんて、子供の側が親に対して『生んでください』と望んだ事実がなければ、成立しないよ?
ましてや、
『こんな世界になんて生まれてきたくなかった』
と思ってしまうような場合には。
子供が親に対して『生んでください』とお願いしたという事実を立証できる人間はいるの? 科学的に。具体的に。客観的な事実として。
その根拠を、誰が? どのようにして? 提示してくれるの?
できるはずがないよね。そんな事実はないんだから。
もし、子供の側から親に対して『生んでください』と願えるなら、アオは、決して、あの両親には言わなかっただろうね。
そしてアオと同じように感じる人間は、数限りなくいるんじゃないかな。
なのに人間は、その事実を、『美談を創作する』ことによって有耶無耶にしようとする。
実に卑劣だよね。
もう一度言うよ?
子供が親に対して『生んでください』とお願いしたという事実を、科学的に、具体的に、客観的に、立証できる人間はいるの?
その根拠を明示できる人間はいるの?
<生んでやった恩>
なんていうものが存在するというのなら、まずそこから示すべきだよね。
それができなければ、議論にさえ入れない。
加えて、<生んでやった恩>を主張するためには、この世界に生まれてこれたことのメリットを提示できなければそれは成立しないよね?
毎年、無数の人間達が理不尽な死を迎えるこの世界に生まれてくることのメリットとは、何?
そんなものが本当にあるのなら、こんなにも<自殺>する人間が多いはずがないと思うんだけどな。
『自殺するような弱い人間だったのが悪い』
と言うのなら、
<そんな弱い人間に生んだ側の責任>
は、どうなるの?
『親の所為にするな!』
が成立するのなら、
『子供の所為にするな!』
というのも成立しないとおかしいよね?
人間はずっと、その事実から目を背けてきた。だから、問題の本質が理解できなかった。
子供が無条件に親を尊敬し信頼するなんてことは、有り得ない。
尊敬し信頼してもらうには、それに見合う<実績>と<背景>が必要なんだ。
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