ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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第三幕

その種の<選民意識>の類は、知的生命体であれば容易く陥ってしまう誤解であることが分かってる

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悠里ユーリ安和アンナも、今はまだ<学校>に通ってないから、学校での人間関係を心配する必要はない。

そもそも、吸血鬼が人間の学校に通うには、まったく成長しているように見られなくてもそれほど不審がられずに済む一年前後が、同じ学校に通い続けられる限度かな。

僕達の場合は、年の半分を海外で過ごすことにしてるから、その間、海外の学校に通わせて、残りの半分は日本の学校に通わせることになるだろうな。

その際の手順も、すでに話し合っている。

毎回、別の<身元>を作ることになるけど、それについては<互助組織>が対処してくれることになっているのはこれまでどおり。吸血鬼の一般的な対応だから彼らも慣れたものだ。

日本では、この周辺の学校を転々とする形になる予定なんだ。

もっとも、実際に小学校に通えるようになる頃には、悠里も安和も、実年齢じゃ三十歳くらいだから、他の生徒達との人間関係については何も心配していない。

学校に通うのも、あくまで人間との関わり方を実地で学んでもらうだけだから、<勉強>よりも<人間観察>に力を入れてもらえばいい。

他の人間の子供達についてももちろんだけど、特に<教師>、つまり<大人>をよく見るのが目的かな。

僕も人間の学校に通っていた時には、他の生徒よりも教師を観察していたし。

そこから人間の考え方や傾向を学んだよ。

人間と関わっていくのなら、それは予備知識として持っておくべきだと思う。

正直言って、あまりの稚拙さに絶望しそうになることもある。でも、その経験も重要なんだ。

『人間はどこまでも愚かで幼稚で、自分達吸血鬼やダンピールは優れた種族である』

という認識を敢えて客観視させるために。

その種の<選民意識>の類は、知的生命体であれば容易く陥ってしまう誤解であることが分かってる。

だけどそれは、物事を一面でしか見られない者の思考だ。

『何をもって優れていると見るか?』

という視点が欠けているから。

人間が本当にただ愚かなだけの生き物であれば、これほど文明を発達させることはできなかった。科学技術を発展させることはできなかった。何より、人間は脆弱であるがゆえに<工夫>する。

僕達吸血鬼は、自身が非常に高い能力を持ち強靭であるがゆえに人間のような工夫が必要ないんだ。だから思い付かない。

理論や構造は理解できても、自分で思い付くということがないんだ。必要ないから。

セルゲイが、人間の作った蒸気自動車に興味を持ったのもそれだった。彼にはそんな発想自体がなかったから、それを思い付く人間に大いに感心したんだ。

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