ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
449 / 571
第三幕

ここで言う<背景>とは、<力>であり、<力を制御する胆>であり、<胆を成す錬>なんだ

しおりを挟む
<一意>のコツには、『力を抜くこと』以上に大事な点がある。

それは、

『相手を認める』

こと。相手の存在を認めることで、より同調が確実になるんだ。

逆に、

『相手のことを認めなければ上手くいかない』

と言ってもいい。

当然だよね。『同調する』ということは相手がいて、相手に合わせるということなんだから。相手をまず認めないと、同調もできないし。

相手を認める精神的余裕があれば、力の制御もしやすい。

自分の力の制御ができるということは、相手が振るう力についても制御ができるようになるということなんだ。

それらはすべて繋がっていて、関連し合い、影響し合ってるんだよ。

悠里ユーリも、<一意>に習熟できれば、人間を傷付けずに制圧することも容易になる。

南米でセルゲイがゲリラを制圧したのも、これの応用だった。セルゲイが体に触れた瞬間に、まるで人形のようにゲリラ達は地面に転がされていたな。

もちろん、必要もないのに制圧するのは容認できない。ただし、急迫不正の侵害行為に対処できなければ意味がない。

その辺りの判断をするにも、冷静さが求められる。そして冷静でいるには、冷静さを担保できる背景がないと難しい。

ここで言う<背景>とは、<力>であり、<力を制御する胆>であり、<胆を成す錬>なんだ。

この積み重ねが、力を持つ者には求められる。

「あ…はぁっ! う……ふぅ……!」

そろそろ悠里も限界で、もう腕も動かなくなってきたみたいだったから僕が<一意>を解くと、途端に、その場に座り込んでしまった。

見た目には三歳くらいの子相手だから、もし人間に見られたら虐待と思われるかもしれないね。

だから僕も気を付けないとと思う。これを強要してしまっては、確かに虐待と言われても仕方ない。

だけど、二人にとってこれは僕との<遊び>でもある。二人が望んでるものであることが大事だ。

遊びだから、

「じゃ、そろそろ帰る?」

すっかり呼吸を整えて涼しい顔になっていた安和が訊いてきた。

「ああ、今日はもう……無理、かな……」

笑顔だけど立ち上がることもままならない様子で、悠里が言った。

十分に発散できたのが見て取れる。

吸血鬼やダンピールは力が強すぎるからなかなか全力を発揮できる機会も少ない。

成長してくるとそんなに気にならなくなってくるけど、幼いうちは鬱憤もたまってしまう。それを発散するためにもこうして鍛錬を積むんだ。

抑え付けるだけじゃ制御はできない。時にはこうして開放しなくちゃね。

そして家に帰り、僕達は三人で一緒にお風呂に入った。安和と悠里はともかく僕は汗もかいてないけど、一応、ね。

これ自体が親子のスキンシップでもあるし。

見た目には、十一歳くらいの兄と、三歳くらいの双子の弟妹、という感じだけど。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

後宮の裏絵師〜しんねりの美術師〜

逢汲彼方
キャラ文芸
【女絵師×理系官吏が、後宮に隠された謎を解く!】  姫棋(キキ)は、小さな頃から絵師になることを夢みてきた。彼女は絵さえ描けるなら、たとえ後宮だろうと地獄だろうとどこへだって行くし、友人も恋人もいらないと、ずっとそう思って生きてきた。  だが人生とは、まったくもって何が起こるか分からないものである。  夏后国の後宮へ来たことで、姫棋の運命は百八十度変わってしまったのだった。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます(Ver.02)

京衛武百十
ファンタジー
俺の名は錬是(れんぜ)。開拓や開発に適した惑星を探す惑星ハンターだ。 だが、宇宙船の故障である未開の惑星に不時着。宇宙船の頭脳体でもあるメイトギアのエレクシアYM10と共にサバイバル生活をすることになった。 と言っても、メイトギアのエレクシアYM10がいれば身の回りの世話は完璧にしてくれるし食料だってエレクシアが確保してくれるしで、存外、快適な生活をしてる。 しかもこの惑星、どうやらかつて人間がいたらしく、その成れの果てなのか何なのか、やけに人間っぽいクリーチャーが多数生息してたんだ。 地球人以外の知的生命体、しかも人類らしいものがいた惑星となれば歴史に残る大発見なんだが、いかんせん帰る当てもない俺は、そこのクリーチャー達と仲良くなることで残りの人生を楽しむことにしたのだった。     筆者より。 なろうで連載中の「未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます」に若干の手直しを加えたVer.02として連載します。 なお、連載も長くなりましたが、第五章の「幸せ」までで錬是を主人公とした物語自体はいったん完結しています。それ以降は<錬是視点の別の物語>と捉えていただいても間違いではないでしょう。

拝啓~穀潰しのアリソンへ

黄昏湖畔
ライト文芸
これは終わりを迎えようとしている老夫婦の話。 一人の老婆が死を迎えようとしていた。微笑む彼女の傍らには最愛の夫『穀潰しのアリソン』の亡骸。 安らかに眠る彼を看取った彼女は何を思うのか?『穀潰し』の名に隠された愛の物語。そして幸せの物語。

処理中です...