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第三幕

<親が子供に与える影響>という現実を

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僕もアオも、子供がどんな人に育つかは親に一番の責任があると考えてる。

だけどそれは、赤の他人が余所の親を攻撃する根拠にするために言ってるんじゃないんだ。自分は他人の親に何かされたって言うの? そうじゃないなら攻撃する理由がないよね。

でももし、誰かに傷付けられて、被害を受けて、それで苦情として言ってるのなら、分かるはずだよね?

『自分の子を、他人を傷付けようとするような人間のままで社会に出すことは、とても迷惑で不快なことだ』

ということが。だから余所の親に対して苦情を言いたくなるんだよね?

だとしたら、自分が親として子供を育てる場合も、『自分の子を、他人を傷付けようとするような人間のままで社会に出す』のは好ましくないことだと思わないの?

たとえ自分の子が何歳になっても。

何より、

『どうせ人間の本質なんて変わらないんだから、犯罪者が更生するとか有り得ない。だから殺してしまえ』

と言うのなら、犯罪者になるような人は、親の下にいた時にはすでに犯罪を犯すような人になっていたということだよね? 大人になってからそうなったわけじゃないということだよね?

そして、自分がそうなってしまったことを親の所為にせずに自分で変わろうと努力しても無駄だということだよね?

『どうせ人間の本質なんて変わらないんだから、犯罪者が更生するとか有り得ない。だから殺してしまえ』

という理屈が正しいのなら。

それとは逆に、

『自分の性格がどんなだろうと自分の努力次第で変われるんだから、親の所為にするな』

と言うのなら、『どうせ人間の本質なんて変わらないんだから、犯罪者が更生するとか有り得ない』というのは成立しないよね?

ねえ、どちらが正しいの?

『どうせ人間の本質なんて変わらないんだから、犯罪者が更生するとか有り得ない』のなら、『自分の性格がどんなだろうと自分の努力次第で変われる』というのはおかしいし、

『自分の性格がどんなだろうと自分の努力次第で変われる』のなら、『どうせ人間の本質なんて変わらないんだから、犯罪者が更生するとか有り得ない』というのもおかしいよね?

僕も、<本質>は確かに変わらないだろうと思う。

だけど、自身の<本質>と折り合う方法を身に付けることはできるはずなんだ。だから、『自分の性格がどんなだろうと自分の努力次第で変われる』のは事実だと思う。

けれどそれは、<親が子供に与える影響>という現実を否定するものじゃないし、<親の責任>を否定するものでもないはずなんだ。

その一方で、何の関係もない赤の他人がそれを理由に余所の親を罵っていいわけでもない。

僕もアオも、悠里ユーリ安和アンナ椿つばきがそれを理由に余所の親を罵ることを、許しはしないよ。

悠里や安和や椿が僕やアオに何か苦情があるのなら、それには耳を傾けるけどね。

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