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第三幕

自分の子供を不幸にしたくないなら

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僕には、親として、悠里ユーリ達が他人を攻撃して傷付けるような振る舞いをしないかどうか確認する義務がある。

他人を攻撃し傷付けようとするような<危険な存在>を野に放つわけにはいかないからね。

けれど、ダンピールである彼は、非情に強い攻撃性を秘めている。これは、僕達吸血鬼が元々備えている<種族的特徴>だ。非常に高い攻撃力を持つからこそ、それを活かすのは、本来なら当然のことだから。

でも、僕達吸血鬼やダンピール同士ならそれも<対等な条件>と言えたとしても、それを人間に向けるのは、ただの<虐待>や<虐殺>になってしまう。力の差がありすぎるからね。

人間が強力な武器を使うとしても、それはただの<道具>に過ぎないし、道具は使う者を選べない。そして人間社会のありとあらゆる場所に容易に侵入できる僕達が人間の使う強力な武器を手にすることも容易い。

人間が使う武器を僕達も使えば、<道具による力の差>は意味を成さない。人間は<数>こそ多いけど、それさえ、<眷属>を作れば千人万人規模の<軍団>さえ僅かの時間で揃えることができるんだ。

僅か五歳の子供でも、眷属になれば百人の大人を一方的に蹂躙することもできてしまう。

そんな吸血鬼やダンピールや眷属が人間と同じ武器を手にしたら、どうなると思う?

人間に勝ち目はある?

知能だって人間には負けてないから、人間が立てる戦術や戦略も、理解し、対応することができるよ?

人間が吸血鬼を倒せたのは、その吸血鬼に驕りや油断があったからだ。人間を手強い敵と見做し油断なく対処すれば、人間が吸血鬼に勝てる道理はないんだよ。

残念だけど。

今、僕達吸血鬼やダンピールの存在を認知している人間達はそれをしっかりと理解している。これまでの<失敗>から学んだからね。

だから原則として不干渉を貫いているんだよ。僕達吸血鬼が積極的に人間と敵対する意図がないことも理解しているから。

吸血鬼の存在を察知しても、見て見ぬフリをするんだ。それが一番、安全だから。

敵対する意思のない者に攻撃を加えて結果的に敵にすることほど愚かなことはないよね? その愚かなことをしている実例を、人間だって知っているよね?

だとすれば、自分の子供が無闇に他人を攻撃し敵を作ることがいかに愚かで不幸なことかも分かるんじゃないの?

自分の子供を不幸にしたくないなら、敵じゃない相手にわざわざ自分から攻撃を加えて敵にするようなことをする人に育てないというのが、最も確実じゃないのかな?

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