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第三幕
いつでもどこでも
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「生き物の研究って、何か特定の種類に絞ってやるんじゃなかったら、いつでもどこでもできるよね。だって、どこにでも何か生き物はいるんだからさ。人間からは嫌われる<害虫>だってもちろん生き物なわけで、しかもその生態とか構造とかはすごく興味深いし」
「そうだね。この地球という惑星の懐の深さを感じるよ」
虫かごに入れたゴキブリを熱心に見詰めつつ語る悠里に、僕は応えてた。人間ならこういう時、
『そんなもの!!』
と声を荒げてしまうのかもしれないけど、彼の場合はゴキブリを苦手としてるアオや椿に対しては見せないように気を遣ってくれてるから、僕としても、好きにさせてあげられるというのもある。
これが、アオや椿が嫌がっているのにリビングで観察をしているようだと、自重を求めざるを得なかったと思う。
悠里が家族を気遣える子だからこそのものだろうな。そしてそれは、アオが、相手を敬い気遣う姿勢を見せてきたからこそのものなんだ。自分に向けられるアオのそういう姿を見てきたからこそ彼はそれを真似るだけでよかった。
『子供に甘い貌をすると付け上がる』
と言う人がいるけれど、それは、隙あらば相手につけ込もうとする身近な誰かの姿を姿を見倣っているからのものじゃないのかな。手本がなければそもそもそういう発想を持つこと自体が難しいからね。
『気遣いには気遣いで返す』
アオと子供達の間にはそういう関係が出来上がっているんだ。
僕はそれを誇りに思う。
『相手が下手に出ればそこにつけ込む』
それが当たり前の環境に育てばなるほどそういう子供に育つかもしれない。だけど、悠里達はそうじゃないんだ。
『相手が下手に出たからといってそこにつけ込むという発想がない』んだよ。
確かに『相手が下手に出れば徹底的につけ込む』という発想を持つ人だったら、
『お前達が勝手に生み出したんだ! すべて僕の思い通りにしろ!!』
といったことを要求するかもしれない。けれどそれは、
『相手を気遣う』
ことができる人はやらないよね? だから、アオから<気遣い>を学んだ悠里達についてはそもそもその心配をする必要もないんだ。
加えて、
『何か要求があるのなら丁寧に相手と協議する』
そういう姿勢も、悠里達はアオから学んでいるんだ。一方的に高圧的に要求するんじゃなく、まずは要望を打診して、それが呑めるものであるかどうかを協議する余地を設けるというやり方を、アオは身をもって悠里達に示してくれていた。それを学び取っている悠里達がどうして、
『お前達が勝手に生み出したんだ! すべて僕の思い通りにしろ!!』
なんて言わなきゃいけないの?
「そうだね。この地球という惑星の懐の深さを感じるよ」
虫かごに入れたゴキブリを熱心に見詰めつつ語る悠里に、僕は応えてた。人間ならこういう時、
『そんなもの!!』
と声を荒げてしまうのかもしれないけど、彼の場合はゴキブリを苦手としてるアオや椿に対しては見せないように気を遣ってくれてるから、僕としても、好きにさせてあげられるというのもある。
これが、アオや椿が嫌がっているのにリビングで観察をしているようだと、自重を求めざるを得なかったと思う。
悠里が家族を気遣える子だからこそのものだろうな。そしてそれは、アオが、相手を敬い気遣う姿勢を見せてきたからこそのものなんだ。自分に向けられるアオのそういう姿を見てきたからこそ彼はそれを真似るだけでよかった。
『子供に甘い貌をすると付け上がる』
と言う人がいるけれど、それは、隙あらば相手につけ込もうとする身近な誰かの姿を姿を見倣っているからのものじゃないのかな。手本がなければそもそもそういう発想を持つこと自体が難しいからね。
『気遣いには気遣いで返す』
アオと子供達の間にはそういう関係が出来上がっているんだ。
僕はそれを誇りに思う。
『相手が下手に出ればそこにつけ込む』
それが当たり前の環境に育てばなるほどそういう子供に育つかもしれない。だけど、悠里達はそうじゃないんだ。
『相手が下手に出たからといってそこにつけ込むという発想がない』んだよ。
確かに『相手が下手に出れば徹底的につけ込む』という発想を持つ人だったら、
『お前達が勝手に生み出したんだ! すべて僕の思い通りにしろ!!』
といったことを要求するかもしれない。けれどそれは、
『相手を気遣う』
ことができる人はやらないよね? だから、アオから<気遣い>を学んだ悠里達についてはそもそもその心配をする必要もないんだ。
加えて、
『何か要求があるのなら丁寧に相手と協議する』
そういう姿勢も、悠里達はアオから学んでいるんだ。一方的に高圧的に要求するんじゃなく、まずは要望を打診して、それが呑めるものであるかどうかを協議する余地を設けるというやり方を、アオは身をもって悠里達に示してくれていた。それを学び取っている悠里達がどうして、
『お前達が勝手に生み出したんだ! すべて僕の思い通りにしろ!!』
なんて言わなきゃいけないの?
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