ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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第三幕

僕達は僕達にできることを続ける

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先のことはともかく、この時点での紫音しおんについては、危ういながらも安定を確保できたということで、取り敢えずはこの状態を維持することに専念する形になった。

智香ともか来未くみとも、少なくとも表面上は良好な関係を築けてる。

もっとも、本当の問題が紫音しおんの両親にあるのは変わらないから、根本的な解決には至ってない。

僕が魅了チャームを用いて彼の両親を操れば体裁上は解決したようにも見せられるのは事実でも、彼と同じく問題のある家庭で育っている子供はそれこそ数限りなくいるだろう。

結局、それが、ネット上などで見られる<行儀の悪い振る舞い>の原因になっているんだから。

それらすべてを僕が解決するわけにはいかない。

だとすれば、紫音しおんの家庭にだけ干渉しても意味がないんだ。

ただ、紫音しおん自身が、椿つばきに救いを求めてきたから、彼本人についてだけは、対処もするけど。

それを『薄情だ』という人間もいると思う。でも、僕は<人間>じゃないんだ。<吸血鬼>なんだよ。人間と同じメンタリティを持っているわけじゃない。

なにより、そこまでしなければいけない理由もないからね。

僕はあくまで、椿を守るだけだから。

それでも、今回の経験は、椿にとっても貴重なものになった。紫音しおんに対処できたことが、彼女の成長に繋がったのも事実。

それが、彼女に子供ができた時の指針になる。

紫音しおんに対してできたことなら、自分の子供にもできるからね。

『相手を一人の人間として接する』

ということが。

でも同時に、椿にかかる負担を僕やアオが軽んじることはない。紫音しおん智香ともか来未くみの間を取り持つストレスは、無視できるものじゃないから。

本当ならこれも、椿がする役目じゃないけどさ。

紫音しおん智香ともか来未くみの両親には望むべくもないから、結果として椿がすることになってしまっているだけで。

そして椿にかかるストレスは、僕とアオが癒す。

それができるからこそ、

<人間と吸血鬼とダンピールの家族>

を維持できるんだ。

誰かに任せきりにしていたら、こんなことはできないよ。

誰かがこの環境を提供してくれるのを期待しているだけじゃ、得られないんだ。

自らそれを作る努力があってこそ、成し遂げられる。

種族が違う僕達にでもできることがどうして同じ人間同士でできないのかは、正直な話をするなら疑問だけど、できないことはできないというのも事実だからね。それを責めるつもりもないよ。

これからも、僕達は僕達にできることを続ける。

いつか人間も、それができるようになったらいいね。

僕としては、期待もしてるんだけどな。

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