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第三幕

今現在でも起こっているんじゃないの?

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この世には本当に、自分の思い通りにいかないだけで頭に血を上らせて他人を攻撃する人が少なくない。

<物>に当たり散らす人もいるけど、それって要するに、

『お前もこうしてやろうか!?』

という<脅し>だよね。そして<脅し>は、攻撃の一種だ。

そしてそういう人は、自分が他人を攻撃するのは許されて、他人が自分を攻撃するのは許さないと考えてることが多い。

加えて、

『正しいのは常に自分で、間違っているのは常に他人』

と考えていることも多い。

ましてやそういう人が権力を握ると、自分の思い通りになるように他人を抑圧しようとする。

実際に、他人に対して攻撃的な人が権力を持っていて、その人やその人に連なる人達が他人を虐げていても、その窮状を訴えても、権力によって握り潰されるということが、今現在でも起こっているんじゃないの? 思い当たる節があるんじゃないの?

これでも、

『自分の思い通りにいかないだけで頭に血を上らせて他人を攻撃する』

のが好ましいことだと言うの? 親が子供に対してそのままな振る舞いをしていて、いいと思うの?

それが好ましい結果を生むと、まだ思い込むの?

僕はそうじゃない無数の実例を見てきたからこそそうじゃないやり方を選ぶんだ。

そしてそれは、椿つばきにも伝わってる。

今の紫音しおんに必要なのは、今まで自分がいた環境こそに問題があったと理解してもらうこと。同時に、今、自分の目の前にはそうじゃない環境があると理解してもらうこと。

これが実感できれば、彼は、

<攻撃的に振る舞う必要>

がなくなる。

<攻撃的に振る舞う必要>がなくなれば、ただのゲームで自分の思い通りにならない程度のことで癇癪を起こす必要もなくなるよね。

ただし、それが実感できるまでには一朝一夕ではいかない。彼が生まれてこれまであの両親の下で過ごした時間は、そう簡単には覆らない。

癇癪を起こした紫音しおんは、ボードゲームを何度も殴りつけた後、部屋の隅に膝を抱えて座り込んだ。

自分の感情を持て余してしまって、どうすればいいのか分からなくなったんだろうな。

だけど、その感情を、直接、椿にぶつけようとしない辺りに、まだ理性を感じる。まだ取り返しがつく段階だと感じる。

椿に殴りかかったりしちゃいけないとは、まだ思ってくれてるんだろうね。

そんな彼の肩に椿はそっと手を触れた。なのに紫音しおんは、

「んんっっ!」

獣の呻き声のような声を上げつつ、体をゆすって椿の手を振り払う。

たぶん、今、彼の中では、自分の思い通りにいかないことに対する憤りと同時に、実は上手くできない自分自身に対する憤りとが無秩序に渦巻いているんじゃないかな。

優しくされると余計に惨めな気分になる状態なのかもしれない。

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