ショタパパ ミハエルくん（耳の痛い話バージョン）あるいは、（とっ散らかったバージョン）

第三幕

何らかのメリットと引き換えに我慢を強いる

相手に＜我慢＞を強いる関係は、長くは続かない。日常にも溢れているよね。そういう事例は。

『旦那さんのコレクションを奥さんが勝手に処分して、旦那さんがキレた』

とか。

それは結局、旦那さんがコレクションについて奥さんに我慢を強いてきたことで、奥さんが我慢の限界を迎えてしまって、そして、コレクションを勝手に処分したことについて、奥さんも旦那さんに我慢を強いることで関係が破綻した事例だよね。

こう言うと、旦那さんの方は、

『自分も妻の○○にずっと我慢してきた！！』

的なことを言うかもしれないけど、それはすなわち、

『相手に我慢を強いるだけの関係は上手くいかない』

ということの何よりの証拠じゃないの？

『お互いに我慢しているんだからお互い様。だからひたすら我慢するべき。という道理は成立しない』

という何よりの証拠だよね？

確かに、何もかも自分の思い通りになるということが有り得ない以上は、ある程度の＜我慢＞も必要になると思う。でも、

『何らかのメリットと引き換えに我慢を強いる』

のなら、その＜メリット＞が失われた時、担保されなくなった時は、我慢しなければならない理由も失われるよね？

たとえば、＜経済的なメリット＞を担保に我慢を強いてきたのなら、収入が減るなどしてその＜経済的なメリット＞が薄れれば、当然、我慢する必要はなくなるよね？

自身の容姿のレベルが高く、＜そんな自分と一緒にいられることで高いステータスを得られるメリット＞を担保に我慢を強いてきたのなら、加齢と共に容姿が衰えればやっぱり＜高いステータスを得られるメリット＞も薄れて、我慢する意味がなくなるよね？

『我慢するための前提条件が崩れても我慢しろ』

自分はそれで我慢できるの？

我慢できないと感じるなら、それが答えだよ。

『我慢するための前提条件を提示し続けられない自分は許されて、前提条件がなくなって我慢できなくなった相手は許さない』

というのは、いくらなんでも自分にだけ都合が良すぎないかな？

僕とアオも、お互いにある程度の我慢はしてる。アオには、僕が吸血鬼であることで生じる人間社会との齟齬を我慢してもらってるし、僕がしてる一番の我慢は、やっぱり、

『アオが間違いなく僕を置いて先に逝くこと』

かな。

これは、

『アオが今のアオであり続けること』

を前提にしてできる我慢なんだ。彼女が他者を敬うことができない人になってしまったら、僕はきっと、彼女を愛し続けることができない。

だからアオは＜眷属＞になることを選択しなかった。吸血鬼の眷属となって超常の力を得、人間なら決して耐えられないほどの＜痛み＞さえ苦もなく受け止められるようになると、人間は変わらずにいられなくなるからね。