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第三幕

あなたたち人間は、それでいいの?

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『まったくの見ず知らずの人から一方的に<不平不満の捌け口>にされて、納得できる?』

見ず知らずでなくても、たとえば学校のクラスメイトや、職場の同僚からだって、

<ストレス解消のためのサンドバッグ>

にされて納得できる人はそうはいないよね?

だったら、自分の子供が他人を<ストレス解消のためのサンドバッグ>にすることを見過ごしちゃいけないよ。

自分の子供が他人から<ストレス解消のためのサンドバッグ>にされることも防がなくちゃいけないけど、逆も防がなくちゃいけないんだ。

親ならね。

世の中では、

『子供を犯罪から守ろう!』

的なことが叫ばれてるらしいけど、僕の実感としては、

<見ず知らずの他人が起こす犯罪>

に巻き込まれるよりも、日常における<イジメという犯罪>とかに巻き込まれていることの方がずっと多い印象だね。

だとすれば親は、自分の子供に対して、他人を<ストレス解消のためのサンドバッグ>にすることをまず予防しなきゃいけないと思うよ。

『自分の子供はそんなことするはずない!』

じゃなくて、ちゃんとそれを確認しなきゃ。

だけどそうすると今度は、

『じゃあ、どうやってストレス解消すればいいんだ!?』

と言う人が出てくるかもしれない。でも、そう考えること自体がおかしいよね?

だって、それ、

『他人を<ストレス解消のためのサンドバッグ>にしていい』

と考えていなくちゃ出てこない発想だと思うけど?

僕とアオは、

<子供のストレスを受け止めるのは、その子をこの大変な世の中に送り出した親の役目>

だと考えているよ。

大変なことかもしれないけど、やりたいことじゃないかもしれないけど、でも、それは、自分が子供をこの世に送り出すことを決断しなきゃする必要もないことだったよね?

自分の決断こそが、その必要性を招いたんだ。その現実から逃げていて、どうして子供に対して<人としての在り方>を説けると思うの?

<責任>を語れると思うの?

もっとも、そう言ってる僕自身が、人間の法律を必ずしも守ってるわけじゃないから、誰かに直接<責任>を語ったとしても、

『お前にそれを言う権利があるのか!?』

と言われたら返す言葉もないけどさ。

人間の法律は、僕達吸血鬼のことを考慮して作られていないからね、守ることができない部分も少なくない。

それを『仕方ない』として守らない僕達が人間に対して<説教>はできないよね。

でも、

<問い掛ける>

ことはできる。

『あなたたち人間は、それでいいの?』

と。

『それで、あなた達人間が抱える問題が解決すると、本当に思うの?』

と。

まあ、表に出て問い掛けることはやっぱりできないけどね。

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