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第三幕

根本的に異なるメンタリティ

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僕達吸血鬼が人間を批判するのは思い上がりだと感じるから、僕は、面と向かって人間を批判しないようにはしてる。

ただ、あくまで他人事として見ていても、相手を敬うこともできない人が<人としての道理>を説いていたりするのを見ていると、すごく違和感を覚える。

『自分は人としての道理をわきまえていないのに?』

って思ってしまうんだ。

芸能人の不倫が報道された時の反応とかが分かりやすいかな。

不倫という行為を<人の道に外れている行い>として罵っていたりするけど、『他人を罵る』という行為自体も、人の道に外れた行いのはずなのにね。

だけど僕は、それには関わらないように心掛けてる。

そもそも<別の種>であって根本的に異なるメンタリティを持つ僕が人間の考えについて口出しするのも違うんだろうな。

ただ、人間同士で諍いを起こして、僕の大切な人を傷付けたりというのは、受け入れられない。

僕にできるあらゆる手段を用いて対処する。

もちろん、使う<手段>は慎重に選ぶけど。

何度も言う通り、吸血鬼が人間を滅ぼすだけなら、別に難しくない。無差別に眷属を作って、その眷属に、無制限に眷属を作らせればいいんだから。

そうすれば、早ければ数日で地球から人間はいなくなる。

でも、そうやって作った眷属は、代を重ねるごとに劣化していき、やがて僕達吸血鬼の指示すら聞かない完全な怪物になってしまうと言われてるけどね。

だけどそうなったらそうなったで、吸血鬼の指示に従う眷属に<始末>させれば済む話なんだよ。

けれど、吸血鬼はそれをしない。だって、吸血鬼にとって人間は排除しなくちゃいけない対象じゃないから。

もし、人間が地球環境を破壊して人間自身が生きられないそれになったとしても、吸血鬼ならたぶん生きられる。

そんな僕達の感覚を人間達は毛嫌いするかもしれない。

『見下されてる』

と感じるかもしれない。それでも僕達は人間と敵対する意思はもうないんだよ。それは事実なんだ。

敵対する意図がない相手に難癖をつけてわざわざトラブルを作ろうとするのも、人間の悪癖の一つなんだろうな。

本当に困りものだよね。

人間にはそういう面もありつつ、アオやさくらのような人がいるのも事実。

アオは、人間代表として、ダンピールである悠里ユーリ安和アンナに必要なことを教えていってくれてる。

<できない理由>ばかりを並べて努力をしない人には、確かに何もできないと思う。そして、そういう人はそういう人で集まる傾向にある。

それがすごく残念だ。

アオやさくらのように、多くの人が『できない』『無理だ』と、できない理由を並べて諦めてしまう中でも努力ができる人がいるから、余計にね。

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