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第三幕
僕達にとっての<団欒>
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「なんて言うかさ、他人に対しては、『迷惑掛けるとか有り得ない!』的に罵ってるのに、自分のやってる行為が<迷惑>になってることに全く気付いてないのが本当に多いよね」
明け方、いつものように仕事に一区切りをつけたアオが部屋から出てきてリビングのソファに腰を下ろしながら苦笑いを浮かべてた。
また、仕事をしながらインターネットを閲覧してたんだろうな。
アオは、いわゆる<エゴサーチ>というものはしないけど、今は、全然関係のないページを見ていても<ヘッドライン>という形でトピックスが表示されて、その中でつい気になったものを見てしまうということが彼女にはあった。
そういうものを見ていると、人間がいかに攻撃的な生き物かがよく分かる。しかも、他人が攻撃するのを批判しながら、自分は特定の誰かを攻撃してることが多い。自分のことは正当化しながら他人を貶めるんだ。
僕自身は、人間同士の戦争の現場そのものを、それだけじゃなく日常の中での<犯罪>についても無数に見てきているからインターネット上のやり取りくらいではそれほどショックも受けないけど、正直、暗澹たる気分になる時はある。
特に、
『クソガキはぶん殴って躾けるべきだ』
的な発言には、悲しくなってしまう。
暴力を推奨することが何をもたらすのかを、教わっていないんだなと思う。
安易に暴力に頼ることで何が起こるのか、誰も教えてくれなかったのか……
すると、リビングでスマホをいじっていた安和も肩を竦めながら、
「他人に迷惑を掛けるガキはぶん殴ってやればいいとか言ってる奴は、自分がぶん殴られる側になってることには気付かないもんだよ」
呆れた様子でそう言った。続けて、
「自分が他人を不快にさせて迷惑掛けてるってのにさ」
と。
彼女は、アクセサリーやファンシーグッズのレビューサイトを運営してて、そこにいろんな人からのコメントが届くことで、中には酷い暴言を残していく人もいるから、それこそ実感なんだろうな。
すると、昆虫のスケッチにいろいろと文章を書き込んでいた悠里が顔を上げて、
「人間に限らず、自分の姿はなかなか客観的に見られないからね」
と口にした。彼は今、近所の公園などにいる様々な昆虫や小動物をつぶさに観察しスケッチをするということを日課にしていた。
そんな、『観察する』ことの大切さを知る彼だからこそ、物事を客観視できないことの残念さを感じるんだろうな。
今はまだようやく明け方に差し掛かった時間。ダンピールである悠里と安和にとっては今がちょうど昼間のようなものだけど、人間である椿はぐっすり眠っているところだ。
これも、僕達にとっての<団欒>だった。
明け方、いつものように仕事に一区切りをつけたアオが部屋から出てきてリビングのソファに腰を下ろしながら苦笑いを浮かべてた。
また、仕事をしながらインターネットを閲覧してたんだろうな。
アオは、いわゆる<エゴサーチ>というものはしないけど、今は、全然関係のないページを見ていても<ヘッドライン>という形でトピックスが表示されて、その中でつい気になったものを見てしまうということが彼女にはあった。
そういうものを見ていると、人間がいかに攻撃的な生き物かがよく分かる。しかも、他人が攻撃するのを批判しながら、自分は特定の誰かを攻撃してることが多い。自分のことは正当化しながら他人を貶めるんだ。
僕自身は、人間同士の戦争の現場そのものを、それだけじゃなく日常の中での<犯罪>についても無数に見てきているからインターネット上のやり取りくらいではそれほどショックも受けないけど、正直、暗澹たる気分になる時はある。
特に、
『クソガキはぶん殴って躾けるべきだ』
的な発言には、悲しくなってしまう。
暴力を推奨することが何をもたらすのかを、教わっていないんだなと思う。
安易に暴力に頼ることで何が起こるのか、誰も教えてくれなかったのか……
すると、リビングでスマホをいじっていた安和も肩を竦めながら、
「他人に迷惑を掛けるガキはぶん殴ってやればいいとか言ってる奴は、自分がぶん殴られる側になってることには気付かないもんだよ」
呆れた様子でそう言った。続けて、
「自分が他人を不快にさせて迷惑掛けてるってのにさ」
と。
彼女は、アクセサリーやファンシーグッズのレビューサイトを運営してて、そこにいろんな人からのコメントが届くことで、中には酷い暴言を残していく人もいるから、それこそ実感なんだろうな。
すると、昆虫のスケッチにいろいろと文章を書き込んでいた悠里が顔を上げて、
「人間に限らず、自分の姿はなかなか客観的に見られないからね」
と口にした。彼は今、近所の公園などにいる様々な昆虫や小動物をつぶさに観察しスケッチをするということを日課にしていた。
そんな、『観察する』ことの大切さを知る彼だからこそ、物事を客観視できないことの残念さを感じるんだろうな。
今はまだようやく明け方に差し掛かった時間。ダンピールである悠里と安和にとっては今がちょうど昼間のようなものだけど、人間である椿はぐっすり眠っているところだ。
これも、僕達にとっての<団欒>だった。
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