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第二幕
エンディミオンの日常 その9
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真夜中にも拘らずいつもと変わらず草花の手入れをしているエンディミオンに、さくらは、
「ねえ、一緒にお風呂入らない?」
唐突ともいえる提案をした。
けれど、エンディミオンは不意に手を止めて、
「……」
数秒、思案した後、
「……そうだな…」
手にしていた園芸バサミをいつもの場所に戻した。
急がなければいけないような作業ではなかったからだ。
さくらも、エンディミオンの様子を見ていて今なら大丈夫だと思ってそう声を掛けたのである。
こうして二人で家に上がる。
子供達は皆、すでに眠っていた。だから完全に夫婦水入らずの時間と言えた。
さくらはスーツを脱いでハンガーに掛け、下着姿になって風呂場へと向かう。
子供を二人生み、その子供達も共に高校生になっているだけあって、スタイルにも相応の変化が見られるものの、その中でもまだそれなりに維持されている方かもしれない。
家族のために健康でいなければと定期的にフィットネスジムに通って体を鍛えている効果が出ているのだろうか。
対して、エンディミオンの方は、ミハエルと同じで十一歳程度の子供の見た目そのものだった。二人が並ぶとまるで母子のようだ。
けれど、二人は、法律婚ではないとは言えど、れっきとした<夫婦>である。
そうして二人して脱衣場に行き、身に着けていたものをすべて脱ぐ。
ちなみに、脱衣場からも温室は見えるようになっている。一応、目隠しのためのカーテンは設置されているものの、外からは脱衣所も浴室も見えないようにはなっていることもあって、カーテンが使われることはまずない。
この家族の間では使う必要がないからだ。
浴室も広々としていて、かつ、温室の方が見えるようになっていることから、ほとんど露天風呂と変わらないくらいのかなりの開放感があった、
その中でさくらはメイクを落とし、エンディミオンは体を洗い始めた。
と、
「今日も何か変わったことはなかったか…?」
エンディミオンが不意に話し掛ける。
「そうね。特には」
さくらも落ち着いて応えた。こうして一緒にいればそれなりに会話もある。しかも、エンディミオンはさくらが仕事上で何か不快な思いをしてないかというのが気になるようだ。
正直、『何一つ嫌なことがない』とは言い難い職場なので疲れるようなこともありつつ、それでも、『どうしようもなく耐え難い』というまでのことはないので、こうしてエンディミオンに案じてもらえるだけでさくらは癒されるのを感じていた。
彼が自分を気遣ってくれるのが、自分を気遣えるだけの余裕があるのが嬉しかったのである。
「ねえ、一緒にお風呂入らない?」
唐突ともいえる提案をした。
けれど、エンディミオンは不意に手を止めて、
「……」
数秒、思案した後、
「……そうだな…」
手にしていた園芸バサミをいつもの場所に戻した。
急がなければいけないような作業ではなかったからだ。
さくらも、エンディミオンの様子を見ていて今なら大丈夫だと思ってそう声を掛けたのである。
こうして二人で家に上がる。
子供達は皆、すでに眠っていた。だから完全に夫婦水入らずの時間と言えた。
さくらはスーツを脱いでハンガーに掛け、下着姿になって風呂場へと向かう。
子供を二人生み、その子供達も共に高校生になっているだけあって、スタイルにも相応の変化が見られるものの、その中でもまだそれなりに維持されている方かもしれない。
家族のために健康でいなければと定期的にフィットネスジムに通って体を鍛えている効果が出ているのだろうか。
対して、エンディミオンの方は、ミハエルと同じで十一歳程度の子供の見た目そのものだった。二人が並ぶとまるで母子のようだ。
けれど、二人は、法律婚ではないとは言えど、れっきとした<夫婦>である。
そうして二人して脱衣場に行き、身に着けていたものをすべて脱ぐ。
ちなみに、脱衣場からも温室は見えるようになっている。一応、目隠しのためのカーテンは設置されているものの、外からは脱衣所も浴室も見えないようにはなっていることもあって、カーテンが使われることはまずない。
この家族の間では使う必要がないからだ。
浴室も広々としていて、かつ、温室の方が見えるようになっていることから、ほとんど露天風呂と変わらないくらいのかなりの開放感があった、
その中でさくらはメイクを落とし、エンディミオンは体を洗い始めた。
と、
「今日も何か変わったことはなかったか…?」
エンディミオンが不意に話し掛ける。
「そうね。特には」
さくらも落ち着いて応えた。こうして一緒にいればそれなりに会話もある。しかも、エンディミオンはさくらが仕事上で何か不快な思いをしてないかというのが気になるようだ。
正直、『何一つ嫌なことがない』とは言い難い職場なので疲れるようなこともありつつ、それでも、『どうしようもなく耐え難い』というまでのことはないので、こうしてエンディミオンに案じてもらえるだけでさくらは癒されるのを感じていた。
彼が自分を気遣ってくれるのが、自分を気遣えるだけの余裕があるのが嬉しかったのである。
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