ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
336 / 571
第二幕

秋生の日常 その18

しおりを挟む
学校近くで美登菜みとなと合流し、

「おはよ~♡」

教室では先に来ていた麗美阿れみあに美登菜が満面の笑顔で手を振った。

いかにもな<ラブコメもの>でありそうな光景を、美登菜は演出する。

「おはよう……」

麗美阿としては、正直、照れくささもあるものの、悪い気はしない。

そんな二人に迎えられ、秋生あきお美織みおりも教室に入る。

とは言え、他の生徒達の表情はどこか冷やかだったり、中には明らかに侮蔑を込めた笑みを浮かべた者もいた。

けれど、秋生はそれに気付きながらも気にしない。気にしても無駄なことを知っているし、気にして得られる物はほとんどないことも知っているから。

<他人を蔑む側>に回れば、その時は確かに楽かもしれないものの、それは結局、ちょっとしたことで今度は自分が<蔑まれる側>になるだけの話でしかないことも知っているから。

他愛ない<遊び>でも、彼女達にとって必要なことであれば、秋生は馬鹿にするつもりはなかった。

それに、最近は、秋生自身も、何となく楽しめてきている気がする。

少なくとも、嫌じゃない。

加えて、自分を好いてくれている彼女達が幸せそうにしているのを見るのも、悪い気はしない。

『不幸な生い立ちだった父さんでも幸せになれるためには、それこそ彼女達ぐらいの境遇の人達なら当たり前みたいに幸せになれなきゃおかしいと思う。じゃなきゃ、父さんなんて絶対に幸せになれないよ……』

そんなことを考えていた秋生に気付いたわけではないだろうけれど、隣に立った美織が話しかけてくる。

「秋生くん。私達みたいなのに付き合ってくれて本当にありがとう。秋生くんのおかげで、私達は生きられてるようなものなんだよ。

だから私も、秋生くんが幸せになれるお手伝いをしたい。美登菜みとなも、麗美阿れみあもそう思ってるよ」

「あ…うん。ありがとう」

美織は、曖昧な指示や空気を察するのは苦手なはずなのに、時折、

『心でも読んでるのか?』

と思わされるくらい確信を突いてくることもある。それはたぶん、空気が読めないからこそ惑わされることなく本題に触れることができるからだろう。

そういう部分も、『空気を読む』ことを当然と考える者には疎まれてきた。

秋生は思う、

『何だかんだ言ったって、『空気を読め!』とか言ってる人達も自分が読みたくない空気については従わなかったりわざと無視したりするよな……

他人の悪口で憂さを晴らしてる人達は、『他人の悪口を言うのは良くないこと』っていう<空気>は読もうとしない。

結局、そういうことなんだよな……<空気>なんて……』

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

海の見える家で……

梨香
キャラ文芸
祖母の突然の死で十五歳まで暮らした港町へ帰った智章は見知らぬ女子高校生と出会う。祖母の死とその女の子は何か関係があるのか? 祖母の死が切っ掛けになり、智章の特殊能力、実父、義理の父、そして奔放な母との関係などが浮き彫りになっていく。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...