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第二幕
恵莉花の日常 その24
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再度言うが、千華にとっては、恵莉花こそが<癒し>だった。そして、<救い>だった。
それどころか、<親代わり>でさえあるかもしれない。
恵莉花にだったら何でも話せる。親とは話せないことどころか、同年代相手だとウザがられるような、真面目で面倒臭い話だってできる。
それが千華にとってはどれほどのことだったか……
以前、千華は、『両親に対していつか復讐してやる』というような話をしたことがある。
その時、恵莉花は、頭ごなしに千華の話を否定はしなかった。
こういう時、フィクションではよくある、
『復讐なんてダメだよ! 千華が不幸になる!!』
的な言い方をしなかったのだ。
それどころか、
「そっか……それくらいなんだね……」
と応えただけだった。
しかもその上で、
「じゃあ、具体的にどんな風に復讐するの?」
と突っ込んだ話を振る。
すると千華は、
「え…と……そうだな。あたしがファッションブランド立ち上げてそれで母親から客を奪って潰すとか……?」
少し戸惑いながらもそう応える。そこで恵莉花は、
「すごいじゃん! チカ、服のデザインとかできるの!?」
食い気味に身を乗り出して尋ねた。けれどそれには、千華は、
「え…あ、え~と……ゴメン、服のデザインとかって、どうすんだっけ? 絵とか描くのかな」
頭を掻きながら訊き返す。それに対して恵莉花も首をかしげながら、
「あ~、どうなんだろ? 私は花とか植物のことなら少しは分かるんだけど、チカのお母さんはどんな風にしてんの?」
改めて問う。なのに千華はますます困ったような表情になって、
「いや、あいつ、家じゃ仕事しないから。服のデザインとか考えてるところ見たことないんだ。あたしも、顔を合せたくないから近付かないし」
大きくトーンダウン。
そして、
「……ダメだな、これは。あたしにゃムリだ」
自分から<復讐案>を取り下げる。
「あ~、復讐はしてやりたいけど、具体的にどうするって考えるとダメなもんだな」
冷静になってしまった。
そこで恵莉花が、
「これは私の知り合いが言ってたんだけどさ、その人も親のことが嫌いで、何とか復讐しようって考えてて、でも、ヤバい方法以外でってなったら、『親が高齢になったら施設に放り込んで後は知らんぷり』ってくらいしか思い付かなかったって言ってた。
だからさ、千華もそれでいいんじゃない?」
と提案した。ここで言う<知り合い>とは、もちろん、アオのことである。
そんな恵莉花に、千華も、
「う~…やっぱそんくらいかなあ……マジでヤバいのとかだとあたしまで捕まるかもだし、あんな奴らのために捕まるとか、それもムカつくよなあ……」
冷静になっていたのだった。
それどころか、<親代わり>でさえあるかもしれない。
恵莉花にだったら何でも話せる。親とは話せないことどころか、同年代相手だとウザがられるような、真面目で面倒臭い話だってできる。
それが千華にとってはどれほどのことだったか……
以前、千華は、『両親に対していつか復讐してやる』というような話をしたことがある。
その時、恵莉花は、頭ごなしに千華の話を否定はしなかった。
こういう時、フィクションではよくある、
『復讐なんてダメだよ! 千華が不幸になる!!』
的な言い方をしなかったのだ。
それどころか、
「そっか……それくらいなんだね……」
と応えただけだった。
しかもその上で、
「じゃあ、具体的にどんな風に復讐するの?」
と突っ込んだ話を振る。
すると千華は、
「え…と……そうだな。あたしがファッションブランド立ち上げてそれで母親から客を奪って潰すとか……?」
少し戸惑いながらもそう応える。そこで恵莉花は、
「すごいじゃん! チカ、服のデザインとかできるの!?」
食い気味に身を乗り出して尋ねた。けれどそれには、千華は、
「え…あ、え~と……ゴメン、服のデザインとかって、どうすんだっけ? 絵とか描くのかな」
頭を掻きながら訊き返す。それに対して恵莉花も首をかしげながら、
「あ~、どうなんだろ? 私は花とか植物のことなら少しは分かるんだけど、チカのお母さんはどんな風にしてんの?」
改めて問う。なのに千華はますます困ったような表情になって、
「いや、あいつ、家じゃ仕事しないから。服のデザインとか考えてるところ見たことないんだ。あたしも、顔を合せたくないから近付かないし」
大きくトーンダウン。
そして、
「……ダメだな、これは。あたしにゃムリだ」
自分から<復讐案>を取り下げる。
「あ~、復讐はしてやりたいけど、具体的にどうするって考えるとダメなもんだな」
冷静になってしまった。
そこで恵莉花が、
「これは私の知り合いが言ってたんだけどさ、その人も親のことが嫌いで、何とか復讐しようって考えてて、でも、ヤバい方法以外でってなったら、『親が高齢になったら施設に放り込んで後は知らんぷり』ってくらいしか思い付かなかったって言ってた。
だからさ、千華もそれでいいんじゃない?」
と提案した。ここで言う<知り合い>とは、もちろん、アオのことである。
そんな恵莉花に、千華も、
「う~…やっぱそんくらいかなあ……マジでヤバいのとかだとあたしまで捕まるかもだし、あんな奴らのために捕まるとか、それもムカつくよなあ……」
冷静になっていたのだった。
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