ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
328 / 571
第二幕

恵莉花の日常 その23

しおりを挟む
千華ちかにとって恵莉花えりかは、<癒し>そのものだった。

中学の頃からすでに周囲から浮いた存在で、悪い意味で『目立っていた』彼女に普通に接してくれたのは恵莉花だけだった。

だから千華にとっては、

『恵莉花がいてくれたから大きく道を踏み外さないでいられた』

というのが間違いなくあると、千華自身が思っていた。

「マジでさ、あたしはエリのおかげでこうしてられるんだよ。エリがいなかったら、今頃、どうなってたか分からない……

親は、児童相談所から目を付けられてるから仕方なく金だけ出して責任果たしてるって体裁取ってるだけだからさ。もう半年以上、顔も見てないんだよ? 父親に至っては、二年くらいかな?見ていないよ。

これで<親>だっていうんだから笑っちゃうよね」

『笑っちゃう』

と言いつつも、口元だけは笑みの形を作りつつも、千華はまったく笑っていたなかった。むしろ<泣き顔>に近かったかもしれない。

千華は続ける。

「まあそれでも、金だけでも出してくれるだけあたしはまだ恵まれてるのかもしれないけどさ。世の中には、親がメシも与えなくて餓死した子供だっているんだろ? まともに食べるものもない食糧難の国とかじゃなくて、コンビニやスーパーで期限切れの食品とか捨てれるくらい余ってるこの日本でだぜ? 

おかしいじゃん……!」

恵莉花は千華の言葉に黙って耳を傾けた。母親のさくらや、ミハエルや、アオがそうしてくれるように。

だから千華も、自分が思ってることを素直に言葉にできる。不満を、疑問を、憤りを、素直に。

「あたしは、自分で選べるんなら絶対にあんな親のところには生まれてこなかった。やり直せるんなら余裕でやり直したいよ……

でもさ、それは無理なんだよね。人生には<リセット>みたいのはないんだってあたしも分かってる。

だからって、死ぬのもバカらしいよ。あんな親に負けて死ぬのとか、スッゲー、ムカつく! だからあたしは死んでやらない。あいつらがミジメったらしく死んでいくところを見届けるまでは死なないよ。

それでさ、仕事もさ、パートとかでいいと思うんだ。自分が生活するのがやっとってレベルの収入なら、親が頼ってきても断れるじゃん? 

ま、あいつらのことだから、兄貴の方を頼るんだろうけどさ。

でも、兄貴らもあいつらのことは嫌ってるんだよね~。あいつらの老後にどんな風に兄貴らに言われるかと思ったら、楽しみで~」

そんな千華に恵莉花も言う。

「私の親は私のことすっごく大切にしてくれてるから千華の気持ちが分かるとは言わないけど、私も千華のことは応援してる。できることだったら力になるよ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

薔薇の耽血(バラのたんけつ)

碧野葉菜
キャラ文芸
ある朝、萌木穏花は薔薇を吐いた——。 不治の奇病、“棘病(いばらびょう)”。 その病の進行を食い止める方法は、吸血族に血を吸い取ってもらうこと。 クラスメイトに淡い恋心を抱きながらも、冷徹な吸血族、黒川美汪の言いなりになる日々。 その病を、完治させる手段とは? (どうして私、こんなことしなきゃ、生きられないの) 狂おしく求める美汪の真意と、棘病と吸血族にまつわる闇の歴史とは…?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

海の見える家で……

梨香
キャラ文芸
祖母の突然の死で十五歳まで暮らした港町へ帰った智章は見知らぬ女子高校生と出会う。祖母の死とその女の子は何か関係があるのか? 祖母の死が切っ掛けになり、智章の特殊能力、実父、義理の父、そして奔放な母との関係などが浮き彫りになっていく。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...