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第二幕
そんなつもりは毛頭ないんだ
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アオは言う。
「私はさ、復讐は認めないけど、だからってフィクションで復讐劇を描くことを批判するとか否定するとか、そんなつもりは毛頭ないんだ。
だって、フィクションって元々、現実では有り得ないこと、現実では許されないことを描くために存在してるんだよ? そのフィクションで復讐とかを描くのを禁止するとか、それはフィクションの存在意義そのものを否定する行為だよ。
あと、実際の事件とかの被害者や遺族が『復讐したい!』って考えてしまうことそのものも否定はしないし批判するつもりもない。
なにしろ、私自身が、家族にもしものことがあったら余裕で『復讐してやる!』って考えるのが分かってるもん。そんな風に考えないわけがないもん。
たださ、自分が復讐を実行するとなると、十中八九、まったく関係ない人を巻き込んじゃうのが分かるんだよ。それが分かるから認めちゃいけないって思うんだ。
私の恨みや憎しみはあくまで私自身の問題であって、私と何の関係もない人達にはそれこそ何の関係も責任もないんだよ。それで私の復讐に巻き込んでいいっていう道理なんてないんだ。だから、復讐したいと思ってしまうことはやめられなくても、実行に移すことは認めちゃいけないんだよ。
エンディミオンのためにもね。
彼は今、さくらや子供達のために復讐を思いとどまってくれてる。彼の境遇は、復讐でもしてなきゃやってられないほどのものだって私も感じる。
その彼が復讐を思いとどまってくれてるのに、私が復讐してちゃダメじゃん。それこそ不公平だよ。
復讐を果たせる人と果たせない人がいるのも、これはきっと不公平だと思う。
こっちの事件の遺族は復讐させてもらえるのに、あっちの事件の遺族はそれが許されないとか、許されない方の遺族は納得できないよ。きっと。どんな事情があってもね。
だとしたら、やっぱ、認められない方向で合わせるのが道理ってもんじゃないかな。
だからさ、あらかじめみんなにも言っとく。もし、私が何かの犯罪とかに巻き込まれて死んだとしても、復讐はしないでほしい。『復讐したい!』って思っちゃうのは仕方なくても、実行はしないでほしいんだ。それをしたら、まず間違いなく<加害者>になっちゃうから。
<絶対に誰も巻き込まない復讐>なんて、できっこないんだよ。私も散々、そういうプロットを考えてきたけど、無理だった。
遺族になって、それでまた無関係な人を巻き込んだ<復讐という犯罪の加害者>になるとか、どんな地獄だよ……
私は、みんなが、そんな風にして傷を広げるなんて耐えられないよ……」
「…ママ……」
拳を握り締めて、肩を震わせるアオを、悠里が、安和が、椿が抱き締めてくれたのだった。
「私はさ、復讐は認めないけど、だからってフィクションで復讐劇を描くことを批判するとか否定するとか、そんなつもりは毛頭ないんだ。
だって、フィクションって元々、現実では有り得ないこと、現実では許されないことを描くために存在してるんだよ? そのフィクションで復讐とかを描くのを禁止するとか、それはフィクションの存在意義そのものを否定する行為だよ。
あと、実際の事件とかの被害者や遺族が『復讐したい!』って考えてしまうことそのものも否定はしないし批判するつもりもない。
なにしろ、私自身が、家族にもしものことがあったら余裕で『復讐してやる!』って考えるのが分かってるもん。そんな風に考えないわけがないもん。
たださ、自分が復讐を実行するとなると、十中八九、まったく関係ない人を巻き込んじゃうのが分かるんだよ。それが分かるから認めちゃいけないって思うんだ。
私の恨みや憎しみはあくまで私自身の問題であって、私と何の関係もない人達にはそれこそ何の関係も責任もないんだよ。それで私の復讐に巻き込んでいいっていう道理なんてないんだ。だから、復讐したいと思ってしまうことはやめられなくても、実行に移すことは認めちゃいけないんだよ。
エンディミオンのためにもね。
彼は今、さくらや子供達のために復讐を思いとどまってくれてる。彼の境遇は、復讐でもしてなきゃやってられないほどのものだって私も感じる。
その彼が復讐を思いとどまってくれてるのに、私が復讐してちゃダメじゃん。それこそ不公平だよ。
復讐を果たせる人と果たせない人がいるのも、これはきっと不公平だと思う。
こっちの事件の遺族は復讐させてもらえるのに、あっちの事件の遺族はそれが許されないとか、許されない方の遺族は納得できないよ。きっと。どんな事情があってもね。
だとしたら、やっぱ、認められない方向で合わせるのが道理ってもんじゃないかな。
だからさ、あらかじめみんなにも言っとく。もし、私が何かの犯罪とかに巻き込まれて死んだとしても、復讐はしないでほしい。『復讐したい!』って思っちゃうのは仕方なくても、実行はしないでほしいんだ。それをしたら、まず間違いなく<加害者>になっちゃうから。
<絶対に誰も巻き込まない復讐>なんて、できっこないんだよ。私も散々、そういうプロットを考えてきたけど、無理だった。
遺族になって、それでまた無関係な人を巻き込んだ<復讐という犯罪の加害者>になるとか、どんな地獄だよ……
私は、みんなが、そんな風にして傷を広げるなんて耐えられないよ……」
「…ママ……」
拳を握り締めて、肩を震わせるアオを、悠里が、安和が、椿が抱き締めてくれたのだった。
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