ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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第二幕

悠里の日常 その7

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悠里ユーリはこれまで、少なくとも本人が覚えている限りでは両親から叩かれた覚えがない。

母親のアオに声を荒げられたことは微かに何度か覚えてるものの、それはすぐに謝ってもらえた。

だけど、父親のことも母親のことも舐めてないし侮ってもいない。

なぜなら、今はもう力では母親には決して負けないもののやっぱり知性や器ではまだまだ敵わないと実感してるし、父親に至っては<力>でも遠く及ばないことは、見ていても分かる。

幼い頃には力比べを挑んだこともあるものの、今でも<力>の使い方を学ぶために軽く<手合わせ>するものの、一度だって勝てたことはないし、今でもまったく勝てるビジョンが見えない。

叩かれなくても怒鳴られなくても、親を舐めなきゃいけない要素はまったく見当たらない。

世の中の、

<子供に舐められていると感じている親>

は、いったい、何をやらかせば子供に舐められるというのか?

悠里にはまったく分からない。

確かに自分の母親も、

料理はダメ。

家事もダメ。

対人関係もダメ。

という欠陥だらけの人間だ。けれど、舐めなきゃいけない理由が見当たらない。

自分を愛してくれていて、自分がこの世に生きていることを認めてくれて、自分が存在することを認めてくれていて、そして自分を敬ってくれる。ペットのように玩具おもちゃのように扱ったりしない。

それで何を舐めなければいけないのか?

たかが自分よりは非力だというだけで。

だから妹である安和アンナ椿つばきのことも馬鹿にする必要もなかった。

単に自分より後に生まれてきたというだけで、自分よりは非力だというだけで、いったい、何を馬鹿にしなければいけないのかが、悠里には分からない。

むしろ、『先に生まれた』という、自分の努力でもなんでもないことで偉そうにする者の方が愚かに見える。

恥ずかしくないのか?と思う。

そして兄の悠里がそうやって自分達を馬鹿にしないから、安和も椿も兄に反発する理由がなかった。生意気な態度を取る必要もなかった。

弟や妹が生意気な態度を取る。自分を年長者として敬わない。

そんな風に思っている者は、弟や妹にそういう態度を取られるようなことをしてきたのではないのか?

自分がやったことが自分に返ってきてるだけではないのか?

つくづくそう思う。

『自分のやったことが自分に返ってきてるだけなのだから、相手の所為にするのはおかしい』

とも。

安和がレビューサイトを運営していて、それでおかしなのに粘着されていることも、安和がレビューサイトを開設しなければそんな目にも遭わなかったのは事実と認めながらも、

『自分が気に入らないからって難癖つけるとか、それ、『相手の所為』にしてるじゃん』

とも思うのだった。

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