ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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第二幕

悠里の日常 その5

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悠里ユーリは、自分の妹の安和アンナ椿つばきに対して理不尽なことをほとんどしない。

ついテンションが上がって咄嗟に無茶なことをしたこともあったものの、少なくとも意図的にはやらない。

怒鳴ったり叩いたり玩具おもちゃを取り上げたり馬鹿にしたりということもしない。

これらはすべて、ミハエルとアオが悠里に対して示してきたことだった。怒鳴ったり叩いたり馬鹿にしたりしなかった。

悠里はただ、その真似をしているだけに過ぎない。

しかも、安和も椿も、悠里と同じように両親に接してきてもらっているから、やっぱりわざと理不尽なことはしてこない。

だから余計に、怒鳴ったり叩いたりせずにいられないことがなかった。

悠里には、大人が子供を叩く必要性が理解できない。

そして、大人が子供を叩くことを推奨しようとする人間のことも理解できない。

それを正当化しようとするのなら、聞き分けのない相手を叩いていいのなら、ボコボコになるまで叩いてやりたい人間が、ネット上には溢れていた。

人を傷付けて平然としていられる人間達を、足腰立たなくなるまで痛めつけてやりたいという思いはあった。

けれど、悠里の両親は、悠里に対してそれをしなかった。それをしないことで、

『人を傷付けて平然としていられる人間達を、足腰立たなくなるまで痛めつけてやりたい』

という思いが正当なものではないことを教えてくれた。

もしそれが正当なものであるなら、悠里には容易く実行できてしまう。まず、ネット上で<蔑称>を使う者は一人残らず二度とネットができなくなるまで痛めつけてやろう。

次に、創作物に非合理な難癖を付けてくる奴も。特に、母親の作品を愚弄している奴らは一人も許さない。

外見上はわずか三~四歳くらいの悠里でも、人間相手ならその程度のことは造作もない。ダンピールであるがゆえに。

もっとも、ただの人間でさえ、<武器>を使えばそれなりのことができてしまう。実際、武器を手にしたことでその力で他人を屈服させようと行動に出た者が起こした事件もある。

素手ではまともに喧嘩もできない者でも、ガソリンをぶちまけて火を点けるだけで何人もの人間の命を容易く奪うことができる。

しかも、それをした者は、自分こそが正しいことをしていると思っている。

だからこそ、ミハエルもアオも、力で相手を屈服させることを悠里には教えてこなかった。

「それをしていいのは、生きるためにする時だけかな。自分や自分の大切な人を生かすためだけと考えればいいかもしれない」

ミハエルは悠里にそう諭した。

ただしそれについても、<拡大解釈>はしないように気を付けなければいけないけれど。

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