ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
282 / 571
第二幕

反発しなければいけない理由が

しおりを挟む
『子供の頃に<我慢>を教えることで我慢のできる人間に育つという考えなど、ただの欺瞞』

ミハエルはそれを知っているから、子供達に対して支配的には接しない。

子供達の前で他人を罵倒したりしない。子供達を怒鳴るようなこともしない。

そんなことをしなくても、子供達は、父親を、母親を、全ての面において自分より勝っていて優れていることを理解している。

今でこそ悠里ユーリ安和アンナも、両親を持ち上げられるほどの力は持っているものの、それでもミハエルには決して敵わない。

ふざけて力比べをすれば、必ず負ける。たとえ勝つことがあっても、それは父親が『負けてくれた』からだと承知している。

そう。力も知識も、何一つ届かない、遥か高みにいる存在。

それが父親だった。

母親であるアオについては、単純な膂力こそ自分達の方が勝っているものの、それでも、知識量や経験に基づいた発想力では足元にも及ばない。

加えて、父親であるミハエルが母親であるアオを愛し敬っていることが見ているだけで分かるから、<偉大な父親が愛し敬う存在>として、一目を置いている。

悠里や安和にとっては、父親も母親も、『敬え!』と言われなくても敬いたい存在なのだ。

そしてそんな両親が、自分達のことを一個の人格として敬ってくれているという事実。

子供達が両親のことを一方的に敬うだけでなく、両親が子供達のことを、<独立した一個の人格>として敬ってくれているのだ。

だから、自分達がこの世に生まれてきた意味を疑う必要もなかった。こんな素晴らしい両親に愛されている自分の価値を疑う必要もまるでなかった。

かように、とにかく<器>が違いすぎる。

それでいて、父親も母親も、決して驕り昂ぶってはいない。遥か高みから一方的に自分達を見下ろしているわけではない。いつだってきちんと目線を合わしてくれる。

しかも母親のアオなどは、実は欠陥だらけの<ダメ人間>であるという事実が、決して完璧な人間ではないという事実が、子供達を安心させてくれる。

どうしてこんな両親に対して反発しなければいけないのだろう? 反発しなければいけない理由がそもそもない。

そんな両親の言うことであれば、まずは聞きたいと思うのは、むしろ自然なことではないだろうか?

ゆえに、蒼井家の子供達には、<反抗期>というものがない。

自己主張はするものの、それについても両親は丁寧に耳を傾けてくれるから、結果としては自分の主張が聞き入れられることがない場合も少なくないものの、そのこと自体が、

『丁寧に耳を傾け、その上で丁寧に検討した結果』

なのだから、納得できない時もあっても、少なくとも理解するのは難しくなかった。

そのおかげで、<反抗>する必要もなかったのである。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

薔薇の耽血(バラのたんけつ)

碧野葉菜
キャラ文芸
ある朝、萌木穏花は薔薇を吐いた——。 不治の奇病、“棘病(いばらびょう)”。 その病の進行を食い止める方法は、吸血族に血を吸い取ってもらうこと。 クラスメイトに淡い恋心を抱きながらも、冷徹な吸血族、黒川美汪の言いなりになる日々。 その病を、完治させる手段とは? (どうして私、こんなことしなきゃ、生きられないの) 狂おしく求める美汪の真意と、棘病と吸血族にまつわる闇の歴史とは…?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

これもなにかの縁ですし 〜あやかし縁結びカフェとほっこり焼き物めぐり

枢 呂紅
キャラ文芸
★第5回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました!応援いただきありがとうございます★ 大学一年生の春。夢の一人暮らしを始めた鈴だが、毎日謎の不幸が続いていた。 悪運を祓うべく通称:縁結び神社にお参りした鈴は、そこで不思議なイケメンに衝撃の一言を放たれてしまう。 「だって君。悪い縁(えにし)に取り憑かれているもの」 彼に連れて行かれたのは、妖怪だけが集うノスタルジックなカフェ、縁結びカフェ。 そこで鈴は、妖狐と陰陽師を先祖に持つという不思議なイケメン店長・狐月により、自分と縁を結んだ『貧乏神』と対峙するけども……? 人とあやかしの世が別れた時代に、ひとと妖怪、そして店主の趣味のほっこり焼き物が交錯する。 これは、偶然に出会い結ばれたひととあやかしを繋ぐ、優しくあたたかな『縁結び』の物語。

海の見える家で……

梨香
キャラ文芸
祖母の突然の死で十五歳まで暮らした港町へ帰った智章は見知らぬ女子高校生と出会う。祖母の死とその女の子は何か関係があるのか? 祖母の死が切っ掛けになり、智章の特殊能力、実父、義理の父、そして奔放な母との関係などが浮き彫りになっていく。

処理中です...