ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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第二幕

反発しなければいけない理由が

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『子供の頃に<我慢>を教えることで我慢のできる人間に育つという考えなど、ただの欺瞞』

ミハエルはそれを知っているから、子供達に対して支配的には接しない。

子供達の前で他人を罵倒したりしない。子供達を怒鳴るようなこともしない。

そんなことをしなくても、子供達は、父親を、母親を、全ての面において自分より勝っていて優れていることを理解している。

今でこそ悠里ユーリ安和アンナも、両親を持ち上げられるほどの力は持っているものの、それでもミハエルには決して敵わない。

ふざけて力比べをすれば、必ず負ける。たとえ勝つことがあっても、それは父親が『負けてくれた』からだと承知している。

そう。力も知識も、何一つ届かない、遥か高みにいる存在。

それが父親だった。

母親であるアオについては、単純な膂力こそ自分達の方が勝っているものの、それでも、知識量や経験に基づいた発想力では足元にも及ばない。

加えて、父親であるミハエルが母親であるアオを愛し敬っていることが見ているだけで分かるから、<偉大な父親が愛し敬う存在>として、一目を置いている。

悠里や安和にとっては、父親も母親も、『敬え!』と言われなくても敬いたい存在なのだ。

そしてそんな両親が、自分達のことを一個の人格として敬ってくれているという事実。

子供達が両親のことを一方的に敬うだけでなく、両親が子供達のことを、<独立した一個の人格>として敬ってくれているのだ。

だから、自分達がこの世に生まれてきた意味を疑う必要もなかった。こんな素晴らしい両親に愛されている自分の価値を疑う必要もまるでなかった。

かように、とにかく<器>が違いすぎる。

それでいて、父親も母親も、決して驕り昂ぶってはいない。遥か高みから一方的に自分達を見下ろしているわけではない。いつだってきちんと目線を合わしてくれる。

しかも母親のアオなどは、実は欠陥だらけの<ダメ人間>であるという事実が、決して完璧な人間ではないという事実が、子供達を安心させてくれる。

どうしてこんな両親に対して反発しなければいけないのだろう? 反発しなければいけない理由がそもそもない。

そんな両親の言うことであれば、まずは聞きたいと思うのは、むしろ自然なことではないだろうか?

ゆえに、蒼井家の子供達には、<反抗期>というものがない。

自己主張はするものの、それについても両親は丁寧に耳を傾けてくれるから、結果としては自分の主張が聞き入れられることがない場合も少なくないものの、そのこと自体が、

『丁寧に耳を傾け、その上で丁寧に検討した結果』

なのだから、納得できない時もあっても、少なくとも理解するのは難しくなかった。

そのおかげで、<反抗>する必要もなかったのである。

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