上 下
272 / 571

ミハエルの日常 その16

しおりを挟む
この世は本当に思うに任せないことばかりだ。

他人の振る舞いを見ていて、

『どうしてこの程度のことも分からないんだ!?』

と憤ることも多いだろう。

けれど、そこで敢えて冷静になって、自分自身を客観視する必要があるのではないだろうか?

自分は、他人から、

『どうしてこの程度のことも分からないんだ!?』

と言われたことが、本当に、一度もないのか?

一度でも言われたことがあるのなら、自分も、他人の目からは、

<この程度のことも分からない奴>

に見えているということのはずである。

<この程度のことも分からない奴>が、

<この程度のことも分からない奴>を、

『どうしてこの程度のことも分からないんだ!?』と見下す。

客観的に見て、実に滑稽だとは思わないか?

非生産的だとは思わないか?

ミハエルはそれを非生産的だと思うからこそ、他人を見下すことはしないでおこうと思っている。

『どうしてこんなことも分からないの?』

と思ってしまうことはあっても、そう思ってしまうのは自分が<未熟>だからと考え、未熟な自分に甘えて感情的になることは避けようと心掛けている。

世の中には、

『言いたいことも言えないのはおかしい!!』

と考える向きがあるらしいが、それを言うのなら、自分に対しても他人が言いたいことを言えるのが当然なのではないか? 

自分がネット上に発信したことに対して、他人が思ったこと感じたことを言うのは、当然ということにならないか?

自分だけが一方的に言いたいことを言うための盾として、

『言いたいことも言えないのはおかしい!!』

と口にするのは、卑劣な行為ではないのか?

他人が、『言いたいことも言えないのはおかしい!!』からと発信したことが、自分にとっては嫌なことだったら途端に被害者ぶるのはおかしくないか?

自分が言いたいことを言えるなら、他人も言いたいことを言えなくてはおかしいはずだが?

たとえそれが自分にとっては辛いことであっても嫌なことであっても、

『言いたいことも言えないのはおかしい!!』

と言うのなら、他人が言いたいことを言っても当然のはずだが?

にも拘らず、

『嫌なことは言われたくない!!』

と考えるのなら、

『言いたいことも言えないのはおかしい!!』

という理屈は成立しないはずだが?

ミハエルはそれを理解しているからこそ、この時点で自分が思ったことをそのまま口にしていいのかどうかを考えるし、言葉も選ぶ。

『これは言わなくてはいけない』

と思ったことについても、<言い方>は考える。

それを、子供達にも伝えてきたし、自ら手本を示すようにしてきた。

<躾>などしなくても、これで十分に伝わる。

親が自ら手本を示し、子供に真似をしてもらうようにすれば、それで事足りるはずではないだろうか?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

古からの侵略者

久保 倫
キャラ文芸
 永倉 有希は漫画家志望の18歳。高校卒業後、反対する両親とケンカしながら漫画を描く日々だった。  そんな状況を見かねた福岡市在住で漫画家の叔母に招きに応じて福岡に来るも、貝塚駅でひったくりにあってしまう。  バッグを奪って逃げるひったくり犯を蹴り倒し、バッグを奪い返してくれたのは、イケメンの空手家、壬生 朗だった。  イケメンとの出会いに、ときめく永倉だが、ここから、思いもよらぬ戦いに巻き込まれることを知る由もなかった。

九龍懐古

カロン
キャラ文芸
香港に巣食う東洋の魔窟、九龍城砦。 犯罪が蔓延る無法地帯でちょっとダークな日常をのんびり暮らす何でも屋の少年と、周りを取りまく住人たち。 今日の依頼は猫探し…のはずだった。 散乱するドラッグと転がる死体を見つけるまでは。 香港ほのぼの日常系グルメ犯罪バトルアクションです、お暇なときにごゆるりとどうぞ_(:3」∠)_ みんなで九龍城砦で暮らそう…!! ※キネノベ7二次通りましたとてつもなく狼狽えています ※HJ3一次も通りました圧倒的感謝 ※ドリコムメディア一次もあざます ※字下げ・3点リーダーなどのルール全然守ってません!ごめんなさいいい! 表紙画像を十藍氏からいただいたものにかえたら、名前に‘様’がついていて少し恥ずかしいよテヘペロ

祇園あやかし茶屋〜九尾の狐が相談のります〜

菰野るり
キャラ文芸
京都の最強縁切り〝安井金比羅宮〟には今日も悩める人々が訪れる。 切るも縁、繋ぐも縁。 祇園甲部歌舞練場と神社の間の小さな通りにある茶屋〝烏滸〟では、女子高生のバイト塔子(本当はオーナー)と九尾の狐(引き篭もりニート)の吹雪が、縁切りを躊躇い〝安井金比羅神社〟に辿り着けない悩める人間たちの相談にのってます。 ※前日譚は〜京都あやかし花嫁語り〜になりますが、テイストがかなり異なります。純粋にこちらを楽しみたい場合、前日譚を読む必要はありません‼︎ こちらだけ読んでも楽しんでいただけるように書いていくつもりです。吹雪と塔子と悩める人々、それから多彩なあやかしが織りなす現代ファンタジーをお楽しみいただければ幸いです。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

処理中です...