ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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ミハエルの日常 その11

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他人から攻撃されるのは嫌だが、自分は他人を攻撃したい。

そういう考えの人間のなんと多いことか。

ネットの<匿名性>は、それに火を点けてしまったのかもしれない。

匿名の陰に隠れて一方的に他人を攻撃できると思い込んでしまい、調子に乗ってしまった。

実際には完全に匿名などではなかった。少なくともそれなりの知識や準備がなければ公権力によって造作もなく特定されてしまうからこそ、ネットを利用した脅迫や誹謗中傷が摘発されるのに、何故か自分だけは大丈夫と、見逃されると、許されると、上手くいくと考える。

典型的な犯罪者の心理。

そんな考え方の人間と生涯を共にしたいと思えるだろうか?

そういう人間は、何かちょっとパートナーの気に入らないところがあれば、自分を一方的な被害者として脚色した上でネット上に上げてこき下ろしたり貶したりしそうだと思わないか?

しかもそれを、

<正当な行為>

だと考えて。

ミハエルもアオも、そんなことはしない。

お互いに相手を<完璧な存在>だと、

<一緒にいて何一つ困ったことは起こらない存在>

だと考えて一緒になったわけじゃないから。何か困ったことがあったとしても共に力を合わせて乗り越えていこうと思える相手だから一緒になったのだから。

ゆえに、<困ったこと>が生じても、それが拗れてお互いに不信感を募らせたりもしない。

結婚するだけなら、相手の上辺だけを、一面だけを、自分に都合のいい部分だけを見て決めてしまえばいいかもしれない。

けれど、健康でいられれば、事故や災害などで命を落としたりしなければ、人生はまずまず長い。それを、どんな本性を隠し持っているかも分からない相手と共に過ごし続けることができるだろうか?

もちろん、相手の裏も表も知ったとしても、お互いに<完璧な存在>ではない以上、すれ違いや衝突が生じることはある。むしろ、何一つすれ違いや衝突が起こることがないなんていう<ご都合主義>な展開は、人生においてはまずない。

そういう不都合が生じた時にこそ、相手を敬い尊重し、どうやってそれを乗り越えていくかを共に考えることができることができて初めて、長く平穏を保つことができるのだろう。

ミハエルとアオにさえ、そういうことはあった。

アオが妊娠中、精神的に不安定になり、ついミハエルに当ってしまったこともある。

逆にミハエルが、常に自分の方が上位の存在であり、アオを一方的に、

『守ってあげている』

的な態度が見え隠れしてアオを落ち込ませてしまったりしたこともあった。

この二人も、そういうことを乗り越えて、今がある。

決して、何一つ苦労することなく順風満帆でここまできたわけじゃない。

ただ、問題が生じた時にはお互いに誠実に対処することを心掛け、それが大きく拗れることがないようにしてきただけである。

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