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洸の日常 その10

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『相手のことが本気で好きなら年齢なんか関係ない!』

などと軽々しく口にして、自分に責任も持てないうちから責任も取れないことをする者がいる。

あきら椿つばきも、そういう人間は信用も信頼もしない。

本当に責任を取れるなら勝手にしててくれていいと思うものの、自分にそれを押し付ける者は受け入れない。

実際、高校の時に、そう言って洸に体の関係を迫った者がいた。

洸に想いを寄せる同級生。……ではなく、その母親だった。

彼女を、仮に<A子>とする。

A子は、ごく普通の、パート勤めもしている主婦だった。夫はいるものの関係は冷め切っていて、体裁だけで夫婦間家を続けているだけのいわゆる<仮面夫婦>だった。

なのでそれまでにも、何度か<不倫>をしてきた経験もある。ちなみにこれはA子の夫も同じだった。そうやってお互いに家庭の外で発散することで、仮面夫婦を続けられていた。

もちろん、お互いに薄々は相手が何をしているか察しながらも、体裁のために、一見しただけなら<幸せな家庭>を維持している状態だった。

が、A子は、娘の学校のPTAの活動で学校に訪れた時、

<運命の出会い>

をしてしまった。洸を見掛けてしまったのである。

A子はその瞬間に長らく忘れていた感覚、<恋>に落ち、洸に付きまとうようになった。

最初は何だかんだと理由を付けて学校を訪れては遠くから見詰めるだけだったのが、<同級生の母親>という立場を活かして、

『娘と仲良くしてくれているお礼』

と称して、偶然を装い下校途中に待ち伏せて手作りのお菓子などを渡すようになったのだ。

これには、<洸のファン>達も、最初は、

『まあ、母親としての社交辞令かな』

と考えて様子を見ていたものの、あまりにも何度も何度もな上に、洸を見る目が完全に<メスの目>だったことで察してしまい、

「ちょっと! あんたの母親なんでしょ!? 何とかしなさいよ!」

何人もでA子の娘に迫ったりという事態にもなった。

精神的に幼かった当時の洸はその辺りを十分に承知しておらず、何度も手作りお菓子などをくれるA子についても、

『優しいおばさん』

程度にしか認識していなかった。

一方、家に帰った洸がそういうことがあったとさくらに話し、その中で聞いたA子の振る舞いに違和感を覚えたさくらが、

「少し、気になることが……」

と、アオとミハエルに相談。ミハエルが出向いて、A子のアプローチを把握した。

「ちょっと好ましくないことになっているかな……」

ミハエルが言う通り、<魅了チャーム>を応用した認識誘導も効果を発揮しないほどに、A子の想いは暴走し始めていたのである。

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