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洸の日常 その5
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ダンピールであるエンディミオンは、吸血鬼であるミハエルを狩るために現れた。
しかしミハエル自身が非常に強力な吸血鬼であったことで力が拮抗。ミハエルは争う気はなかったものの、アオに危害が及ぶとなれば対処しないわけにもいかず、双方が激突すれば共に無事では済まない、それどころか周囲に被害が及ぶ可能性があったことから、共に戦うことに慎重になった。
だから元々は単なる綺麗事で衝突が回避されたわけじゃない。
とは言え、ミハエルとしてはやはり戦いを望んでおらず、さくらと共に暮らすことでエンディミオンが吸血鬼狩りを休止するように誘導したのも事実だった。
だから、ミハエルとしても今の月城家ができたことについて多大なる責任があり、ゆえに平穏な暮らしが維持されるように最大限の協力は惜しまないという背景があった。
また、ダンピールとして非常に血生臭い過去を持つエンディミオンに対処させると、女子生徒に命の危険すらあったために、ミハエルが受け持ったというのもある。
ただそれでも、引き下がらない女子生徒も中にはいて、そういう場合はやむなく、
「ごめんね。ここから先に君を行かせるわけにはいかないんだ。おとなしく帰って欲しい」
と、耳元で囁きかけることもあった。
吸血鬼ならほとんどが使える、
<魅了>
の力の応用だった。それによって意識を誘導し、『自分の家に帰る』と思考させるのである。
ミハエル自身はこういうやり方は好まないものの、極力、乱暴なことはしたくないので、こういう形になる。
その気になれば吸血することで自在に操れてしまうけれど、それも避けたかった。
力を持っているからといって安易にそれに頼ることで無数の悲劇が生まれたことを知っているがゆえに。
人間と共存することを選択した吸血鬼達は、自分達が平穏に生きるためにこそ吸血も控えているし、吸血鬼としての力を無闇に使うことも避けていた。
平穏に生きるためにどうしても必要なもの以外は。
それを破って人間を相手に力で支配しようとすればそれこそバンパイアハンターの目に止まり、平穏な生活を奪われる。
今の世でそれを望む吸血鬼はまずいない。
だから洸もそれに倣う。
「いつもありがとう。ミハエル」
自分達の代わりに女子生徒達に対処してくれたミハエルに、気配を察した洸が家から出てきてミハエルに礼を言う。ちなみにさくらはまだ仕事中で帰宅していない。
そんな洸にミハエルは首を横に振り、
「ううん。これは、君を迎えることを決めた僕達の当然の務めだよ」
月明かりを浴びながら、恐ろしいほどに美しく微笑んだのだった。
しかしミハエル自身が非常に強力な吸血鬼であったことで力が拮抗。ミハエルは争う気はなかったものの、アオに危害が及ぶとなれば対処しないわけにもいかず、双方が激突すれば共に無事では済まない、それどころか周囲に被害が及ぶ可能性があったことから、共に戦うことに慎重になった。
だから元々は単なる綺麗事で衝突が回避されたわけじゃない。
とは言え、ミハエルとしてはやはり戦いを望んでおらず、さくらと共に暮らすことでエンディミオンが吸血鬼狩りを休止するように誘導したのも事実だった。
だから、ミハエルとしても今の月城家ができたことについて多大なる責任があり、ゆえに平穏な暮らしが維持されるように最大限の協力は惜しまないという背景があった。
また、ダンピールとして非常に血生臭い過去を持つエンディミオンに対処させると、女子生徒に命の危険すらあったために、ミハエルが受け持ったというのもある。
ただそれでも、引き下がらない女子生徒も中にはいて、そういう場合はやむなく、
「ごめんね。ここから先に君を行かせるわけにはいかないんだ。おとなしく帰って欲しい」
と、耳元で囁きかけることもあった。
吸血鬼ならほとんどが使える、
<魅了>
の力の応用だった。それによって意識を誘導し、『自分の家に帰る』と思考させるのである。
ミハエル自身はこういうやり方は好まないものの、極力、乱暴なことはしたくないので、こういう形になる。
その気になれば吸血することで自在に操れてしまうけれど、それも避けたかった。
力を持っているからといって安易にそれに頼ることで無数の悲劇が生まれたことを知っているがゆえに。
人間と共存することを選択した吸血鬼達は、自分達が平穏に生きるためにこそ吸血も控えているし、吸血鬼としての力を無闇に使うことも避けていた。
平穏に生きるためにどうしても必要なもの以外は。
それを破って人間を相手に力で支配しようとすればそれこそバンパイアハンターの目に止まり、平穏な生活を奪われる。
今の世でそれを望む吸血鬼はまずいない。
だから洸もそれに倣う。
「いつもありがとう。ミハエル」
自分達の代わりに女子生徒達に対処してくれたミハエルに、気配を察した洸が家から出てきてミハエルに礼を言う。ちなみにさくらはまだ仕事中で帰宅していない。
そんな洸にミハエルは首を横に振り、
「ううん。これは、君を迎えることを決めた僕達の当然の務めだよ」
月明かりを浴びながら、恐ろしいほどに美しく微笑んだのだった。
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