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たとえ失敗して傷付いても打ちのめされても

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世の中の、<結婚トラブル><夫婦トラブル>と言われるものを客観的に冷静に、どちらにも加担せず第三者視点で見ると、

『どうして結婚する前に分からなかったの?』

という事例が多いとは思わないだろうか?

DV、モラハラ、浪費癖、浮気癖、怠け癖、逃避癖、虚言癖、一方的な依存。

どれも付き合ってる時点でよく見ればその兆候を察知できそうなものばかり。

なのに、結婚してからそれを問題にするのは何故なのか?

別の美点にばかり目を向けて、『見たくないもの』には目を瞑ってきたからではないだろうか?

とは言え、

『恋は盲目』

『人を好きになる気持ちは理屈じゃない』

という喩えもあるとおり人間は、見たくないものには目を瞑り、聞きたくないものには耳を塞いでしまいがちな生き物であることもまた事実。ただそれを責めるだけでは解決しないからこそ、同じような問題がいくつも起こるのではないだろうか?

恵莉花えりか秋生あきおも、最初からそういう失敗をしないで済むように、さくらやアオやミハエルが心掛けてきただけだった。

他人の外見や見せ掛けだけの優しさに惑わされずに済むように、それだけで相手の価値を判断せずに済むように。

加えて、本性も明らかじゃない他人に依存せずに済むように、頼らずに済むように、縋らずに済むように。

『結婚しなくてもいい』

『子供も作らなくていい』

そういう世の中だというのなら、それこそ元の家族で力を合わせて生きていけばいいだけだ。だったら、元の家族が、一番、居心地のいい場所になればいい。

その上で、もし、外見とか見せ掛けだけの優しさじゃない、いつ失われるかも分からない経済力じゃない、その人が本当に持っている、

<命の力>

に惹かれ、一緒に生きていきたいと思うのならそうすればいいという家庭を築いてきた。

DV、モラハラ、浪費癖、浮気癖、怠け癖、逃避癖、虚言癖、一方的な依存。

そんなものが見え隠れする相手をわざわざ選んで結婚とかする必要がないように。

そうすれば、

『どうして結婚する前に分からなかったの?』

などと言われるような失敗をせずに済む可能性が高くなる。

もちろん、

『絶対に失敗しない』

とは言わない。あくまで『失敗をせずに済む可能性が高くなる』だけに過ぎない。

けれど、さくらもアオもミハエルも、そして今はエンディミオンも、たとえ失敗して傷付いても打ちのめされても、帰ってくれば傷を癒し再び立ち上がる力を得られるようにしてくれる。

それが月城つきしろ家であり、蒼井家だった。

そんな家庭に生まれ育った秋生あきおもまた、今はまだまだ未熟ではあるけれど、さくらやアオやミハエルのやり方を見倣ってきたことで同じようなことができるようになりつつあった。

だから麗美阿れみあ達も、秋生の在り方を学び取れれば、もしかすると……

ということは十分に有り得る。

学び取れれば、だけれど。

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