239 / 571
秋生の日常 その10
しおりを挟む
こうして、一見すれば、
『ハーレムとか羨ましい! なんだこのリア充共!!』
と思われるような関係でも、裏を返せばこのようにそれぞれ決して軽いとはいえない事情が隠されていたりする。
いわゆる<ラブコメ物>であればそこまで踏み込んだ描写はされないだろう。ラブコメ物を読みたい読者は、そんな重い部分を見たいとは思っていないだろうから。
しかし人間関係というものは、非常に複雑で難解で、時に深い闇もはらんでいるものだというのはまぎれもない事実。
『誰が選ばれるか』
とか、
『誰が滑り台に行くか』
とか、そんなものはあくまで無責任な第三者による<野次馬根性>でしかない。
それでも、秋生の下に集った三人は、この関係によって救われていた。
<ラブコメ物>であれば誰か一人が選ばれたり、はたまた全員と関係を続ける、
<ハーレムエンド>
といった形で何らかの結末を迎えるのだろうが、現実はそんな風にぶつ切りで終わったりはしない。一応の決着を見たとしても、当事者達の人生は当然のように続く。
『脚本の都合でキャラクターが動かされる』
ことを嫌いつつ、
『読み手の都合でキャラクターの人生を決める』
のは当然だと考える。
そこに生きているキャラクター達の想いや葛藤や懊悩や悔恨といったものは『見たくない』と切り捨てようとする。それぞれのキャラクター達が<結末>の後に行う人生の選択を、
『蛇足だ!』
と吐き捨てる。
一体、何様だというのだろうか。
秋生は、彼女達の想いを負担にも感じつつ、けれど、自分と同じく血の通った人間として、見捨てようとは思わなかった。
彼女達のしていることが<ごっこ遊び>でしかないことも承知している。
だから、<ラブコメ物>のように明確な結末が出ることを望んでいるわけでないことも承知していた。
ただひたすらだらだらと今の関係が続くのを望んでいることも。
多くの人は何らかの結果を出すことを良しと考えるかもしれない。けれどそんなものは<ラブコメ物の読者>と同じく、無責任な第三者の欲求に過ぎない。
いずれ解消されるのは確かだとしても、他人の都合で決められることではないはずだ。
そしてそれは、彼女達が今の関係に依存せずに済むようになれば自然と解消される。
そこまでの成り行きは、秋生にも彼女達にも様々な経験をもたらすだろう。
それでいい。
取り合えず秋生には、
『他者の想いを受け止める』
という経験を、そして彼女達には、
『自分の想いだけでなく存在そのものを受け止めてもらえた』
という経験を。
いずれそれらが役に立つこともあるかもしれないし、ないかもしれない。
けれど、『経験を積む』というのは、人間にとってはとても大切なもののはずであることは間違いないと思われる。
『ハーレムとか羨ましい! なんだこのリア充共!!』
と思われるような関係でも、裏を返せばこのようにそれぞれ決して軽いとはいえない事情が隠されていたりする。
いわゆる<ラブコメ物>であればそこまで踏み込んだ描写はされないだろう。ラブコメ物を読みたい読者は、そんな重い部分を見たいとは思っていないだろうから。
しかし人間関係というものは、非常に複雑で難解で、時に深い闇もはらんでいるものだというのはまぎれもない事実。
『誰が選ばれるか』
とか、
『誰が滑り台に行くか』
とか、そんなものはあくまで無責任な第三者による<野次馬根性>でしかない。
それでも、秋生の下に集った三人は、この関係によって救われていた。
<ラブコメ物>であれば誰か一人が選ばれたり、はたまた全員と関係を続ける、
<ハーレムエンド>
といった形で何らかの結末を迎えるのだろうが、現実はそんな風にぶつ切りで終わったりはしない。一応の決着を見たとしても、当事者達の人生は当然のように続く。
『脚本の都合でキャラクターが動かされる』
ことを嫌いつつ、
『読み手の都合でキャラクターの人生を決める』
のは当然だと考える。
そこに生きているキャラクター達の想いや葛藤や懊悩や悔恨といったものは『見たくない』と切り捨てようとする。それぞれのキャラクター達が<結末>の後に行う人生の選択を、
『蛇足だ!』
と吐き捨てる。
一体、何様だというのだろうか。
秋生は、彼女達の想いを負担にも感じつつ、けれど、自分と同じく血の通った人間として、見捨てようとは思わなかった。
彼女達のしていることが<ごっこ遊び>でしかないことも承知している。
だから、<ラブコメ物>のように明確な結末が出ることを望んでいるわけでないことも承知していた。
ただひたすらだらだらと今の関係が続くのを望んでいることも。
多くの人は何らかの結果を出すことを良しと考えるかもしれない。けれどそんなものは<ラブコメ物の読者>と同じく、無責任な第三者の欲求に過ぎない。
いずれ解消されるのは確かだとしても、他人の都合で決められることではないはずだ。
そしてそれは、彼女達が今の関係に依存せずに済むようになれば自然と解消される。
そこまでの成り行きは、秋生にも彼女達にも様々な経験をもたらすだろう。
それでいい。
取り合えず秋生には、
『他者の想いを受け止める』
という経験を、そして彼女達には、
『自分の想いだけでなく存在そのものを受け止めてもらえた』
という経験を。
いずれそれらが役に立つこともあるかもしれないし、ないかもしれない。
けれど、『経験を積む』というのは、人間にとってはとても大切なもののはずであることは間違いないと思われる。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
妖刀戦鬼〜オーガ・リベンジ・ストーリー〜
YA-かん
キャラ文芸
突然怪物に襲われた原川光。怪物は鬼!?しかも取り憑かれた…。持ち前の正義感から鬼退治組織に参加した彼だがわがまま放題の『天邪鬼』と共に鬼から世界を守れるのか。
(カクヨムにも投稿してあります。そちらにはネタバレ注意ですが設定資料があります。)
幼馴染はとても病院嫌い!
ならくま。くん
キャラ文芸
三人は生まれた時からずっと一緒。
虹葉琉衣(にじは るい)はとても臆病で見た目が女の子っぽい整形外科医。口調も女の子っぽいので2人に女の子扱いされる。病院がマジで嫌い。ただ仕事モードに入るとてきぱき働く。病弱で持病を持っていてでもその薬がすごく苦手
氷川蓮(ひかわ れん)は琉衣の主治医。とてもイケメンで優しい小児科医。けっこうSなので幼馴染の反応を楽しみにしている。ただあまりにも琉衣がごねるととても怒る。
佐久間彩斗(さくま あやと)は小児科の看護師をしている優しい仕事ができるイケメン。琉衣のことを子供扱いする。二人と幼馴染。
病院の院長が蓮でこの病院には整形外科と小児科しかない
家は病院とつながっている。
神様のひとさじ
いんげん
キャラ文芸
ラブコメから始まる、各要素もりもり恋愛中心の小説。
人類は、一度絶滅した。
神様に再び作られた、アダムとイブ。
地下のコロニーでAIに作られた人間、ヘビ。
イブは、ヘビを運命の相手だと勘違いして、猛アタックを開始。しかし、本当のアダムと出会って。
「え? あれ? 間違ってかも」
その気になりかけていた、ヘビはモヤモヤする。
イブこと、ラブも、唯一の食事を提供してくれる、将来が想像出来るアダムと、心動かされたヘビとの間で揺れる。
ある日、コロニーで行方不明者が出て、彼を探すコロニーのメンバーだったが、AIが彼の死した映像を映し出す。彼は、誰かに殺されたのか、獣に襲われたのか、遺体が消え真相は分からず。
しかし、彼は帰ってきた。そして、コロニーに獣を引き入れ、襲撃を開始した。
変わり果てた彼の姿に、一同は困惑し、対立が始まる。
やがてコロニーの一部の人間は、外の楽園へと旅立つアダムとラブに着いていく事に。
その楽園では、神の作り出した、新たな世を創造していくシステムが根付いていた。
偽物の人間達の排除が始まる。
陽香は三人の兄と幸せに暮らしています
志月さら
キャラ文芸
血の繋がらない兄妹×おもらし×ちょっとご飯ものなホームドラマ
藤本陽香(ふじもと はるか)は高校生になったばかりの女の子。
三人の兄と一緒に暮らしている。
一番上の兄、泉(いずみ)は温厚な性格で料理上手。いつも優しい。
二番目の兄、昴(すばる)は寡黙で生真面目だけど実は一番妹に甘い。
三番目の兄、明(あきら)とは同い年で一番の仲良し。
三人兄弟と、とあるコンプレックスを抱えた妹の、少しだけ歪だけれど心温まる家族のお話。
※この作品はカクヨムにも掲載しています。
ぱんだ喫茶店へようこそ ~パンダ店長はいつもモフモフです~
和賀ミヲナ
キャラ文芸
プロポーズ間近と思っていた彼氏から衝撃的な言葉を告げられた女性が傷心のなか歩く道にふと現れた不思議な喫茶店。
その名は「ぱんだ喫茶店」
パンダ店長と呼ばれた人は何とも不思議な容姿をしているし、アルバイト店員も美少年?美少女なの?性別不明な子もいれば、
ヤクザ顔負けのコワモテな店員もいるし…
なんだかバラエティーに富んだ不思議なお店。
その不思議なお店の店員たちと織り成す少しだけ愉快で不思議な物語です。
ギリギリセーフ(?)な配信活動~アーカイブが残らなかったらごめんなさい~
ありきた
キャラ文芸
Vtuberとして活動中の一角ユニコは、同期にして最愛の恋人である闇神ミミと同棲生活を送っている。
日々楽しく配信活動を行う中、たまにエッチな発言が飛び出てしまうことも……。
カクヨム、ノベルアップ+、小説家になろうにも投稿しています。
異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。
彩世幻夜
恋愛
エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。
壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。
もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。
これはそんな平穏(……?)な日常の物語。
2021/02/27 完結
異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?
雪詠
ファンタジー
大学受験に失敗し引きこもりになった男、石動健一は異世界に迷い込んでしまった。
特殊な力も無く、言葉も分からない彼は、怪物や未知の病に見舞われ何度も死にかけるが、そんな中吸血鬼の王を名乗る者と出会い、とある取引を持ちかけられる。
その内容は、安全と力を与えられる代わりに彼に絶対服従することだった!
吸血鬼の王、王の娘、宿敵、獣人のメイド、様々な者たちと関わる彼は、夢と希望に満ち溢れた異世界ライフを手にすることが出来るのだろうか?
※こちらの作品は他サイト様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる