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秋生の日常 その2
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月城秋生は、決して目立つタイプではなかった。
すごく高身長というわけでもないし、学力も、『上の中』から『上の下』辺りを行ったり来たりという感じで、飛び抜けて優秀というわけでもなく、ぐいぐいと前に出ることもない。
かと言って気持ち悪がられたりという形で悪目立ちするでもなく、
<中庸>
という言葉がおそらくもっともぴったりと来る生徒だった。
……はずだった。
他でもない彼自身がそれを心掛けていた。変に目立ったりするのは好きではなかったから。
クラスでも、いるのかいないのかよく分からない感じで、余計な人間関係は作らず、諍いも起こさず、ただただ平穏無事に三年間を過ごしたかっただけだった。
中学まではそれで過ごせた。
なのに、高校に入ってまず吉祥麗美阿と同じクラスになって、しかも部活も同じ<読書部>で、図書委員でもあった麗美阿が、他の図書委員らから本の整理などを押し付けられているのを見てついつい手伝ったりして一緒の時間を過ごしているうちに親しくなって、それでもまあそこまでは順調だった。
麗美阿に、汐見美登菜、市川美織という友人さえいなければ。
ある時、いつものように二人で本の整理をしていると、麗美阿を迎えに来た美登菜と美織が、
「なになに!? すっげ~いい雰囲気じゃん! 二人、付き合ってるの!?」
「麗美阿も隅に置けないね」
などと言って冷やかしてきて、麗美阿が、
「そ…そういうのじゃ、ないから……」
などと顔を真っ赤にしながら否定したことで、美登菜が、
「ふ~ん…?」
明らかに何かを悟った様子で麗美阿と秋生を見、その上で、
「彼、麗美阿と同じクラスの月城くんだよね。実は私も前からちょっと気になってたんだ。
麗美阿が付き合ってないって言うんだったら、私にもチャンスはあるよね?」
と言い出し、さらには美織まで、
「あら~、ずるい、美登菜。私だって月城くんのことは気になってたんだよ? それ言ったら私にもチャンスが欲しいな」
加わって、最終的に、
「じゃあいっそ、私達で月城くんのハーレムを作っちゃおうよ!」
美登菜の提案で話がまとまってしまったのだった。
当の秋生の意向は抜きで。
もっとも、<ハーレム>と言っても、それは、いわゆるラブコメ物の漫画が好きだった美登菜の悪ふざけによる、
<ごっこ遊び>
に過ぎないものだった。本気でハーレムを形成するつもりなどなかった。
なのに、秋生の方も、
「ちょ、ちょっと待ってよ……!」
と困惑しながらも、
「ま~、フリだけだから、フリだけ♡
私達のことちゃんと知ってもらうためにさ、チャンスが欲しいってことで、一つ、ね♡」
そう言う美登菜の申し出を断りきれず、流されるままに、
<青春ラブコメハーレムごっこ>
に付き合うことになったのだった。
すごく高身長というわけでもないし、学力も、『上の中』から『上の下』辺りを行ったり来たりという感じで、飛び抜けて優秀というわけでもなく、ぐいぐいと前に出ることもない。
かと言って気持ち悪がられたりという形で悪目立ちするでもなく、
<中庸>
という言葉がおそらくもっともぴったりと来る生徒だった。
……はずだった。
他でもない彼自身がそれを心掛けていた。変に目立ったりするのは好きではなかったから。
クラスでも、いるのかいないのかよく分からない感じで、余計な人間関係は作らず、諍いも起こさず、ただただ平穏無事に三年間を過ごしたかっただけだった。
中学まではそれで過ごせた。
なのに、高校に入ってまず吉祥麗美阿と同じクラスになって、しかも部活も同じ<読書部>で、図書委員でもあった麗美阿が、他の図書委員らから本の整理などを押し付けられているのを見てついつい手伝ったりして一緒の時間を過ごしているうちに親しくなって、それでもまあそこまでは順調だった。
麗美阿に、汐見美登菜、市川美織という友人さえいなければ。
ある時、いつものように二人で本の整理をしていると、麗美阿を迎えに来た美登菜と美織が、
「なになに!? すっげ~いい雰囲気じゃん! 二人、付き合ってるの!?」
「麗美阿も隅に置けないね」
などと言って冷やかしてきて、麗美阿が、
「そ…そういうのじゃ、ないから……」
などと顔を真っ赤にしながら否定したことで、美登菜が、
「ふ~ん…?」
明らかに何かを悟った様子で麗美阿と秋生を見、その上で、
「彼、麗美阿と同じクラスの月城くんだよね。実は私も前からちょっと気になってたんだ。
麗美阿が付き合ってないって言うんだったら、私にもチャンスはあるよね?」
と言い出し、さらには美織まで、
「あら~、ずるい、美登菜。私だって月城くんのことは気になってたんだよ? それ言ったら私にもチャンスが欲しいな」
加わって、最終的に、
「じゃあいっそ、私達で月城くんのハーレムを作っちゃおうよ!」
美登菜の提案で話がまとまってしまったのだった。
当の秋生の意向は抜きで。
もっとも、<ハーレム>と言っても、それは、いわゆるラブコメ物の漫画が好きだった美登菜の悪ふざけによる、
<ごっこ遊び>
に過ぎないものだった。本気でハーレムを形成するつもりなどなかった。
なのに、秋生の方も、
「ちょ、ちょっと待ってよ……!」
と困惑しながらも、
「ま~、フリだけだから、フリだけ♡
私達のことちゃんと知ってもらうためにさ、チャンスが欲しいってことで、一つ、ね♡」
そう言う美登菜の申し出を断りきれず、流されるままに、
<青春ラブコメハーレムごっこ>
に付き合うことになったのだった。
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