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恵莉花の日常 その10
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などというあれこれを考えながらも、基本的にはただ毎日楽しく過ごしていただけである。
なぜそうしていたのかを詳細に解説するとこうなるというだけで。
さくらのすごいところは、これをいちいち考えなくてもできるということだろう。
だから恵莉花も素直にエンディミオンとの遊びを楽しめた。
「今日こそは、今日こそは勝ってみせる~!」
そんな風に言いながら、ぐいぐいと布団を引っ張る。
これを始めた頃は恵莉花もまだ小学校の中学年で、体もエンディミオンよりも小さかった。だから見た目にも勝てなくて当然だった。
でも、ダンピールであるエンディミオンと違い普通の人間である恵莉花は当然のように成長し、すぐに父親であるエンディミオンよりも大きくなった。だけどやっぱり敵わない。
敵わないながらも、毎日そうやってるうちにただ引っ張るだけじゃなく、フェイントを掛けたりするようになっていった。
「おっ! おっ! このっ!」
それでもやっぱり勝てないものの、ただ、一瞬、少しだけ自分の方に布団を引き寄せられるようにもなる。
このことが確かな手応えになって、恵莉花は、それまでまったく敵わなかったのは自分のやり方が適切じゃないからだと悟った。
それにより、単純に手で引っ張るだけではなく、足も使うようになった。
そうして足も使うことでフェイントのバリエーションも増えた。
『ほう……?』
娘が自ら創意工夫する様子に、父親も感心する。
当然のことながら、彼自身はまったく本気ではなかった。本気など出さなくても人間である娘に負けるはずなどなかった。
なのに、娘は、決して勝てるはずのない勝負を挑み、かつ、勝てないまでも、僅かに布団を引き寄せるまでになってみせた。それは自分が本気を出していないからではあるものの、同時に、ただの人間でしかない娘が自ら編み出した<技>だった。
手で布団を引っ張って揺さぶりをかけつつ、足を伸ばして布団に引っ掛けて、奪おうとする。
最初はロクに効果を発揮しなかったそれも、足を引っ掛ける位置によっては上手く力が入ることに気付いたらしく、手で布団を掴んでいるだけでは抗えなくなってきた。
するとエンディミオンは積極的に娘の足による攻撃を手で払いのけるようになっていった。
それが恵莉花には嬉しかったようだ。
『パパが慌ててる!?』
実際にはまったく慌ててなどいなかったものの、それまでは単に布団を掴んでいただけだった父親に、それをさせてみせたことが彼女にとっては明らかに成果が上がってる実感になったからだった。
なぜそうしていたのかを詳細に解説するとこうなるというだけで。
さくらのすごいところは、これをいちいち考えなくてもできるということだろう。
だから恵莉花も素直にエンディミオンとの遊びを楽しめた。
「今日こそは、今日こそは勝ってみせる~!」
そんな風に言いながら、ぐいぐいと布団を引っ張る。
これを始めた頃は恵莉花もまだ小学校の中学年で、体もエンディミオンよりも小さかった。だから見た目にも勝てなくて当然だった。
でも、ダンピールであるエンディミオンと違い普通の人間である恵莉花は当然のように成長し、すぐに父親であるエンディミオンよりも大きくなった。だけどやっぱり敵わない。
敵わないながらも、毎日そうやってるうちにただ引っ張るだけじゃなく、フェイントを掛けたりするようになっていった。
「おっ! おっ! このっ!」
それでもやっぱり勝てないものの、ただ、一瞬、少しだけ自分の方に布団を引き寄せられるようにもなる。
このことが確かな手応えになって、恵莉花は、それまでまったく敵わなかったのは自分のやり方が適切じゃないからだと悟った。
それにより、単純に手で引っ張るだけではなく、足も使うようになった。
そうして足も使うことでフェイントのバリエーションも増えた。
『ほう……?』
娘が自ら創意工夫する様子に、父親も感心する。
当然のことながら、彼自身はまったく本気ではなかった。本気など出さなくても人間である娘に負けるはずなどなかった。
なのに、娘は、決して勝てるはずのない勝負を挑み、かつ、勝てないまでも、僅かに布団を引き寄せるまでになってみせた。それは自分が本気を出していないからではあるものの、同時に、ただの人間でしかない娘が自ら編み出した<技>だった。
手で布団を引っ張って揺さぶりをかけつつ、足を伸ばして布団に引っ掛けて、奪おうとする。
最初はロクに効果を発揮しなかったそれも、足を引っ掛ける位置によっては上手く力が入ることに気付いたらしく、手で布団を掴んでいるだけでは抗えなくなってきた。
するとエンディミオンは積極的に娘の足による攻撃を手で払いのけるようになっていった。
それが恵莉花には嬉しかったようだ。
『パパが慌ててる!?』
実際にはまったく慌ててなどいなかったものの、それまでは単に布団を掴んでいただけだった父親に、それをさせてみせたことが彼女にとっては明らかに成果が上がってる実感になったからだった。
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