ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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恵莉花の日常 その9

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物を大事にするのは確かに尊い。基本的には望ましいことだろう。

でもそれはあくまで、人間を尊重した上での話。人間よりも物が尊重されるというのは本末転倒のはずだ。

まあそれも、時と場合によるという面もありつつも。

けれど、恵莉花えりかが寝ていたのはそもそも寝相の悪い子供を寝かせておくための布団なのだからお行儀よく綺麗なままで使うことを、母親であるさくら自身が最初から想定していない。

だから玩具おもちゃに使われても気にしなかった。

それよりも夫と娘が楽しそうにしている様子を見ているのが嬉しかった。

子供は、幼いうちは未熟だから、自分の目先の楽しみや感情を優先してしまって親を困らせることもあるだろう。

けれどそれは、単に未熟だからだ。経験が少ないから自分のしたことがどういう結果をもたらすかを知らないから、理解してないから、親を困らせるような行いもしてしまう。

そして自分の行いがどういう結果をもたらすかを理解するには、何度も何度も何度も親を困らせて失敗して、それで少しずつ理解していくわけだ。

一度や二度ですべてを理解できるなら、どうしていい歳をして、

『他人を罵るのは、悪態を吐くのは、人としての礼儀・礼節に反する』

という当たり前を一回で理解してやめないのか? どうしても何度でも他人を罵り、嘲り、貶し、貶め、蔑むのか?

それは人間が、一度ではそういうことを理解できない生き物だからだと証拠以外の何物でもないのでは?

だったら、子供が自身の行いがもたらす結果を理解するにも時間を要するのは当然ではないのか? 子供がそれを理解するまで、子供自身がそれを悟るまで、辛抱強く見守るのが親の役目ではないのか?

それをせず、一度や二度で、手っ取り早く結果を出そうとして子供を罵倒し貶め蔑むのは、単に親の側に辛抱が足りないというだけのことではないのか?

手っ取り早く安易に自身の望む結果を得ようとして相手を罵倒し貶め蔑む親の姿を見て子供はそこから何を学ぶのか? 他人を自分の思うままに操ろうとして、罵倒し貶め蔑むのが当然だと学び取ってしまうのではないのか?

それが、自身のイジメや諸々の<ハラスメント行為>を正当なものとして考える根拠になってしまうのではないのか?

加えて、子供が大人の思うどおりにできないという事実さえ認められない親の姿を真似ることで、<相手の事情>というものを考慮するということができない人間を生み出すのではないのか? そういう人間に自分は嫌な思いをさせられているのではないのか?

さくらもアオもミハエルも、そして今はエンディミオンも、自分がそういう人間を作るのを避けることを心掛けてきただけだった。

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