227 / 571
恵莉花の日常 その9
しおりを挟む
物を大事にするのは確かに尊い。基本的には望ましいことだろう。
でもそれはあくまで、人間を尊重した上での話。人間よりも物が尊重されるというのは本末転倒のはずだ。
まあそれも、時と場合によるという面もありつつも。
けれど、恵莉花が寝ていたのはそもそも寝相の悪い子供を寝かせておくための布団なのだからお行儀よく綺麗なままで使うことを、母親であるさくら自身が最初から想定していない。
だから玩具に使われても気にしなかった。
それよりも夫と娘が楽しそうにしている様子を見ているのが嬉しかった。
子供は、幼いうちは未熟だから、自分の目先の楽しみや感情を優先してしまって親を困らせることもあるだろう。
けれどそれは、単に未熟だからだ。経験が少ないから自分のしたことがどういう結果をもたらすかを知らないから、理解してないから、親を困らせるような行いもしてしまう。
そして自分の行いがどういう結果をもたらすかを理解するには、何度も何度も何度も親を困らせて失敗して、それで少しずつ理解していくわけだ。
一度や二度ですべてを理解できるなら、どうしていい歳をして、
『他人を罵るのは、悪態を吐くのは、人としての礼儀・礼節に反する』
という当たり前を一回で理解してやめないのか? どうしても何度でも他人を罵り、嘲り、貶し、貶め、蔑むのか?
それは人間が、一度ではそういうことを理解できない生き物だからだと証拠以外の何物でもないのでは?
だったら、子供が自身の行いがもたらす結果を理解するにも時間を要するのは当然ではないのか? 子供がそれを理解するまで、子供自身がそれを悟るまで、辛抱強く見守るのが親の役目ではないのか?
それをせず、一度や二度で、手っ取り早く結果を出そうとして子供を罵倒し貶め蔑むのは、単に親の側に辛抱が足りないというだけのことではないのか?
手っ取り早く安易に自身の望む結果を得ようとして相手を罵倒し貶め蔑む親の姿を見て子供はそこから何を学ぶのか? 他人を自分の思うままに操ろうとして、罵倒し貶め蔑むのが当然だと学び取ってしまうのではないのか?
それが、自身のイジメや諸々の<ハラスメント行為>を正当なものとして考える根拠になってしまうのではないのか?
加えて、子供が大人の思うどおりにできないという事実さえ認められない親の姿を真似ることで、<相手の事情>というものを考慮するということができない人間を生み出すのではないのか? そういう人間に自分は嫌な思いをさせられているのではないのか?
さくらもアオもミハエルも、そして今はエンディミオンも、自分がそういう人間を作るのを避けることを心掛けてきただけだった。
でもそれはあくまで、人間を尊重した上での話。人間よりも物が尊重されるというのは本末転倒のはずだ。
まあそれも、時と場合によるという面もありつつも。
けれど、恵莉花が寝ていたのはそもそも寝相の悪い子供を寝かせておくための布団なのだからお行儀よく綺麗なままで使うことを、母親であるさくら自身が最初から想定していない。
だから玩具に使われても気にしなかった。
それよりも夫と娘が楽しそうにしている様子を見ているのが嬉しかった。
子供は、幼いうちは未熟だから、自分の目先の楽しみや感情を優先してしまって親を困らせることもあるだろう。
けれどそれは、単に未熟だからだ。経験が少ないから自分のしたことがどういう結果をもたらすかを知らないから、理解してないから、親を困らせるような行いもしてしまう。
そして自分の行いがどういう結果をもたらすかを理解するには、何度も何度も何度も親を困らせて失敗して、それで少しずつ理解していくわけだ。
一度や二度ですべてを理解できるなら、どうしていい歳をして、
『他人を罵るのは、悪態を吐くのは、人としての礼儀・礼節に反する』
という当たり前を一回で理解してやめないのか? どうしても何度でも他人を罵り、嘲り、貶し、貶め、蔑むのか?
それは人間が、一度ではそういうことを理解できない生き物だからだと証拠以外の何物でもないのでは?
だったら、子供が自身の行いがもたらす結果を理解するにも時間を要するのは当然ではないのか? 子供がそれを理解するまで、子供自身がそれを悟るまで、辛抱強く見守るのが親の役目ではないのか?
それをせず、一度や二度で、手っ取り早く結果を出そうとして子供を罵倒し貶め蔑むのは、単に親の側に辛抱が足りないというだけのことではないのか?
手っ取り早く安易に自身の望む結果を得ようとして相手を罵倒し貶め蔑む親の姿を見て子供はそこから何を学ぶのか? 他人を自分の思うままに操ろうとして、罵倒し貶め蔑むのが当然だと学び取ってしまうのではないのか?
それが、自身のイジメや諸々の<ハラスメント行為>を正当なものとして考える根拠になってしまうのではないのか?
加えて、子供が大人の思うどおりにできないという事実さえ認められない親の姿を真似ることで、<相手の事情>というものを考慮するということができない人間を生み出すのではないのか? そういう人間に自分は嫌な思いをさせられているのではないのか?
さくらもアオもミハエルも、そして今はエンディミオンも、自分がそういう人間を作るのを避けることを心掛けてきただけだった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
夜に駆ける乙女は今日も明日も明後日も仕事です
ぺきぺき
キャラ文芸
東京のとある会社でOLとして働く常盤卯の(ときわ・うの)は仕事も早くて有能で、おまけに美人なできる女である。しかし、定時と共に退社し、会社の飲み会にも決して参加しない。そのプライベートは謎に包まれている。
相思相愛の恋人と同棲中?門限に厳しい実家住まい?実は古くから日本を支えてきた名家のお嬢様?
同僚たちが毎日のように噂をするが、その実は…。
彼氏なし28歳独身で二匹の猫を飼い、親友とルームシェアをしながら、夜は不思議の術を駆使して人々を襲う怪異と戦う国家公務員であった。
ーーーー
章をかき上げれたら追加していくつもりですが、とりあえず第一章大東京で爆走編をお届けします。
全6話。
第一章終了後、一度完結表記にします。
第二章の内容は決まっていますが、まだ書いていないのでいつになることやら…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました
下菊みこと
恋愛
突然通り魔に殺されたと思ったら望んでもないのに記憶を持ったまま転生してしまう主人公。転生したは良いが見目が怪しいと実親に捨てられて、代わりにその怪しい見た目から宗教の教徒を名乗る人たちに拾ってもらう。
そこには自分と同い年で、神の子と崇められる兄がいた。
自分ははっきりと神の子なんかじゃないと拒否したので助かったが、兄は大人たちの期待に応えようと頑張っている。
そんな兄に気を遣っていたら、いつのまにやらかなり溺愛、執着されていたお話。
小説家になろう様でも投稿しています。
勝手ながら、タイトルとあらすじなんか違うなと思ってちょっと変えました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
黒帯ちゃんは、幼稚園の先生
未来教育花恋堂
キャラ文芸
保育者はエプロン姿が常識です。でも、もし、エプロンを着けない保育者がいたら・・・。この物語の発想は、背が小さく、卵のようなとてもかわいい女子保育学生に出会い、しかも、黒帯の有段者とのこと。有段者になるには、資質や能力に加えて努力が必要です。現代の幼児教育における諸問題解決に一石を投じられる機会になるように、物語を作成していきます。この物語はフィクションです。登場する人物、団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる