ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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恵莉花の日常 その7

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カテゴライズに拘るのは、結局、そうやってひとまとめにすることで楽をしたいとか、分かったような気になりたいというだけのことなのではないだろうか。

けれどあまりにも大雑把なカテゴライズはむしろ正確な理解にとってはマイナスな面が多いと思われる。

実際、人間を二種類程度にカテゴライズされてあれこれ言われても自分には当てはまらないと感じることが多くないだろうか?

例えば、

『男は女をセックスの道具としか見ていない』

とか、

『女は男をATM としか見ていない』

とか言われても、

『自分には当てはまらない!』

と感じる人は多いはずである。

確かに、女性をセックスの道具としか見ていない男性も中にはいるだろうし、男性をATM としか見ていない女性も中にはいるだろう。

しかしそれはすべてではないはずなのだ。

実際、あきら秋生あきおもそんな目で女性を見ないし、恵莉花えりかだってそんな目で男性を見ない。

ただ、そういう目で他人を見る人間もいることを知っているだけだ。

だから本人を見る。その人自身を見る。男とか女とか陽キャとか陰キャとか、そんなカテゴライズだけで物事を見ていては大切なこと重要なことを見落とすことを知っているだけだ。

それを教わってきた。

もちろん、秋生にも指摘されたとおり、ついつい大雑把な括りで他人を見てしまうこともある。彼女だって決して完璧じゃない。

でも、ついそんな見方をしてしまったとしても、彼女はそのこと自体を反省もできる。口では反発したりしつつも、本気で自分が正しいとは思わない。

なのに、どうしてそれができない人がいるのだろう……?



なんてことがあって滅入った気分を抱えた状態で家に帰ると、玄関前で紫外線遮断ジャケットのフードを頭から被って手袋をして花の手入れをしていたエンディミオンの姿に気付いた。

「ただいま」

「……おかえり……」

相変わらず愛想のない、見た目には子供にも見える父親だけれど、そうして挨拶を交わしただけでも恵莉花は自分がホッとするのが分かった。

しかも、

「…何かあったか……?」

後ろを通り過ぎようとした、自分より遥かに大きな体の<娘>に、エンディミオンは問い掛けた。

「あ…うん、大丈夫……」

不意の問い掛けに意表を突かれながらも、恵莉花の表情が柔らかくなる。父親がちゃんと自分のことを見てくれているのを改めて実感できて、嬉しかったのだろう。

自分をこの世に送り出した張本人である父親が、しっかりと気に掛けてくれている。

しかも子供が反抗的な態度を見せ始めてから慌てて気を遣ってるフリをするのではなく、物心がつく以前から、決して器用でも愛想よくもないが常に見てくれているのはちゃんと伝わっていたのだった。

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