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論文とかどうしてんの?
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『自分にとって不愉快なことやものがない世界なんて、たぶん有り得ないよ』
洸の言ったそれに、皆が頷く。
恵莉花や安和も、こういう場では、自分にとって好ましくないものについて厳しいことも言うものの、だからと言って、
『そういうの、全部片っ端から排除しろ!』
とは言わない。そんなことが実現できるはずがないことを知っているから。そしてそんなことをしようとすれば、今度は自分が<排除される側>になることもあるのが分かるから。
事実、自分の気に入らないもの、不愉快なものを排除しようと大きな声を上げる者は、結局、異なる立場の人間からは『不愉快なもの』として排除されようとしているではないか。
すべての人間が、同じ価値観、同じ美意識、同じ感性になることは、決してない。すべての人間が一つの考え方のみに沿って動くなど、それは<社会>とは言わない。<社会>とはそもそも、異なる価値観を持つ者同士が折り合いをつけながら共に生きていくものを言うのだから。
恵莉花達はちゃんとそれをわきまえている。自分にとって不愉快なものがこの世にあることを理解している。たとえそういうものがこの世にあってそれでストレスを感じても、こうやって皆で集まってそのことを話せばそれだけですっきりしてしまう。
だから強引に排除してしまう必要もない。
それと同時に、<不愉快なもの>と折り合いをつけるためには、無理に抑え付けるのではなく、きちんと口に出してしっかりと認識する必要もあるのだろう。
「ところで、『長文レスとか読む気にならない』とか言ってるのいるけど、あれって、『自分は論文とか読みません』と言ってるのと同じだよね」
安和のスマホを覗き込みながら恵莉花が言った。
「あ、それ思う。長文は読む気にならないんなら、論文とかどうしてんの?って気がして仕方ない」
安和が乗ってくる。
さらに恵莉花が、
「で、こう言うと、『しょうもないレスバと学術論文を一緒にすんなwww』とか言ってくるのも確実にいるけど、丁寧に説明しようと論拠も含めて書いたら長文にならない方がおかしいじゃん。相手が丁寧に根拠とかも合わせて説明しようとしてんのに、『読む気にならない』とか、非礼の極みでしょ。そういうのが返ってくることも覚悟しないで他人に噛み付くのとか、これが<幼稚>じゃないならなにが幼稚なの?って話だしさ」
と。そこに秋生も口を開く。
「それは僕も思うよ。
学術論文は必要だから読むんだろ? じゃあ、相手が返してきた長文レスだって、相手が自身の考えを説明するのに必要だから書いたものなんだから、必要なものなんだよ。
なのに、『短くまとめられないのが気に入らない』とかいう理由で読まないのなら、『他人を嘲るようなのは気に入らない』って言われても文句は言えないよね」
洸の言ったそれに、皆が頷く。
恵莉花や安和も、こういう場では、自分にとって好ましくないものについて厳しいことも言うものの、だからと言って、
『そういうの、全部片っ端から排除しろ!』
とは言わない。そんなことが実現できるはずがないことを知っているから。そしてそんなことをしようとすれば、今度は自分が<排除される側>になることもあるのが分かるから。
事実、自分の気に入らないもの、不愉快なものを排除しようと大きな声を上げる者は、結局、異なる立場の人間からは『不愉快なもの』として排除されようとしているではないか。
すべての人間が、同じ価値観、同じ美意識、同じ感性になることは、決してない。すべての人間が一つの考え方のみに沿って動くなど、それは<社会>とは言わない。<社会>とはそもそも、異なる価値観を持つ者同士が折り合いをつけながら共に生きていくものを言うのだから。
恵莉花達はちゃんとそれをわきまえている。自分にとって不愉快なものがこの世にあることを理解している。たとえそういうものがこの世にあってそれでストレスを感じても、こうやって皆で集まってそのことを話せばそれだけですっきりしてしまう。
だから強引に排除してしまう必要もない。
それと同時に、<不愉快なもの>と折り合いをつけるためには、無理に抑え付けるのではなく、きちんと口に出してしっかりと認識する必要もあるのだろう。
「ところで、『長文レスとか読む気にならない』とか言ってるのいるけど、あれって、『自分は論文とか読みません』と言ってるのと同じだよね」
安和のスマホを覗き込みながら恵莉花が言った。
「あ、それ思う。長文は読む気にならないんなら、論文とかどうしてんの?って気がして仕方ない」
安和が乗ってくる。
さらに恵莉花が、
「で、こう言うと、『しょうもないレスバと学術論文を一緒にすんなwww』とか言ってくるのも確実にいるけど、丁寧に説明しようと論拠も含めて書いたら長文にならない方がおかしいじゃん。相手が丁寧に根拠とかも合わせて説明しようとしてんのに、『読む気にならない』とか、非礼の極みでしょ。そういうのが返ってくることも覚悟しないで他人に噛み付くのとか、これが<幼稚>じゃないならなにが幼稚なの?って話だしさ」
と。そこに秋生も口を開く。
「それは僕も思うよ。
学術論文は必要だから読むんだろ? じゃあ、相手が返してきた長文レスだって、相手が自身の考えを説明するのに必要だから書いたものなんだから、必要なものなんだよ。
なのに、『短くまとめられないのが気に入らない』とかいう理由で読まないのなら、『他人を嘲るようなのは気に入らない』って言われても文句は言えないよね」
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