ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
209 / 571

論文とかどうしてんの?

しおりを挟む
『自分にとって不愉快なことやものがない世界なんて、たぶん有り得ないよ』

あきらの言ったそれに、皆が頷く。

恵莉花えりか安和アンナも、こういう場では、自分にとって好ましくないものについて厳しいことも言うものの、だからと言って、

『そういうの、全部片っ端から排除しろ!』

とは言わない。そんなことが実現できるはずがないことを知っているから。そしてそんなことをしようとすれば、今度は自分が<排除される側>になることもあるのが分かるから。

事実、自分の気に入らないもの、不愉快なものを排除しようと大きな声を上げる者は、結局、異なる立場の人間からは『不愉快なもの』として排除されようとしているではないか。

すべての人間が、同じ価値観、同じ美意識、同じ感性になることは、決してない。すべての人間が一つの考え方のみに沿って動くなど、それは<社会>とは言わない。<社会>とはそもそも、異なる価値観を持つ者同士が折り合いをつけながら共に生きていくものを言うのだから。

恵莉花達はちゃんとそれをわきまえている。自分にとって不愉快なものがこの世にあることを理解している。たとえそういうものがこの世にあってそれでストレスを感じても、こうやって皆で集まってそのことを話せばそれだけですっきりしてしまう。

だから強引に排除してしまう必要もない。

それと同時に、<不愉快なもの>と折り合いをつけるためには、無理に抑え付けるのではなく、きちんと口に出してしっかりと認識する必要もあるのだろう。



「ところで、『長文レスとか読む気にならない』とか言ってるのいるけど、あれって、『自分は論文とか読みません』と言ってるのと同じだよね」

安和のスマホを覗き込みながら恵莉花えりかが言った。

「あ、それ思う。長文は読む気にならないんなら、論文とかどうしてんの?って気がして仕方ない」

安和が乗ってくる。

さらに恵莉花が、

「で、こう言うと、『しょうもないレスバと学術論文を一緒にすんなwww』とか言ってくるのも確実にいるけど、丁寧に説明しようと論拠も含めて書いたら長文にならない方がおかしいじゃん。相手が丁寧に根拠とかも合わせて説明しようとしてんのに、『読む気にならない』とか、非礼の極みでしょ。そういうのが返ってくることも覚悟しないで他人に噛み付くのとか、これが<幼稚>じゃないならなにが幼稚なの?って話だしさ」

と。そこに秋生あきおも口を開く。

「それは僕も思うよ。

学術論文は必要だから読むんだろ? じゃあ、相手が返してきた長文レスだって、相手が自身の考えを説明するのに必要だから書いたものなんだから、必要なものなんだよ。

なのに、『短くまとめられないのが気に入らない』とかいう理由で読まないのなら、『他人を嘲るようなのは気に入らない』って言われても文句は言えないよね」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

「お節介鬼神とタヌキ娘のほっこり喫茶店~お疲れ心にお茶を一杯~」

GOM
キャラ文芸
  ここは四国のど真ん中、お大師様の力に守られた地。  そこに住まう、お節介焼きなあやかし達と人々の物語。  GOMがお送りします地元ファンタジー物語。  アルファポリス初登場です。 イラスト:鷲羽さん  

このウサギ、可愛い顔して実はXX

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
キャラ文芸
 モフッとした可愛いうさぎの本性が、必ずしも可愛いとは限らない。  ショッキングな結末が……ここに!!

あやかしの花嫁になることが、私の運命だったようです

珠宮さくら
キャラ文芸
あやかしの花嫁になるのは、双子の妹の陽芽子だと本人も周りも思っていた。 だが、実際に選ばれることになったのが、姉の日菜子の方になるとは本人も思っていなかった。 全10話。

フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~

空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。 どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。 そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。 ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。 スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。 ※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!

処理中です...