ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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思考実験

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アオの作品は、全て、アオ自身の中にあるものでできている。

外の出来事やネット上のやり取りを引用してキャラクターにやり取りをさせているのも、あくまで<話のネタ>としての取っ掛かりでしかない。

いわばアオは、自らの<思考実験>そのものを作品にしている種類の作家だった。一般受けしないのはそれが原因だろうと自分でも分かっている。

けれど、そうやって延々と思考実験を繰り返したことで得たものが実際の生活でも活かされているのも事実だった。

子供達の質問に怯むことなく苛立つことなく丁寧に応えられるのも、これのおかげである。

自分が組み立てたロジックに対して、自分で<穴>を探すのだ。

そうして見付けた穴を補足するためのロジックを再構築する。

それを、自身が覚えている限りでは小学校高学年の頃から延々と続けてきた。

このおかげで、アンチが自分の作品をどう叩くか、子供達がどんな質問を自分にぶつけてくるのか、ほとんどすべてすでに経験済みだったりもする。

つまり、

『自分の作品に対する批判』

も、

『親である自分に対して子供達が訊いてくる質問』

も、アオ自身が自らにぶつけてきたことなのだ。

そして、ネットなどで炎上している<話題>は、アオにとっては絶好の<ネタ>だった。

自らの思考実験の。

攻撃する側、される側、双方を自ら演じ、それぞれの問題点を探るという。

だからアオは、特定の<誰か>を攻撃する必要がない。攻撃する対象は、常に自分の中にある。

同時にそれは、『攻撃される側』がどう感じるかを自ら実感することにも役立てられる。

しかも、『攻撃する側』の感覚も味わいつつ。

他人を攻撃するのは、確かに楽しい。

スカッとする時もある。

けれど同時に、相手に反撃された時の感覚も分かってしまう。

自分が攻撃することで、結局、自分が嫌な思いをする原因を自分が作るという事実を実感する。

実に不毛だった。何も得るものがなかった。他人を攻撃することで一時的にスカッとしても、すぐさまそれが原因で自分が嫌な思いをするので、何の意味もなかった。

結婚に関する是非について誰かを罵ったところで同じだ。

だとしたら、子供達の疑問や不満は自分が聞き届ければ、それについて丁寧にも応えられるし、そうすれば子供達が他の誰かに口汚く反論されて嫌な思いもしないで済む。

これも、

『自分の勝手で子供達をこの世に送り出した人間として背負うべきことだ』

と思っていた。

自分が<人間>として生まれたことも、<女>として生まれたことも、別に自分が選んだことじゃない。単にそう生まれついてしまっただけだ。だからそれに対して責任を負わされるのは嫌だ。

けれど、子供達をこの世に送り出したのは、他の誰でもない、百パーセント自分の責任。

だったら自分は、人間である前に、女である前に、<子供達の親>なのだ。

自分がそれを選んだのだから。

だとすれば、子供達の問い掛けには真摯に応えなきゃいけない責任が自分にはある。

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