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そんなこともあったなあ

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『他人を罵って貶して攻撃するような人間の周りにはさ、そういうタイプが集まってくるんだよ』

アオのその言葉には、恵莉花えりか秋生あきおも、そして椿つばきも、思い当たる節があった。

つるむのも似たようなタイプだし、そしてやたらと衝突するのも同じようなタイプだという実感がある。

学校での人間関係を見ているだけでも。

椿にとっての<山下羽楼やましたはろう>や<藤木一紅ふじきぴんく>の例が特に分かりやすいだろうか。

そして、恵莉花や秋生も、それと似たような事例は散々見てきた。

結局、似たような人間同士が強く関わりあうのだと。

しかし、それに対しても、恵莉花えりかは敢えて問う。

「だけど、椿は、冠井かむらいとかいうのに付きまとわれたりしたんだよね? それについてはどうなの? これは『類は友を呼ぶ』っていうのとは違うよね?」

確かに、『類は友を呼ぶ』のなら、椿が冠井迅かむらいじんに絡まれたのはおかしくないだろうか? と感じるのは当然の疑問だろう。

けれど、そんな<重箱の隅をつつくような質問>にも、アオは焦ることも感情的になることもない。なにしろ同じ疑問は、アオ自身も抱いたことがある。そしてその答えはすでに得ている。

だから答える。

「もちろん、まったく違うタイプの者同士が関わり合いになることもあるよ。そういう人に絡まれたりってこともある。

けれどそういうのは、相手が異様な執着でも見せない限りは、クラスが違ったり学校が違ったりすると縁が切れてしまうことが多いんじゃないかな?

椿にとっての冠井迅かむらいじんって子のような事例も、六年になってクラスが違ったりしたら、さらに中学に進級してもっとあの男の子の人間関係が広がれば、

『そんなこともあったなあ』

っていう<ただの記憶>になって、頭の片隅に追いやられてしまう程度のものだったんじゃないかな? <初恋>とか言われるものってだいたいそんな感じで終わるよね?

あの男の子の場合も、結局はそういう形で終わっちゃう話だったんだと思う。

<暴力>さえなかったらだけど……

あの男の子はさ、ただの<甘酸っぱい思い出>で終わるはずだったそれを、暴力で台無しにしちゃったんだと思う……」

「……」

アオの言葉に、恵莉花も言葉を失う。

世間的には、冠井迅かむらいじんが振るった暴力程度のことは、

『たかがそのくらいで!』

と言う者も多いだろう。けれど、<そのくらいの暴力>が取り返しのつかない事態に至った事例というのもあるはずだ。だからこそ、暴力を振るうのは、たとえ相手が怪我をしていなくても<暴行罪>が成立する。

それでも、冠井迅かむらいじんの事例の場合は、自身の暴力を、

<好ましからざるもの>

として反省できれば、その時点で終わっていたはずだった。

冠井かむらい家はそれをせずに、自分達の行いを正当化しようとしたことで話が大きくなってしまっただけでしかないということだと思われる。

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