174 / 571
過去を、歴史を
しおりを挟む
はっきり言って、四十五口径程度の拳銃では、吸血鬼やダンピールを怯ませることさえできない。
セルゲイやミハエルも言っていたけれど、複数の重機関銃による集中砲火を浴びせて再生が間に合わないようにでもしない限り、吸血鬼やダンピールはダメージを受けない。
しかも、元人間である眷属や半分人間であるダンピールであれば再生能力にも限界はあるものの、純血の吸血鬼は、たとえ肉片になろうとも時間さえあれば再生できる。
以前に触れたように、第二次大戦末期の原爆使用は、吸血鬼への効果の実証という知られざる目的があったが、至近距離で数万度の熱線を十数秒に亘って照射することでようやく倒せるのが、<純血の吸血鬼>というものだった。
もっとも、それさえ、消滅してからまだ数十年しか経っていないので、実は本当に消滅させられたのか、現在も経過を確認中というのが本当のところだったりする。
場合によっては、さらに時間が経過したところで復活する可能性もまだ否定はされていないのだ。実際、完全に塵となった吸血鬼が一万と一日後に復活したという伝承さえある。
そもそも、現時点で解明されている範囲では吸血鬼もあくまで<生物の一種>とはされているものの、その説さえ確定はしていない。
なにしろ、吸血鬼の能力の源とみられている<微生物らしきもの>の正体さえ掴めていないのだから。
そこまでの存在である吸血鬼と、その能力の多くを受け継いでいるダンピールに、たかが人間の子供ではかすり傷一つ負わせることはできない。
とは言え、精神的には、肉体の面ほどの乖離はないので、嫌がらせをされれば傷付くこともある。腹が立つこともある。安和の様子がまさにそれだろう。
そして、エンディミオンが抱えていた<闇>は、それに起因している。
そう。肉体の強さと精神の強さは必ずしも比例しない。だから、悠里や安和の<精神>を、<心>を、ミハエルはとても大切にした。それを蔑ろにしたことで何が起こったのかは、歴史が明らかにしてくれてる。
そんな先人達の失敗を活かすことができなければ、何のために<知能>などと呼ばれるものを持っているのかが分からない。
何のために、過去を、歴史を、学んでいるのか分からない。
それができたからこそ、今の悠里や安和がいる。
しかし、だからといって、過ちを犯した祖先達を『愚かだ』と嘲るつもりもない。知らないことはできなくて当然だから。となれば、『愚か』なのはむしろ、過去や先人達の失敗から学ぼうとしないことかもしれない。
ミハエルは父親として、そういうことについても子供達に伝えていきたいと思っている。
セルゲイやミハエルも言っていたけれど、複数の重機関銃による集中砲火を浴びせて再生が間に合わないようにでもしない限り、吸血鬼やダンピールはダメージを受けない。
しかも、元人間である眷属や半分人間であるダンピールであれば再生能力にも限界はあるものの、純血の吸血鬼は、たとえ肉片になろうとも時間さえあれば再生できる。
以前に触れたように、第二次大戦末期の原爆使用は、吸血鬼への効果の実証という知られざる目的があったが、至近距離で数万度の熱線を十数秒に亘って照射することでようやく倒せるのが、<純血の吸血鬼>というものだった。
もっとも、それさえ、消滅してからまだ数十年しか経っていないので、実は本当に消滅させられたのか、現在も経過を確認中というのが本当のところだったりする。
場合によっては、さらに時間が経過したところで復活する可能性もまだ否定はされていないのだ。実際、完全に塵となった吸血鬼が一万と一日後に復活したという伝承さえある。
そもそも、現時点で解明されている範囲では吸血鬼もあくまで<生物の一種>とはされているものの、その説さえ確定はしていない。
なにしろ、吸血鬼の能力の源とみられている<微生物らしきもの>の正体さえ掴めていないのだから。
そこまでの存在である吸血鬼と、その能力の多くを受け継いでいるダンピールに、たかが人間の子供ではかすり傷一つ負わせることはできない。
とは言え、精神的には、肉体の面ほどの乖離はないので、嫌がらせをされれば傷付くこともある。腹が立つこともある。安和の様子がまさにそれだろう。
そして、エンディミオンが抱えていた<闇>は、それに起因している。
そう。肉体の強さと精神の強さは必ずしも比例しない。だから、悠里や安和の<精神>を、<心>を、ミハエルはとても大切にした。それを蔑ろにしたことで何が起こったのかは、歴史が明らかにしてくれてる。
そんな先人達の失敗を活かすことができなければ、何のために<知能>などと呼ばれるものを持っているのかが分からない。
何のために、過去を、歴史を、学んでいるのか分からない。
それができたからこそ、今の悠里や安和がいる。
しかし、だからといって、過ちを犯した祖先達を『愚かだ』と嘲るつもりもない。知らないことはできなくて当然だから。となれば、『愚か』なのはむしろ、過去や先人達の失敗から学ぼうとしないことかもしれない。
ミハエルは父親として、そういうことについても子供達に伝えていきたいと思っている。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
【完結】あやかしの隠れ家はおいしい裏庭つき
入魚ひえん
キャラ文芸
これは訳あってあやかしになってしまった狐と、あやかしの感情を心に受け取ってしまう女の子が、古民家で共に生活をしながら出会いと別れを通して成長していくお話。
*
閲覧ありがとうございます、完結しました!
掴みどころのない性格をしている狐のあやかしとなった冬霧と、冬霧に大切にされている高校生になったばかりの女の子うみをはじめ、まじめなのかふざけているのかわからない登場人物たちの日常にお付き合いいただけたら嬉しいです。
全30話。
第4回ほっこり・じんわり大賞の参加作品です。応援ありがとうございました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
秘伝賜ります
紫南
キャラ文芸
『陰陽道』と『武道』を極めた先祖を持つ大学生の高耶《タカヤ》は
その先祖の教えを受け『陰陽武道』を継承している。
失いつつある武道のそれぞれの奥義、秘伝を預かり
継承者が見つかるまで一族で受け継ぎ守っていくのが使命だ。
その過程で、陰陽道も極めてしまった先祖のせいで妖絡みの問題も解決しているのだが……
◆◇◆◇◆
《おヌシ! まさか、オレが負けたと思っておるのか!? 陰陽武道は最強! 勝ったに決まっとるだろ!》
(ならどうしたよ。あ、まさかまたぼっちが嫌でとかじゃねぇよな? わざわざ霊界の門まで開けてやったのに、そんな理由で帰って来ねえよな?)
《ぐぅっ》……これが日常?
◆◇◆
現代では恐らく最強!
けれど地味で平凡な生活がしたい青年の非日常をご覧あれ!
【毎週水曜日0時頃投稿予定】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
美しいものを好むはずのあやかしが選んだのは、私を殺そうとした片割れでした。でも、そのおかげで運命の人の花嫁になれました
珠宮さくら
キャラ文芸
天神林美桜の世界は、あやかしと人間が暮らしていた。人間として生まれた美桜は、しきたりの厳しい家で育ったが、どこの家も娘に生まれた者に特に厳しくすることまではしらなかった。
その言いつけを美桜は守り続けたが、片割れの妹は破り続けてばかりいた。
美しいものを好むあやかしの花嫁となれば、血に連なる一族が幸せになれることを約束される。
だけど、そんなことより妹はしきたりのせいで、似合わないもしないものしか着られないことに不満を募らせ、同じ顔の姉がいるせいだと思い込んだことで、とんでもない事が起こってしまう。
後宮の裏絵師〜しんねりの美術師〜
逢汲彼方
キャラ文芸
【女絵師×理系官吏が、後宮に隠された謎を解く!】
姫棋(キキ)は、小さな頃から絵師になることを夢みてきた。彼女は絵さえ描けるなら、たとえ後宮だろうと地獄だろうとどこへだって行くし、友人も恋人もいらないと、ずっとそう思って生きてきた。
だが人生とは、まったくもって何が起こるか分からないものである。
夏后国の後宮へ来たことで、姫棋の運命は百八十度変わってしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる