ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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親が子供に教育を施す

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『親が子供に教育を施す』

これは、子供を普通に人間の学校には通わせられないことがどうしても多くなる吸血鬼の間ではごく普通のことだった。

かつてはごく小規模の吸血鬼だけのコミュニティの中で<学校>に相当するものが作られてそこに子供達を通わせるということも行われていたものの、これだけ人間の数が増え、しかも情報が瞬時に世界中を駆け巡るような社会になってしまうと、人間の目を避けてそのような形をとることもなかなか大変になり、長命であるが故に知識量も経験も人間を上回ることの多い吸血鬼の親達は、それぞれ自力で自分の子供に教育を施すことが普通になっていったのだという。

それに、情報が瞬時に世界中を巡るということは、裏を返せば自分達も人間が発信した情報を容易く手に入れられるということでもあり、日常レベルで必要な<知識>はもうすべてネット上に保存されているので、必要に応じてそこから取り出せばそれで済む。

こうなるともはや、

『子供を学校に通わせる』

ということの意味さえ果たしてどこまであるのか?

そもそも、

<子供に教育を受けさせる義務>

というのはあくまで、子供が持つ、

<教育を受ける権利>

をより確実に守るために付与されたものではないだろうか?

となれば、子供に確実に教育を施すことができるなら、必ずしも学校に通わせなくてもいいのではないのか?

が、子供を学校に通わせずに親が直接教育を施すとなると親の負担が大きくなるし、何より、親の資質によって子供が受けられる教育の質に大きな差が出てしまう可能性が高い。

そこで、一般的に望ましいとされるレベルの教育をすべての子供に確実に施すとなると、学校のような機関に預けるというのが現実的な対応だろう。

それが、学校の意義なのではないだろうか?

その一方で、

『学校というのは知識を学ぶだけじゃなく、集団行動の中で社会性を学ぶ場所でもあるはずだ』

と主張する者もいるけれど、それでは、昔から、学校に通って社会性を学んだはずの者達の中から反社会勢力に身をやつす者が一定数いたのは何故か?

今でも、社会に適応できずに引きこもったりする者がいるのは何故なのか?

そして何より、暴行、傷害、脅迫、強要、窃盗等の犯罪行為を犯罪行為であるとして対処せず、

<子供の喧嘩>

<子供の悪ふざけ>

などと矮小化してなかったことにするのが、

『社会を学ばせる』

ことになると言うのか?

『事件化しなきゃ犯罪じゃない』

と教えるのが、社会性を養うことになるというのか?

『少年法は要らない』

などと言う者もいるが、そもそもこれまでの学校は、その少年法すら無視して、

『ルールを無視して上手くやった者が勝ち』

というのを教えてきたのではないのか?

そんなものが本当に社会性を身に付けるのに役立ってきたと言うのだろうか?

むしろそういう風に、

『ズルい奴が勝つのが社会というもの』

などと教えてきたことで、社会に絶望した者が数多く排出されてきたのではないのだろうか?

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