167 / 571
厳正に対処する
しおりを挟む
『もう二度とこのようなことはしない。させない』
それさえちゃんと誓ってくれれば早々に和解してもいいと考えていた学校側の意向の一切を無視し、冠井迅の父親は徹底的に争うことにしたようだ。
なお、今回の件について、アオやミハエルは、椿の怪我が大きなものではなかったことから、学校と同じく、
『もう二度とこのようなことはしない。させない』
と言ってもらえれば話を大きくするつもりはなかった。
けれど、学校側としては、
『預かっている児童の安全と、教育を受ける機会を確実に守る』
という基本的な在り方を脅かすような行いに対しては厳正に対処する必要があり、それを蔑ろにするというのであれば引き下がることはできなかった。
ここで一つ、原点に立ち返って考えてみよう。
<学校>は、勉強をする場所である。
決して、他の生徒をイジメたりしてストレスを発散するための場所ではないし、教師は心理的な問題をケアする心療内科医ではない。
他の生徒に怪我を負わせて、その分、養育を受ける機会を奪うことが許されて当然だというのか?
他の生徒をイジメて学校に来ることに苦痛を覚えさせるのは、
<教育を受ける権利を侵害する行為>
であるとなぜ分からない?
この当たり前のことを忘れている者が多すぎはしないか?
子供の精神的なケアを行うのは、本来、各家庭が独自にするべきことではないのか?
<躾>も<ケア>も学校に丸無げするのが<親>のすべきことなのか?
自分の子供が他の生徒に暴行を加え、他人の権利を侵害しておきながら自分の権利ばかりを守ろうとするのが大人のすることなのか?
椿が通う学校は、そういう点について、冠井迅の両親に対して正しているだけである。
その機会がたまたま椿が巻き込まれた一件だったというだけでしかない。
あくまでこれは、生徒が安全に教育を受けられる場所を守ろうとする学校側と、それを理解しようとしない冠井迅の両親の問題なのだ。
なので、アオとミハエルはただ成り行きを見守ることにした。
「椿は大丈夫?」
「うん。まだちょっと痛いけど大丈夫。でも、あとが残ったら嫌だなあ……」
「そうだね。でも、もしそうなっても大丈夫だよ。それを気にしない人は必ずいるから」
女の子としては、やはり、自分の体に痣や傷が残ったりするのは気になるところだろう。それについて、アオもミハエルもきちんと向き合って椿の精神的なケアを行うようにしていた。
家族それぞれで、
『自分は悪くない。悪いのは他の奴らだ』
と責任を擦り付け合って、互いの精神的なケアなどする気もない冠井家とは違って。
だから椿も、多少は複雑な想いもありつつも、これからも学校には行こうと思えたのだった。
それさえちゃんと誓ってくれれば早々に和解してもいいと考えていた学校側の意向の一切を無視し、冠井迅の父親は徹底的に争うことにしたようだ。
なお、今回の件について、アオやミハエルは、椿の怪我が大きなものではなかったことから、学校と同じく、
『もう二度とこのようなことはしない。させない』
と言ってもらえれば話を大きくするつもりはなかった。
けれど、学校側としては、
『預かっている児童の安全と、教育を受ける機会を確実に守る』
という基本的な在り方を脅かすような行いに対しては厳正に対処する必要があり、それを蔑ろにするというのであれば引き下がることはできなかった。
ここで一つ、原点に立ち返って考えてみよう。
<学校>は、勉強をする場所である。
決して、他の生徒をイジメたりしてストレスを発散するための場所ではないし、教師は心理的な問題をケアする心療内科医ではない。
他の生徒に怪我を負わせて、その分、養育を受ける機会を奪うことが許されて当然だというのか?
他の生徒をイジメて学校に来ることに苦痛を覚えさせるのは、
<教育を受ける権利を侵害する行為>
であるとなぜ分からない?
この当たり前のことを忘れている者が多すぎはしないか?
子供の精神的なケアを行うのは、本来、各家庭が独自にするべきことではないのか?
<躾>も<ケア>も学校に丸無げするのが<親>のすべきことなのか?
自分の子供が他の生徒に暴行を加え、他人の権利を侵害しておきながら自分の権利ばかりを守ろうとするのが大人のすることなのか?
椿が通う学校は、そういう点について、冠井迅の両親に対して正しているだけである。
その機会がたまたま椿が巻き込まれた一件だったというだけでしかない。
あくまでこれは、生徒が安全に教育を受けられる場所を守ろうとする学校側と、それを理解しようとしない冠井迅の両親の問題なのだ。
なので、アオとミハエルはただ成り行きを見守ることにした。
「椿は大丈夫?」
「うん。まだちょっと痛いけど大丈夫。でも、あとが残ったら嫌だなあ……」
「そうだね。でも、もしそうなっても大丈夫だよ。それを気にしない人は必ずいるから」
女の子としては、やはり、自分の体に痣や傷が残ったりするのは気になるところだろう。それについて、アオもミハエルもきちんと向き合って椿の精神的なケアを行うようにしていた。
家族それぞれで、
『自分は悪くない。悪いのは他の奴らだ』
と責任を擦り付け合って、互いの精神的なケアなどする気もない冠井家とは違って。
だから椿も、多少は複雑な想いもありつつも、これからも学校には行こうと思えたのだった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
陽香は三人の兄と幸せに暮らしています
志月さら
キャラ文芸
血の繋がらない兄妹×おもらし×ちょっとご飯ものなホームドラマ
藤本陽香(ふじもと はるか)は高校生になったばかりの女の子。
三人の兄と一緒に暮らしている。
一番上の兄、泉(いずみ)は温厚な性格で料理上手。いつも優しい。
二番目の兄、昴(すばる)は寡黙で生真面目だけど実は一番妹に甘い。
三番目の兄、明(あきら)とは同い年で一番の仲良し。
三人兄弟と、とあるコンプレックスを抱えた妹の、少しだけ歪だけれど心温まる家族のお話。
※この作品はカクヨムにも掲載しています。
虎の帝は華の妃を希う
響 蒼華
キャラ文芸
―その華は、虎の帝の為にこそ
かつて、力ある獣であった虎とそれに寄り添う天女が開いたとされる国・辿華。
当代の皇帝は、継母である皇太后に全てを任せて怠惰を貪る愚鈍な皇帝であると言われている。
その国にて暮らす華眞は、両親を亡くして以来、叔父達のもとで周囲が同情する程こき使われていた。
しかし、当人は全く堪えておらず、かつて生き別れとなった可愛い妹・小虎と再会する事だけを望み暮らしていた。
ある日、華眞に後宮へ妃嬪として入る話が持ち上がる。
何やら挙動不審な叔父達の様子が気になりながらも受け入れた華眞だったが、入宮から十日を経て皇帝と対面することになる。
見るものの魂を蕩かすと評判の美貌の皇帝は、何故か華眞を見て突如涙を零して……。
変り行くものと、不変のもの。
それでも守りたいという想いが咲かせる奇跡の華は、虎の帝の為に。
イラスト:佐藤 亘 様
【完結保証】ダックダイニング店舗円滑化推進部 ~料理は厨房だけでするものじゃない!~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
キャラ文芸
定食屋の娘であるが、手首を包丁で切ってしまったことがトラウマとなり料理ができなくなったことで、
夢だった実家を継ぐことを諦めた木原希美。
彼女はそれでも飲食業に関わることを諦められず、
飲食店経営会社の事務職として勤めていた。
そんなある日、希美が配属されることとなったのは新しく立ち上げられた『店舗円滑化推進部』。
その建前は、店舗と本部の交流を円滑にしたり、本部の部署同士の交流を活性化したりするという、実に立派な物だった。
くわえて会社では初の試みとなる本部直営店舗のオープンも、主担当として任されることになっていた。
飲食店を盛り上げたい、ごはん・料理大好きな希美はこれを大いに喜んでいた。
……しかし配属されてみたら、そこは社内のお荷物ばかりが集められたお飾り部署だった!
部長や課長は、仕事に対してまったく前向きではない。
年の近い先輩である鴨志田も、容姿端麗なイケメンで女子社員からの人気こそ集めていたが……
彼はとにかくやる気がなかった。
仕事はできるが、サボり魔だったのだ。
だが、劣悪な環境でも希美はあきらめない。
店舗のため、その先にいるお客様のため、奮闘する。
そんな希美の姿に影響を受け、また気に入ったことで、
次第に鴨志田が力を貸してくれるようになって――――?
やがて希美の料理への熱い思いは、
お店に携わるさまざまな人間の思いを引き出し、動かしていく。
その過程で二人の仲も徐々に深まっていくのであった。
料理は厨房だけでするものじゃない。
お店で料理が提供されるまでの過程を描いたドラマ。関西弁も随所で発揮?
予知部と弱気な新入生
小森 輝
キャラ文芸
山に囲まれ自然豊かな高校『糸山高校』に入学した弱気な少女『白山秋葉』は部活選びで奇妙な部活『予知部』というのに興味を引かれてしまう。そこで見た物は、古い本の山と変な先輩『愛仙七郎』そして不思議な体験の数々だった。
感想やお気に入り登録、お待ちしています!してくれると、モチベーションがかなり上がります!
人生負け組のスローライフ
雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした!
俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!!
ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。
じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。
ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。
――――――――――――――――――――――
第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました!
皆様の応援ありがとうございます!
――――――――――――――――――――――
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
風切山キャンプ場は本日も開拓中 〜妖怪達と作るキャンプ場開業奮闘記〜
古道 庵
キャラ文芸
弱り目に祟り目。
この数ヶ月散々な出来事に見舞われ続けていた"土井 涼介(どい りょうすけ)"二十八歳。
最後のダメ押しに育ての親である祖母を亡くし、田舎の実家と離れた土地を相続する事に。
都内での生活に限界を感じていたこともあり、良いキッカケだと仕事を辞め、思春期まで過ごした"風切村(かざきりむら)"に引っ越す事を決める。
手元にあるのは相続した実家と裏山の土地、そして趣味のキャンプ道具ぐらいなものだった。
どうせ自分の土地ならと、自分専用のキャンプ場にしようと画策しながら向かった裏山の敷地。
そこで出会ったのは祖父や祖母から昔話で聞かされていた、個性豊かな妖怪達だった。
彼らと交流する内、山と妖怪達が直面している窮状を聞かされ、自分に出来ることは無いかと考える。
「……ここをキャンプ場として開いたら、色々な問題が丸く収まるんじゃないか?」
ちょっとした思いつきから端を発した開業の話。
甘い見通しと希望的観測から生まれる、中身がスカスカのキャンプ場経営計画。
浮世離れした妖怪達と、田舎で再起を図るアラサー男。
そしてそんな彼らに呆れながらも手を貸してくれる、心優しい友人達。
少女姿の天狗に化け狸、古杣(ふるそま)やら山爺やら鎌鼬(かまいたち)やら、果ては伝説の大妖怪・九尾の狐に水神まで。
名も無き山に住まう妖怪と人間が織りなすキャンプ場開業&経営の物語。
風切山キャンプ場は、本日も開拓中です!
--------
本作は第6回キャラ文芸大賞にて、奨励賞を受賞しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる