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自分は悪くない!

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学校の教員や職員は法律の専門家ではない。だから法律に基づいた対処の仕方を正確には承知してない。だから、モンスターペアレンツや、『子供の声が五月蝿い!!』などといって学校にねじ込んでくるクレーマーに対して及び腰になってしまうのだろう。

しかも、自分達も実は法律を蔑ろにしているから、相手の触法行為に毅然とした対処ができない。

学校が法律を蔑ろにしている?

心当たりはないだろうか?

学校は、司法機関でもないのに自分達で勝手な法律判断をして、生徒の触法行為を見逃し、日常的に犯罪を隠蔽してきたのは事実のはずである。

暴行、傷害、恐喝、窃盗、強要等々の犯罪についても、<教育的指導>の名の下に体罰などで簡単に済ませ、犯罪者を無罪放免にしてきたのではないのか?

思い当たる節はないだろうか?

酷い時には学校内で起こった婦女暴行事件すら、生徒指導の教師が加害生徒を一発殴っただけで『解決した』として表沙汰にしなかったことさえある。

しかもそれらは正式な記録として残されていないので、証拠さえ残っていない。

まさに『闇から闇へ』ということだ。

そのような事を延々と続けてきた背景があるから、モンスターペアレンツやクレーマーによる強要や恫喝、不法侵入、不退去にさえ毅然とした態度に出られないのではないのか?

自分達にも後ろめたいことがあるから、司法に介入されては困るのではないのか?

もしそうでないと言うのなら、堂々と訴え出ればいいはずである。モンスターペアレンツやクレーマーによる強要や恫喝、不法侵入、不退去について。

椿つばきが通っている学校は、そうすることにした。

代わりに、自分達も<弱み>を作らないために、法律を遵守することに決めた。

それだけの話である。

けれど、学校の方はそういう風に変わったのに、学校に子供を通わせる保護者の方はまだまだ<意識の転換>ができていないようだ。

冠井迅かむらいじんの両親のように。

特に父親の方は、

「他人に迷惑を掛けるな!」

と息子の頬をはたいておきながら、学校が椿つばきの怪我について診断書を取り、暴行の非行事実で厳正に対処すると弁護士を通じて告げてくると、今度は、

「たかが子供の悪ふざけでそこまでするのか!? 横暴だ!!」

と言い出した上に、椿がシニカルな笑みを浮かべたことに迅がムカついてしまったのを、

「相手の生徒が先に息子をバカにしたのが原因だ!!」

とまで言い出して、徹底的に争う姿勢を見せたのだ。

最初は、『他人に迷惑を掛けるな!』と迅の頬をはたいたにも拘らず。母親に監督責任があるとしていたにも拘らず。

つまり、初めのうちは息子の所為にして事を収めようとしたのが、自分まで親としての監督責任が問われるとなってくると、手の平を返して、今度は椿の所為にしてきたということである。

そう、この父親が主張したいことは唯一つ、

『自分は悪くない!』

ということなのだった。

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