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椿の日常 その6
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『完璧な人間なんていない』
椿はそれをしっかりと両親から教わっていた。完璧な人間じゃなくても、他者を思い遣れる気持ちがあればちゃんと力になってくれる存在とも出逢えると。
他人に対して攻撃的な人間は、自分で余計なトラブルを生むと。
椿は、学校でもそれを活かしている。
決して目立たないけれど、クラスでは常にニュートラルな立場で仲裁役を任されることが多かった。
ただ、特定の誰かの肩を持つこともしないので、意外と<友達>と言える生徒はいない。
でも、椿自身はそれをこれといって気にしていなかった。なぜなら家に帰れば自分の存在をこの世で一番確実に認めてくれる人がいるから。アオが、ミハエルが、悠里が、安和が認めてくれるから。
しかも、血が繋がった家族だけじゃなく、さくらも、洸も、恵莉花も、秋生も認めてくれる。エンディミオンとはほとんど顔も合わせたことがないから分からないけれど、洸いわく、
「父さんもちゃんと認めてくれるよ」
と言ってくれてる。
そして何より、その洸がいてくれれば、別に学校で友達なんて必要なかった。
けれど、その余裕が彼女のニュートラルな態度を作り出すからか、決して<つるむ>という形ではないけれど、親しく接してくれる生徒も少なくはなかった。
で、椿がミハエルに話していた、
<推しを押し付けてくる子>
山下羽楼が、
「ね? 桐佐目さん、テルくんこそ至高だよね!」
などと、また、自分の<推し>の魅力について同調することを求めてきた。彼女はこの調子で自分が好きな男性アイドルを自分と一緒に賞賛することを要求してくる。
でも、当然、どれほど人気のアイドルでも百人が百人全員が好きということはまずない。ましてや他にも同じような人気のアイドルがいれば人気は分かれる。
となると、
「何言ってんの! シンくんの方がイケてるに決まってんじゃん!!」
などと、<推し>が違う、藤木一紅が噛み付いてくる。
こうなると双方共に自分の<推し>の魅力を語り一歩も引かない。しかも魅力を語っている間はいいものの、さらにエキサイトしてくると互いに相手の<推し>をけなし始める。
そして最終的には罵り合いになるというのがいつものパターンだった。
他の生徒達は巻き込まれまいとして早々に距離を取る。
椿は仕方ないので自分の目の前で罵り合う二人に好きにさせた。
『困ったなあ…』
とは思いつつ。
なんだかんだと調整役をやらされることは多いけれど、この二人については<調整>のしようがない。何しろどちらも自分の主張を一ミリたりとも譲る気がないのだから。
そうしてるうちに休憩時間が終わったり教師が騒ぎを聞きつけて介入することで終わるものの、付き合わされる椿のストレスについては誰もケアしてくれない。
でもそれについては家に帰れば確実にケアしてもらえるので、学校には何も期待してないのだった。
椿はそれをしっかりと両親から教わっていた。完璧な人間じゃなくても、他者を思い遣れる気持ちがあればちゃんと力になってくれる存在とも出逢えると。
他人に対して攻撃的な人間は、自分で余計なトラブルを生むと。
椿は、学校でもそれを活かしている。
決して目立たないけれど、クラスでは常にニュートラルな立場で仲裁役を任されることが多かった。
ただ、特定の誰かの肩を持つこともしないので、意外と<友達>と言える生徒はいない。
でも、椿自身はそれをこれといって気にしていなかった。なぜなら家に帰れば自分の存在をこの世で一番確実に認めてくれる人がいるから。アオが、ミハエルが、悠里が、安和が認めてくれるから。
しかも、血が繋がった家族だけじゃなく、さくらも、洸も、恵莉花も、秋生も認めてくれる。エンディミオンとはほとんど顔も合わせたことがないから分からないけれど、洸いわく、
「父さんもちゃんと認めてくれるよ」
と言ってくれてる。
そして何より、その洸がいてくれれば、別に学校で友達なんて必要なかった。
けれど、その余裕が彼女のニュートラルな態度を作り出すからか、決して<つるむ>という形ではないけれど、親しく接してくれる生徒も少なくはなかった。
で、椿がミハエルに話していた、
<推しを押し付けてくる子>
山下羽楼が、
「ね? 桐佐目さん、テルくんこそ至高だよね!」
などと、また、自分の<推し>の魅力について同調することを求めてきた。彼女はこの調子で自分が好きな男性アイドルを自分と一緒に賞賛することを要求してくる。
でも、当然、どれほど人気のアイドルでも百人が百人全員が好きということはまずない。ましてや他にも同じような人気のアイドルがいれば人気は分かれる。
となると、
「何言ってんの! シンくんの方がイケてるに決まってんじゃん!!」
などと、<推し>が違う、藤木一紅が噛み付いてくる。
こうなると双方共に自分の<推し>の魅力を語り一歩も引かない。しかも魅力を語っている間はいいものの、さらにエキサイトしてくると互いに相手の<推し>をけなし始める。
そして最終的には罵り合いになるというのがいつものパターンだった。
他の生徒達は巻き込まれまいとして早々に距離を取る。
椿は仕方ないので自分の目の前で罵り合う二人に好きにさせた。
『困ったなあ…』
とは思いつつ。
なんだかんだと調整役をやらされることは多いけれど、この二人については<調整>のしようがない。何しろどちらも自分の主張を一ミリたりとも譲る気がないのだから。
そうしてるうちに休憩時間が終わったり教師が騒ぎを聞きつけて介入することで終わるものの、付き合わされる椿のストレスについては誰もケアしてくれない。
でもそれについては家に帰れば確実にケアしてもらえるので、学校には何も期待してないのだった。
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