ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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椿の日常 その4

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椿つばきの日常の一コマには、こういうこともある。

いつものさくらのとの打ち合わせ。

椿がゲームしている横で、アオは言う。

「テレビのアニメの脚本がどうとか言う奴は、自分がどれだけ甘えたことを言ってるか分かってないと私は思う。

だってそうだろう? 自分は『脚本の都合』だの『ご都合主義』だの言ってるクセに、その一方で、まったくの赤の他人が、自分にとって都合のいい、自分の好みに合った、感性に合った、趣味嗜好に合った脚本を書いてくれるのが当たり前だとか考えてるんだぞ? そんなご都合主義があるか!

お前は何様だ? 金を払って脚本を依頼したわけでもないクセに、自分の好みどおりのものじゃないからってケチをつけるとか、甘えてる以外の何だと言うんだ? 

<自分好みの脚本>なんてのは、あくまでたまたまだ。すべての人間の好みに百パーセント合致する脚本なんて書けるわけがないんだからな。

あくまでたまたま好みが合致した人間が楽しめればそれでいいんだよ。

どうあっても<自分の好み>に合った脚本が見たいなら、お前が金を払って依頼しろ。

映画とかOVAとかの場合だと、

『自分は金を払ってる』

とか言うかも知れんが、はあ? たかだか何千円か払った程度で何を言ってる? 脚本家のギャラの相場を調べて言ってるのか?

アニメーターの給料とかも込み込みのたかが何千円とかいう金額で自分の好みに合わせたものを書けとか、精々顔見知り程度に知り合いなだけの絵師に、

『友達なんだからタダでイラスト描いてよ』

『友達なんだから友達価格でイラスト描いてよ』

とか言う輩と同類じゃないか!

甘ったれるでないわ!!」

などと熱く語る母親の姿を見て、

『ママ、絶好調だな~』

くらいにしか思っていなかった。なぜなら、アオの言ってることは、結局、アオ自身に向けた<自戒>でしかないことを、椿ももう承知してるからだ。

アオの言う、

<テレビのアニメの脚本がどうとか言う奴>

とは、実はアオ自身に向けてのものなのだというのを、椿は知っている。

「やっぱりさ~、自分の好みどおりの展開じゃなかったりしたら、ついつい、ケチつけたくなったりするんだよ。たかが一視聴者でしかないのにさ。

私も一応は<作り手側>の人間だから、仕事としてそういうのをこなすのがどういうことか分かってるはずなのに、感情としてはケチつけたくなっちゃうんだよね。

私が依頼したわけでもないのにな~。

自分が金を払って依頼したんなら、自分の好みどおりに仕上げてもらうためにはどんどん口も出さなきゃいけないと思うよ? 何度も打ち合わせしてすり合わせしなきゃダメだと思う。

でもさ。そうじゃない、完全に向こうから提供されるだけのそれが自分の好みにいつも完璧に合致するなんてことは、有り得ないんだよ。

私はそれを自分に言い聞かせてるんだ」

と、自分の好みに合わないアニメを見てしまった時の母親アオがちょくちょく言ってるからなのだった。

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