ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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椿の日常 その2

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椿の朝は早い。今よりずっと小さい頃はそれこそ空が白み始めると目を覚ますことさえあった。

「え? もう起きたの?」

とアオは言ったものの、実はそういうこともあるというのは、さくらの子供達の恵莉花えりか秋生あきおの時にすでに知っていた。

それは、遠足を楽しみにしている子供が、普段はなかなか起きないのに遠足の日だけは早く起きるのと同じことなのだろう。

つまり、毎日が楽しくて勝手に目が覚めるという感じだろうか。

『寝てるなんてもったいない! 遊ばなきゃ!』

ってことで。

それが分かってるので、夜は九時頃には寝かしつける。

その時間、さくらはまだ仕事で帰っていないことが多いので、エンディミオンが。

子供達と一緒にベッドに入って、寝付くまでそばにいてくれる。だから子供達も安心して眠ることができる。

欧米では、

『自立心を養うため』

として、赤ん坊の頃から子供部屋を与えて、泣こうが喚こうが一人で寝かせることも多いという。

けれど、そうやって、

<自立心を養われた子供達>

が大人になってどういう人間になってるだろうか?と考えると、さくらもエンディミオンもそのやり方を選択することができなかった。

自立心が強いと言えば聞こえはいいものの、その一方で、他人を省みない、自分の権利と価値観が第一でとにかくひたすらそれを押し付けてくるというタイプの人間が多いという印象が強い。

特に、世界中を巡ってきたエンディミオンにとってはそういう実感しかない。

そういう<地域性><国民性>みたいなものを、

『遺伝子の所為』

にする人も多いけれど、それなら、完全に見た目が<外国人>にも拘らず日本に生まれ育った人のメンタルが完全に日本人のそれだったりするのはなぜだろう?

遺伝子の影響がいくらかでもあるのは事実だとしても、それが全部ではない。子供の性格を遺伝子の所為にするのは、

『親が悪い、社会が悪い』

と言って自分を省みない人間の考え方と何が違うのだろう?

だからさくらもエンディミオンも、自分の勝手でこの世に送り出した子供達に対してとにかく誠実であることを心掛けた。子供達の言葉に耳を傾け、要望を蔑ろにしなかった。

そんなさくらとエンディミオンをアオも見習った。

九時にはいったん仕事を終わらせ、椿と一緒にベッドに入った。

アオがどうしても一緒に寝られない時にはもちろんミハエルが一緒に寝てくれる。

こうして自然に早く寝るようになるから、夜明けと共に起きてきても寝不足にはならない。

これを『甘やかしてる』と言う人もいるかもしれない。けれど、強制しなくても早寝早起きの習慣が身に付くことに何か都合の悪いことがあるのだろうか?

自分がゲームをする時間が減るから?

テレビを見る時間が減るから?

晩酌を楽しむ時間が減るから?

そういう自分の欲求を常に優先するのなら、子供がそんな親の姿を見倣って自分の欲求を最優先するようになってもそれはむしろ自然なことじゃないだろうか?

けれど、自らの欲求を上手く調整して自分に合わせてくれる両親の姿を見て育った恵莉花も秋生も悠里ユーリ安和アンナも椿も、自然と相手の都合と折り合いをつける姿勢を身に付けていた。

さすがに今では夜明けと共に起きてくることはなくなったけれど、それでも起こされなくても六時くらいには目を覚まして、自分でトーストを焼いて、ミハエルが用意してくれたハムエッグと一緒に食べるのがいつものパターンなのだった。

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