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控室

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「吸血鬼…? ダンピール……? え…と、アントニーくんがミハエルさんで、ヴァレリーくんがユーリくんで、アンゲリーナちゃんがアンナちゃんで、セルゲイさんはセルゲイさんで、ミハエルさんとセルゲイさんが吸血鬼で、ユーリくんとアンナちゃんがダンピール……」

ハンバーガー大食い大会の予選を余裕でクリアした美千穂は、午後からの決勝戦までの間に、決勝戦出場者のために用意された控室で、セルゲイから事情の説明を受けていた。

とは言え、やはり突拍子もないそれに、頭が混乱している。

それでも……

「でも、皆さんが私を助けてくれたのは、確かなんですよね……」

取り敢えずそれだけははっきりしていると考えて、美千穂は訊いた。

すると、

「まあ、そういうことだよね」

安和アンナが少々不満そうに応える。

『絶対に助けてあげる』とは思ったものの、実際にこうして助け出せて無事だったとなるとやっぱり複雑な思いはあったからだ。

でも、

「ありがとう。本当にありがとうござます……!」

美千穂が深々と頭を下げて感謝の意を示すと、

「別に…このくらいどうってことないから……!」

安和は目を逸らしてそう言った。

そんな二人の様子を、ミハエルとセルゲイが微笑ましそうに見詰めている。

悠里ユーリも、誘拐犯の女に怪我をさせてしまったことを後悔しつつも美千穂がこうして元気なことは素直に喜んでいた。

そして美千穂も、事件のショックからは抜け出しつつ、けれど今度は自分が吸血鬼やダンピールといった存在を目の当たりにしているという事実にまた興奮してしまい、「ぐう!」とお腹を鳴らしてしまう。

「! あはは…! あんまり驚いてしまってなんかお腹が減ってきちゃいました……!」

顔を真っ赤にしながらそう言った。

自分達のような超常の存在と向かい合ってもそんな様子を見せる美千穂に、ミハエルもセルゲイも、正体を明かしたことは間違いじゃなかったとも実感できていた。

アオやさくらのように、人間の中にもこういうタイプがたまにいる。そういう人とこうして親しくなることで、自分達の存在を徐々に人間の間に浸透させていくことも、ミハエル達吸血鬼の望みだった。

「決勝戦も頑張って。ミチホ」

セルゲイに笑顔でそう言われて、美千穂は改めて顔を真っ赤にしながらも、

「はい! 頑張ります!」

と応えられた。

予選はテレビカメラもハンディタイプのが一台だけだったのが、決勝戦からはさらに本格的なものが二台追加され、バラエティ番組の人気司会者が司会を担当し、大会を盛り上げる。

普通なら緊張してしまいそうなそんな状況にも、もっととんでもない状況にあった美千穂はあがることもなく、かつテンション高く、決勝戦に挑むことができたのだった。

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