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今夜も一緒に
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そうやってアオとさくらが自身の考えを再確認していたのと同じ頃、朝を迎えたホテルの部屋で、ミハエル達は就寝するところだった。いつものビデオ通話を使った家族団欒は、アオの仕事が始まる前に済ませている。
遮光カーテンを閉め切って部屋を暗くし、
「おやすみ~」
と安和が声を上げると、
「おやすみ」
とミハエル、悠里、セルゲイが声を揃えてベッドに横になった。
そうして三時間ほど眠る。吸血鬼やダンピールにとってはそれで十分だった。寝ようと思えば夜まで寝られるものの、必ずしも寝なければいけないというものでもない。
それに寝ているのももったいない。日が高いうちは外に出るのも憚られるとは言え、悠里は夜のうちに観察してきた昆虫の資料をまとめる時間が必要だし、安和はホテル内でのショッピングをセルゲイと楽しみたいというのもある。
そんなわけで正午前には起き、悠里はミハエルと共に部屋で資料をまとめ、安和はセルゲイと共にホテル内を散策することにした。
と、悠里に付き合っていたミハエルが、セルゲイの代わりにセルゲイのアカウントで美千穂にメールを送る。もちろんセルゲイも承諾済みの上で、
『今夜も一緒に食事どうですか?』
と。
すると五分ほどして、
『いいんですか? 嬉しい♡』
美千穂から返信があった。
こうして午後五時頃に待ち合わせの約束を交わし、それまではゆっくりする。
そして日が傾き始めた頃、
「じゃあ、行こうか」
美千穂とメールのやり取りをして『今から出ます』との返事をもらい、セルゲイが声を掛けて、四人で出掛けた。
「セルゲイさ~ん♡」
「む…?」
待ち合わせの場所に着くと、セルゲイの姿を見付けた美千穂の様子に、アンゲリーナ(安和)が反応する。ほんのりと頬を染めて、やや鼻にかかったような声色だったからだ。
そう、美千穂はセルゲイに対して好意を抱き始めていたのである。
するとアンゲリーナ(安和)は、美千穂を睨みながらセルゲイに抱きついた。ジェラシーだった。
「あ…あれ……?」
自分を見るアンゲリーナのただならぬ様子に戸惑い、そして数瞬を置いて、
「…あ……!」
と美千穂の頭に閃くものがあった。
「ごめんなさい。ちょっと馴れ馴れしかったですか?」
アンゲリーナが自分に対してヤキモチを妬いていることに彼女も察することができた。
ただ、美千穂の解釈としては、
『大好きなお父さんに色目を使うな!』
的なジェラシーだと判断したようだけれど。
しかし、安和自身はれっきとした<恋心>をセルゲイに向けているので、心中穏やかじゃない。
そんな<女の戦い>に、悠里は内心、
『やれやれ』
と思っていたりしたのだった。
遮光カーテンを閉め切って部屋を暗くし、
「おやすみ~」
と安和が声を上げると、
「おやすみ」
とミハエル、悠里、セルゲイが声を揃えてベッドに横になった。
そうして三時間ほど眠る。吸血鬼やダンピールにとってはそれで十分だった。寝ようと思えば夜まで寝られるものの、必ずしも寝なければいけないというものでもない。
それに寝ているのももったいない。日が高いうちは外に出るのも憚られるとは言え、悠里は夜のうちに観察してきた昆虫の資料をまとめる時間が必要だし、安和はホテル内でのショッピングをセルゲイと楽しみたいというのもある。
そんなわけで正午前には起き、悠里はミハエルと共に部屋で資料をまとめ、安和はセルゲイと共にホテル内を散策することにした。
と、悠里に付き合っていたミハエルが、セルゲイの代わりにセルゲイのアカウントで美千穂にメールを送る。もちろんセルゲイも承諾済みの上で、
『今夜も一緒に食事どうですか?』
と。
すると五分ほどして、
『いいんですか? 嬉しい♡』
美千穂から返信があった。
こうして午後五時頃に待ち合わせの約束を交わし、それまではゆっくりする。
そして日が傾き始めた頃、
「じゃあ、行こうか」
美千穂とメールのやり取りをして『今から出ます』との返事をもらい、セルゲイが声を掛けて、四人で出掛けた。
「セルゲイさ~ん♡」
「む…?」
待ち合わせの場所に着くと、セルゲイの姿を見付けた美千穂の様子に、アンゲリーナ(安和)が反応する。ほんのりと頬を染めて、やや鼻にかかったような声色だったからだ。
そう、美千穂はセルゲイに対して好意を抱き始めていたのである。
するとアンゲリーナ(安和)は、美千穂を睨みながらセルゲイに抱きついた。ジェラシーだった。
「あ…あれ……?」
自分を見るアンゲリーナのただならぬ様子に戸惑い、そして数瞬を置いて、
「…あ……!」
と美千穂の頭に閃くものがあった。
「ごめんなさい。ちょっと馴れ馴れしかったですか?」
アンゲリーナが自分に対してヤキモチを妬いていることに彼女も察することができた。
ただ、美千穂の解釈としては、
『大好きなお父さんに色目を使うな!』
的なジェラシーだと判断したようだけれど。
しかし、安和自身はれっきとした<恋心>をセルゲイに向けているので、心中穏やかじゃない。
そんな<女の戦い>に、悠里は内心、
『やれやれ』
と思っていたりしたのだった。
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