ショタパパ ミハエルくん（耳の痛い話バージョン）あるいは、（とっ散らかったバージョン）

別に無抵抗主義者じゃない

「私達は別に無抵抗主義者じゃないからな」

さくらが言った、

『暴力で攻撃を仕掛けてくる人を相手にした時には、自分や周りの人を守るために、必要最小限の力を使うことは認めてます』

という話を受けて、アオもそう告げた。

その通りだった。

『絶対に負けない相手を力で従わせようとするのは卑怯者のすること』

『他人を支配するために力は使わない』

こう言うとすぐに、

『じゃあ、強盗から身を守ることもしないのかよ！？』

などと、すぐに揚げ足を取ろうとする者もいるけれど、そうやって短絡的に考えて今まで上手くいってきたのだろうか？　上手くいってきたのであれば、どうしてそんなに余裕がないのか？

アオ達は、現実で起こりうるあらゆる状況を想定して、実際の事例を見て、その上で筋が通る道理を探してきた。目先の事態にだけ対処できればいい、目先の自分の感情さえ優先できればいい、そういう考えが何を招いてきたかを客観的に分析した上で、何をどうすれば最終的に好ましい結果を得られるかを徹底的に考えてきた。

だから、綺麗事だけでは上手くいかないことも承知している。単に『力の行使を否定するだけ』では上手くいかないことも分かってる。

故に、

『他人を支配するために力は使わない。けれどそれは、自分自身や自分の大切な人を＜急迫不正の侵略行為＞から守るためにも力を使わないという意味じゃない』

と考えている。

人間には、卑怯で卑劣で薄汚い一面があるのは事実である。その現実から目を背けていて好ましい結果が得られるはずがない。

しかしだからと言って、卑怯で卑劣で薄汚いだけかと言うと必ずしもそうとは限らない。それもまた現実である。

となれば、『人間なんて卑怯で卑劣で薄汚いだけ！』ということを前提に対処していては上手くいかないこともまた摂理。

人間にはそのどちらもあるという事実から目を背けてはいけない。

アオもさくらもそれを心掛けていた。

攻撃者の攻撃に対処する時も、それによって正義が成されるとは考えない。悪が滅されるとは考えない。これはあくまで単なる一時凌ぎ。現に、どれほどテロリストを殺していってもテロリストはいなくならない。それが本当に＜正義の行い＞で正しい方法なら、テロリストがいなくならないのはおかしいのではないのか？

『テロリストがいなくなる』

ことを目指すなら、現実問題としてテロリストがいなくならないその方法は、『正しい』とは言えないのではないのか？

さりとて、現にテロによる被害が出るのなら、さし当たっての対処は必要になる。これもまた事実。

あくまでその＜さし当たっての対処＞そのものを目的にはしないことが大事なのだろう。

どこまでいっても一時凌ぎにしか過ぎないのだから。