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アニメの中の話じゃん!
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一方その頃、日本では、いつものようにアオとさくらが原稿についての打ち合わせをしていた。
その中で、アオは言う。
「先般、今放送中のアニメの中で、勇気と無謀を履き違えた女性指揮官が無策のまま自軍を戦場に送り込んで大きな損害を受けた挙句、それを非難した主人公に銃に手を掛けたまま詰め寄って張り倒されるというエピソードがあってな。それで何やら主人公のその対処についてあれこれ議論が巻き起こっているそうだ」
アオの原稿の内容には直接関係のない話題だったが、そんな話を振られてもさくらは戸惑うこともなく、
「ああ、何かそんなことになってるらしいですね。ちょうど、担当している先生が執筆中の原稿で似たようなエピソードがあった編集者が、内容を変えた方がいいかどうか、同僚と話し合っていました。その時点では結論が出なかったようですが」
と応じる。
「おお、やはりそういうこともあるのだな。
で、私自身は常々、『自分が負けるはずがない相手を殴って従わせようとするのは卑怯者のすることだ』と子供達に説いていることもあって、その主人公の対処については決して褒められたことではないと本音では思うものの、しかし同時に、まず大前提として、
『アニメの中の話じゃん!』
というのがあるのだ。アニメも含め、フィクションというのは、当然、ただの<作り話>だ。現実じゃない。その作り話の中の登場人物の行いについて本気で腹を立てたりキレるということ自体がナンセンスだと私は思ってる。よく言われる<ヘイト管理>とかいう言葉も私は嫌いだ。
そもそもフィクションの中で登場人物がどれほど非常識に振る舞おうともありえない行いをしようとも、それは現実ではないのだ。現実ではないことを現実に持ち込んでまでキレるというのが私はどうかしていると思う。
私は、子供達に、その辺りの分別はつけるように諭してきてるぞ?
実際、まだ十歳の椿でさえ、アニメの中で悪役がヒドイことをしているのを見て『ヒドイ!』って声を上げたとしても、それが作り話の中だけのことだというのをちゃんと分かってくれている。フィクションは現実じゃないことを分かってくれてるんだ。
フィクションの中のことを現実にまで持ち出してキレ倒す連中は、親にそういう分別を教わってこなかったのか?
私はそれが不思議でならんのだ」
「そうですね。そこについては私も同感です。私も子を持つ親として、フィクションと現実の区別は付けるように子供達に諭してきたつもりでした。
幸い、洸も恵莉花も秋生もちゃんと承知してくれています」
その中で、アオは言う。
「先般、今放送中のアニメの中で、勇気と無謀を履き違えた女性指揮官が無策のまま自軍を戦場に送り込んで大きな損害を受けた挙句、それを非難した主人公に銃に手を掛けたまま詰め寄って張り倒されるというエピソードがあってな。それで何やら主人公のその対処についてあれこれ議論が巻き起こっているそうだ」
アオの原稿の内容には直接関係のない話題だったが、そんな話を振られてもさくらは戸惑うこともなく、
「ああ、何かそんなことになってるらしいですね。ちょうど、担当している先生が執筆中の原稿で似たようなエピソードがあった編集者が、内容を変えた方がいいかどうか、同僚と話し合っていました。その時点では結論が出なかったようですが」
と応じる。
「おお、やはりそういうこともあるのだな。
で、私自身は常々、『自分が負けるはずがない相手を殴って従わせようとするのは卑怯者のすることだ』と子供達に説いていることもあって、その主人公の対処については決して褒められたことではないと本音では思うものの、しかし同時に、まず大前提として、
『アニメの中の話じゃん!』
というのがあるのだ。アニメも含め、フィクションというのは、当然、ただの<作り話>だ。現実じゃない。その作り話の中の登場人物の行いについて本気で腹を立てたりキレるということ自体がナンセンスだと私は思ってる。よく言われる<ヘイト管理>とかいう言葉も私は嫌いだ。
そもそもフィクションの中で登場人物がどれほど非常識に振る舞おうともありえない行いをしようとも、それは現実ではないのだ。現実ではないことを現実に持ち込んでまでキレるというのが私はどうかしていると思う。
私は、子供達に、その辺りの分別はつけるように諭してきてるぞ?
実際、まだ十歳の椿でさえ、アニメの中で悪役がヒドイことをしているのを見て『ヒドイ!』って声を上げたとしても、それが作り話の中だけのことだというのをちゃんと分かってくれている。フィクションは現実じゃないことを分かってくれてるんだ。
フィクションの中のことを現実にまで持ち出してキレ倒す連中は、親にそういう分別を教わってこなかったのか?
私はそれが不思議でならんのだ」
「そうですね。そこについては私も同感です。私も子を持つ親として、フィクションと現実の区別は付けるように子供達に諭してきたつもりでした。
幸い、洸も恵莉花も秋生もちゃんと承知してくれています」
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