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対等な関係には

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『お父さん、奥手過ぎ』

親に対する本音をはっきりと口にする恵莉花えりかあきらが相槌を打ち、秋生あきおがフォローを入れる。

それが、月城つきしろ家の子供達の関係そのものを表していた。

恵莉花は積極的に前に出て、洸は鷹揚に構え、秋生がフォローするという。

けれど恵莉花も、まったく無思慮に言いたい放題言うわけじゃない。父親の事情は知っている。だから配慮はしつつも、言葉は選びつつも、ただ感情をぶつけるだけにはならないように気を付けつつも、伝えるべきことはきちんと伝わるように言葉にする。

ということを心掛けているだけだった。

きっとそれは、母親であるさくらや、<もう一人の母親>的な存在のアオから受け継いだもの。やや、アオの影響の方が強いかもしれないけれど。

それでも、家族が幸せであるためにはどうすればいいかということを彼女なりに考えているのも事実。

何しろこの時、三人の中で一番ホッとしていたのは恵莉花だったのだから。



一方その頃、さくらと一緒にお風呂に入ったエンディミオンも、相変わらず仏頂面は崩さないものの、気持ちとしては落ち着いていた。

そんな彼に、さくらは、彼の背中を流しながら、

「ありがとう…愛してる……」

と、呟くように口にする。するとエンディミオンは、

「……」

言葉には出さなかったものの気配自体は穏やかなそれだったので、彼女の気持ちを受け入れているのは伝わってくる。

『言わなくても分かるはず』

というのはあくまで希望的観測に過ぎないので、本当はちゃんと口に出して気持ちを伝えるべきなのだろうけれど、さくらとしても彼がそういう性分であることは承知の上で傍にいることを選んだのは事実だし、何より彼の方から一緒にお風呂に入ることを持ちかけてくれたこと自体が気持ちを表しているのも分かっていたから、

『ちゃんと口に出して応えて!』

とまでは望まなかった。ついそう思ってしまうことはあっても、だからといってそれだけに囚われて感情的になることもない。一方的に自分の気持ちだけを分かってもらおうとするのは甘えだということも知っている。

子供のうちはそうやって一方的に甘えることも許されても、<大人>と呼ばれるような年齢になればそれは通らない。

親と子の関係は、親の方が子供を一方的にこの世に送り出したのだから、特に子供が幼いうちはそもそも<対等な関係>ではない。

しかし、大人となって誰かと共に生きることを選択するのは、相手の方もそれを拒むことができる状態で合意の上でのことであれば、これは<対等な関係>と言ってもいいだろう。

ただし、対等な関係には責任が伴う。

さくらはそれをきちんと理解していた。

だからこそ成立している関係だった。

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