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にゃ~っ!

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「にゃ~っ! ミハエルぅ、悠里ユーリぃ♡」

三時過ぎ。目を覚ましたアオがビデオ通話の画面いっぱいに唇を寄せてきた。

「あはは、愛してるよ、アオ♡」

ミハエルが笑顔で応える。そのやり取りを悠里はくすぐったそうに見守っていた。そこに、

「ただいま~♡」

安和あんなとセルゲイも帰ってくる。

「ママ! 丁度良かった。見て見て、これ! カワイイでしょ~♡」

そう言って安和がかざしたのは、例のイルカのブローチだった。

「ホントだ! カワイイ♡」

アオも、少女のようなあどけない表情で応じる。

そんな、まるで友達のような姉妹のようなやり取りをするアオと安和だけど、でも、二人はよく言われる<友達親子>ではなかった。アオはちゃんとそれをわきまえていた。

なぜなら親子は、<立場>という意味では決して対等ではないから。

親は、子供に対して一方的に責任を負っている。

子供を守り育て、きちんと教育を与える<義務>を負っている。

しかし<友達>にはそんな義務はない。どちらか一方が一方的に相手に対して責任を負うなどということはないし、もしそんな関係だとしたらそれは<友達>ではないだろう。

だからアオと安和は友達ではない。どこまでいってもまぎれもなく<親子>だった。

けれど、だからといってこんな風にくだけた接し方をしてはいけないという道理もない。必要な時に必要な責任を果たせるのならそれ以外ではどう接していても問題ないはずだ。

こんな風に接していても悠里も安和もアオを見くびってはいないし馬鹿にもしていない。間違いなく自分達の母親として敬っている。

敬う価値のある親だと思ってくれている。

なにしろ、自分達のような、ダンピールという、今のこの世界にとっては扱いの難しい存在をしっかりと、それでいて紛れもなく自分達と同じくこの世に存在する者として認めてくれているのだから。

それほどの相手を敬わず反発しなければならない理由は、悠里にも安和にもない。

だから反発しない。

実に単純な理屈。

「これ、ママに送るからね♡」

「ありがと~、楽しみだよ~♡」

そこに、

「ただいま~」

椿つばきが帰ってきた。

「あ、おかえり♡」

「おかえり、椿」

「おかえり~♡」

「おかえり」

アオ、悠里、安和、ミハエルが椿を迎える。

そんな家族のやり取りを、セルゲイは眩しそうに見守っていた。

『彼らは本当に何気なく当然のようにそうしているけれど、実際にはそれがとても難しいことなんだ。だから同じ人間同士でも、血の繋がった肉親同士でも衝突することがある。

これは我々吸血鬼でも同じ。親は、ついつい子供は自分に従うのが当然だと考えてしまいがちだ。

でも、それは違う。『従うのが当然』だと考えるのは、甘えなんだ』

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